漫画と音楽の蜜月 / 二つの「赤色エレジー」
“漫画家” 林静一の登場
林静一の長編漫画作品「赤色エレジー」は、長井勝一氏が代表を務める青林堂から1964年に月刊漫画誌として創刊された月刊『ガロ』誌上に、1970年1月から1971年1月まで、約1年間掲載された。
月刊『ガロ』は当初、白土三平の長編作品「カムイ伝」の発表の場として創刊され、戦後の “貸本漫画” 世代と言える水木しげる、楠勝平、諏訪 栄(小島 剛夕)、つげ義春(65年から)等が脇を固めていた。
1965年6月号誌上での、白土三平氏による「既成雑誌にないおのれの実験の場として、この『ガロ』を大いに利用していただきたい。」と言う “宣言” に呼応し、漫画家を目指す新世代の作家の投稿が始まった。
つりたくにこ、佐々木マキ、等に続き1967年11月号に、林静一の「アグマと、息子と、食えない魂」が掲載される事になる。
当時アニメーターとしての仕事の傍ら、『ガロ』への投稿を行っていた林静一氏だったが、初めての投稿作品には全く反応が無く(作品の原稿自体も所在不明らしい)続けて2作目の「吾が母は」を投稿する。
ペンタッチの荒さと、全編30ページという新人の作品としては長すぎる作品だった事で長井勝一氏は難色を示した様だが、青林堂の若手の社員達には “白土宣言” に呼応する既存の漫画の枠をはみ出した作品に映っていた様だ。
当時青林堂の社員だった、元・日本読書新聞の高野慎三氏は林氏に「吾が母は」の一部修正と、新たな短編作品を依頼する。
そして新たに持ち込まれた3作目の短編「アグマと、息子と、食えない魂」は、長井勝一氏にも評価され、『ガロ』誌上で発表される事になる。(修正された第2作目「吾が母は」も、翌68年4月号に掲載される)
林氏は、2作目の反応が無ければ漫画家と言う道を諦めていたと言う事なので、この高野氏達若手の尽力が無ければ、漫画家・イラストレーター「林静一」は、生まれていなかった。
その後、“漫画家” 林静一は、ガロ誌上で、コンスタントに作品を発表し、68年から69年には “赤の時代” と呼ばれる、ストーリーを排し、 “アンチマンガ” とも言える、イメージ重視でアヴァンギャルドな作品群を発表する。
1968年 6月 –「赤トンボ」
1969年 7月 –「まっかっかロック」
1969年 8月 –「赤地点」
1969年 9月 –「赤い鳥 小鳥」
1969年11月 –「赤いハンカチ」
1970年2月には、『ガロ』増刊号として、書き下ろし作品「大道芸人」を収録した林静一特集号も刊行された。
長編漫画作品「赤色エレジー」
そして “赤の時代” の諸作品に続いて、1970年1月から、
長編作品「赤色エレジー」の連載が始まる。
“赤の時代” の諸作品とは違って、ストーリー性を持ちながらも “アンチマンガ” 的なアヴァンギャルドなポップアートとも言える、断片的なスケッチの連作となっている。
70年安保とその後の空虚な空気感が漂う時代。 そんな中で、特にデモに参加する事も無く、時代の流れの外で私的な世界に生きる地方出身の若く幼い男女、一郎と幸子。
けして豊かでは無いが、ささやかな同棲生活。 若さ故にお互いに依存しながらも、傷付け会い、そして、行き詰まりの別れ…
そこに有るのは、時代背景に関わらず、何者かに成ることを夢見つつ、未だ何物にも成り得ていなかった者たちの季節。現実の生活と、淡い夢との蜜月の季節。
最終話のラストシーンでの一郎のつぶやき「昨日も そう 思った…」は、時代を超えて、普遍的でさえある。
(ちなみにこの図式は、後に上村一夫の「同棲時代」にも引き継がれる)
『ガロ』誌上での連載終了後、1971年3月には、『現代漫画家自選シリーズ』の第1弾として、単行本が青林堂から刊行される。
その後現在まで様々な出版社から単行本が発売されており、いずれかの単行本でこの作品を読むことが可能になっている。
特筆すべきは2010年に刊行されたフランス語版「Elégie en rouge」
原作では林氏自身が製版指定した “アミ” の部分が、フランス側が独自に赤で彩色した2色刷りで仕上げられ新たな作品に生まれ変わっている。
初の “画集”『紅犯花』
話は前後するが、それに先立つ1970年3月には、前述の高野慎三氏が青林堂勤務と並行して自ら立ち上げた “幻燈社” から、林静一初の “画集”『紅犯花』が刊行されている。
(長井勝一氏は当時、月刊漫画雑誌としての『ガロ』に専念する為、“画集” を青林堂から刊行する事には踏み切ら無かったという。)
初版は1500部限定で、箱入り、小冊子付の豪華版。
カラー・モノクロ併せて100点近くの作品が6つのテーマに分けて収録されている。
時期的に、まだ稚拙な部分も見受けられるが、後のイラストレーター・林静一に繋がる部分と、後年には薄らいでしまった“毒” と “危うさ” が同居している。
その後、1976年には “幻燈社” から普及版が再版され、1989年には、やはり高野慎三氏が雑誌『夜行(やぎょう)』の発行の為に立ち上げた北冬書房から再々版が刊行されている。
ここで、かなり驚くことなのだが…
高野慎三氏の著書『神保町「ガロ編集室」界隈』によれば、
高野氏が70年刊行の『紅犯花』の発端となる、最初の絵画の制作依頼をした69年当時には、意外にも林静一は、
竹久夢二の存在を知らなかったと言う!!
もちろん夢二ファンだった高野氏から、夢二の作品を知らされる事にも成っていたはずなので、『紅犯花』制作の過程や69年以降の漫画作品には、少なからず夢二の影響が反映される事になっていたとは思われるが…
後年のイラスト作品でも竹久夢二抜きに語られることの少ない林静一氏が、偶然にも、この大正期の浪漫画家と共通の美意識を元々持ち合わせていたと言う点は驚きである。
うた絵本 赤色エレジー
そして、1971年“幻燈社” の高野慎三氏の元に、「赤色エレジー」と「清怨夜曲」の2曲を収めた一本の録音テープが届く。
このテープの送り主こそ、『ガロ』誌上と、71年3月の単行本『現代漫画家自選シリーズ』で、林静一氏の漫画作品「赤色エレジー」に感銘を受けた、他ならぬ、あがた森魚氏だった。
あがた森魚氏は、林静一氏の「赤色エレジー」の音楽化とも言える自作曲であるこの2曲のレコードを、70年に『紅犯花』を刊行した “幻燈社” から出したいとの提案をしてきたと言う。
当時のあがた森魚氏は、後に “はちみつぱい” ~ “ムーンライダース” を結成する鈴木慶一氏等と、既に音楽活動を行っており、1970年には、自主制作盤『蓄音盤』(限定1000枚)をリリースしていた。(1999年には、Vivid SoundよりCD再発、2007年には、リマスターCDもリリースされている。)
今回の2曲のシングルについても、当初あがた氏側から自主制作(自費出版)の提案が有った様だが、高野氏は、シングル盤レコード付きの書籍『うた絵本 赤色エレジー』として、“幻燈社” からの刊行を決めたと語っている。
(制作費用の負担については、後にあがた氏が自費出版だったと語っている記録も有り、詳細は不明…)
「赤色エレジー」「清怨夜曲」の2曲は、林静一の漫画「赤色エレジー」の世界観を音楽で表現した物であるが、あがた氏の独自の解釈も多分に含んだものと言える。
当時、新宿の喫茶店であかた氏は、林氏の目の前でギターを弾きながら、店内の他の客の目もはばからずこの曲を歌って聞かせたと言う。 (林氏は、かなり恥ずかしい思いをしたと言う…)
楽曲に関しては、林氏もかなり気に入った様で、(特に、歌い出しの “愛は愛とて 何になる…”という一説は、漫画「赤色エレジー」のテーマを一言で言い当ており、林氏は評価している。)
『うた絵本 赤色エレジー』の制作にあたって、林氏は、新しくイラストを書き下ろし、塗り絵・シングル盤と同じ大きさのメンコ等も制作。 更には、オリジナルの宣材用ポスターまで制作し協力を惜しまなかったそうである。
その甲斐有ってか、71年12月に刊行された初版の1000部は完売。(あかた氏も、自らのライブ会場で手売りしていたと言う) 72年2月には、第二版も刊行されている。
第二版刊行の72年2月と言えば、まだメジャーからのシングルもリリースされていない時期ながら、かなり好調な売れ行きだった事になる。
A面の「赤色エレジー」は、南部菜食バンド (鈴木慶一・鈴木博文・武川雅寛・小野太郎)
B面の「清怨夜曲」は、池田家六重奏団 (バンドネオン奏者の池田光夫・渡辺勝
以外は詳細不明…)
それぞれによる演奏で、後のシングルやアルバムとは別テイク。
(「清怨夜曲」については、75年リリースのアルバム『僕は天使ぢゃないよ』に収録のテイクと同じ??)
長らく入手が困難なアイテムだったが、2011年には、ディスク・ユニオンのレーベルSUPER FUJIから、オリジナルを再現した装丁でCD再発されている。 (CD再発盤も、現在は希少になっている…)
あがた森魚 シングル盤「赤色エレジー」
その後72年4月には、三浦光紀氏がキング・レコード内で立ち上げた “ベルウッド” レーベルの第1弾として、メジャー・デビューとなるシングル盤『赤色エレジー/ハートのクイーン』(OF-1)があがた森魚+蜂蜜ぱい名義でリリースされる。 (この時点ではまだ、“はちみつぱい” では無く、“蜂蜜ぱい” と言う表記になっている。)
ジャケットのデザインは、林静一。
このシングルと、続くアルバム『乙女の儚夢』収録時の蜂蜜ぱいのメンバーは、
鈴木慶一 : Piano. Guitar
本田信介 : Electric Guitar
武川雅寛 : Violin
和田博己 : Electric Bass
渡辺勝 : Guitar
カシブチ哲郎 : Drums
シングル版「赤色エレジー」は、『うた絵本 赤色エレジー』とは別テイクの新録で、その後のアルバム『乙女の儚夢』のテイクよりかなりテンポが速い。
B面の「ハートのクイーン」は、アルバム収録の物とは別ヴァジーョン(?)。 (テイクとしては同じ様に聞こえるのだけれど… シングル・ヴァジーョンでは、蜂蜜ぱいメンバーのバック・コーラスが入る)
このシングルは、“大正ロマン” と言う言葉と共に大ヒットし、あがた森魚の知名度は一気に上昇する事になる。
ベルウッドからのリリースに先立って、キング・レコードから1971年に発売された『自然と文化の72時間 1971年全日本フォークジャンボリー実況盤』にも、「赤色エレジー」の中津川でのライブ・テイクが収録されている。
これがあがた森魚の最初のメジャーでのリリース音源と言われている。
ちなみに、71年の中津川では、あがた森魚は2回のステージを行っており、別の日の「赤色エレジー」のライブ・テイクが、1989年にキティー・レコードからCDリリースされた『第3回全日本フォークジャンボリー’71』に収録されている。
あがた森魚 アルバム「乙女の浪漫」
この曲のヒットの勢いに乗って同72年9月には、やはりベルウッドから、メジャー初のフル・アルバム『乙女の儚夢』(OFL-5)がリリースされる。
ジャケット等の装丁もかなり豪華なもので、三つ折り変形観音開きジャケットの表裏両面に林静一描き下ろしのカラー・イラストがコラージュされ、収録曲共々 “林静一の世界” を具現化した物に成っている。
(タイトルロゴは、故赤瀬川原平氏による物)
レコード盤のレーベルも林氏のイラストを使用。
更に、同梱のハガキを投函する事で、後日、A4判・12ページの豪華な小冊子が郵送されて来た。
小冊子の表紙も林静一によるデザイン。『ガロ』1970年2月増刊号の為に書き下ろされた作品「大道芸人」も掲載され、蜂蜜ぱいメンバーの紹介等も含め、ちょっとした大正・昭和初期の少女雑誌といった趣に成っていた。
あがた氏は、林氏の漫画諸作品と画集『紅犯花』に見られたドメスティックな資質と、ポップアート的な要素との融合に、日本的な文化背景と美意識の基に、“はいから” な西洋文化を取り入れようとした明治・大正期のモダニズム画家、竹久夢二や蕗谷虹児と同質なものを感じ取っていたのではないだろうか。
一方林氏もこのアルバムには、あがた氏の目指した世界観に呼応する様に、漫画「赤色エレジー」や初期の漫画諸作品でのアヴァンギャルドなポップアートと言う作風を離れ、画集『紅犯花』の作風を昇華させ、夢二や虹児が描いた “少女画” に特化した作品を提供している。
結果、当時この作品に対して、世間が評した “大正ロマン” という世界観を、見事に創り上げる事になっている。
大正・昭和初期の夢二や虹児と、現代の林静一とによって創り上げられた“虚構の過去” への憧憬とも言える“少女雑誌” 的世界を、音で表現しようとしたあがた森魚と蜂蜜ぱいの “音楽” はと言えば、
フェアポート・コンベンション(Fairport Convention)、ザ・バンド(The Band)、ウェスト・コーストのシンガー・ソング・ライター等からの影響を、タンゴやジンタの響きに潜ませ、あがた氏の言う “歩く白くまのテムポ” で繰り広げられたものであり、当時の “日本のフォーク・ロック” と称された諸作品からはかなり突き抜けた位置に有る作品と成っている。
収録曲については、様々なメディアで述べられ尽くしていると思われるので、ここからは、個人的で勝手な解釈で… 軽く紹介する事にする。
アルバムは、いきなり大正期の時代設定で、夢二の世界には描き切られない林静一の少女画に潜む負の部分も含んだ悲しく儚げなジンタ A-1「乙女の儚夢」で幕を開ける。
クラシック・ギターをバックにしたA-2「春の調べ」は、クラシックなストリングスにのせたB-3「秋の調べ」と同様、架空の少女雑誌の主人公が母にあてた手紙。
コンセプト・アートとしてのレコードの両面に、あがた氏が必要とした “少女” の声が巧みに配置されている。
荘厳な渡辺勝のパイプ・オルガンの様な(プロコル・ハルム風?)キーボードで立ち上がり、後半は、蜂蜜ぱいのザ・バンドあるいはフェアポート風な演奏で盛り上がるA-3「薔薇瑠璃学園」と、ピアノとアコースティック・ギターメインの小作品B-6「冬のサナトリウム」は、当時、イエズス会系の男子校に通う中学生だったわたしには、あがた氏の出身校である “函館ラ・サール学園” での、昭和日本のカトリック教育の環境というバックグラウンドを感じさせた。
あがた氏は後日、このアルバムで自身の “男女論” と “女性観” を表そうとしたと述べられているが、あがた氏の “架空の私小説” と言っても良いかと思われるこの二つの小作品には、カトリック系の男子校ならではの “女性観” を含んでいる様にも感じる。
この2作品も、やはりレコードの両面に、振り分けられている。
あがた氏の弾き語りに重厚なストリングスが被さる小作品 A-4「雨傘」と、酔って呂律が回っていない様なボーカルとギターによる B-2「電気ブラン」は、あがた流の女々しくダメな男のブルースか?
見世物小屋の口上から始まる A-6「大道芸人」
フェアポート・コンベンションの『Full House』(1970)に収録された「Walk Awhile」のフレーズを借用し、歌詞は、林静一の同名漫画のリリックを使用している。
ここでの蜂蜜ぱいの演奏も、ブリティッシュ・トラッド風味のザ・バンド風。
そして、レコードではA面の最後のA-6「大道芸人」からB面へのブリッジとして、「美しき天然」をバックにした口上 B-1「曲馬団小屋」に続く。
昭和9年の同名映画の主題歌として、
松島詩子が歌う原曲『女の友情の唄』のSPレコード盤音源に、
あがた森魚(左チャンネル)と、遠藤賢二(右チャンネル)のボーカルが被る A-5「女の友情」
エンケン(遠藤賢二)氏の歌声を選んだセンスは大正解 !
残る3曲は漫画「赤色エレジー」の世界を描いた曲。
B-4「赤色エレジー」
アルバム・オリジナル・ヴァ-ジョン。シングル・ヴァ-ジョンに比べスローテンポなジンタ。(あがた氏の言う “歩く白くまのテムポ” )
B-5「君はハートのクイーンだよ」
先行するシングルでは、「ハートのクイーン」というタイトルになっていた。 アルバム・ヴァージョンには蜂蜜ぱいのバック・コーラスが入っていない。
B-7「清怨夜曲」
『うた絵本 赤色エレジー』のヴァージョンに比べ、歌詞は大幅に加筆されている。 前半は、バイオリンとバンドネオンが奏でるやはり “歩く白くまのテムポ” のスローなタンゴ。 後半、鈴木茂のギターが加わると、これまでの、フェアポート/ザ・バンド風味といったこだわりを、一気にかなぐり捨てるかの様に、臆面もなく重厚なブルース・ロック風の展開になだれ込んでいく!!
後に(72年11月)リリースされたシングル『清怨夜曲/大道芸人』(OF-7)には、テンポアップした正統派タンゴ・ヴァージョンが収録されている。
ベクトルの違う二つの「赤色エレジー」
林静一とあがた森魚という、フィールドの違う二人の表現者が造り上げたこのコンセプト・アルバム『乙女の儚夢』
その、そもそものきっかけとなった二つの「赤色エレジー」
林静一の漫画作品「赤色エレジー」では、
どの時代にも普遍的に存在する “一郎と幸子” という若く幼い男女の、ささやかな幸せと軋轢が、どちらかと言えば “男性の目線” で描かれている。
また、最後まで前に踏み出すことが出来ない “一郎 = 男性” に対して、見えないピストルで一郎を撃つ事で自らに区切りをつける、“幸子 = 女性” の強ささえ描かれている。
一方、あがた森魚の楽曲「赤色エレジー」では、まず “幸子と一郎” なのである。
あがた氏の “女性観” の表れでもあるが、か弱く儚げな “女性の目線” を感じてしまう。
“一郎 = 男性” は、“幸子 = 女性” の目からは、時に “誠” でも有り “ままよ…” でも有る。
永遠にリピートされるジンタの如く、出口の見えない、弱さと儚さと、ささやかな “幸” は、終わりを迎えることがない。
二つの「赤色エレジー」はリンクしながらも、明らかに違うベクトルを持っている。
(この点は別項で触れる映像作品“あがた版赤色エレジー”『僕は天使ぢゃないよ』にも感じられる)
この作品『乙女の儚夢』以降、あがた森魚は、『ガロ』派に代表されるサブ・カルチャーとしての “漫画” とリンクしながら、精力的に作品を生み出し続けるが、直接的な林静一との接点は少なくなっている。(唯一「赤色エレジー」と言う作品に関しては、映像作品を通じて、その後も関わりが続くが…)
林静一も、漫画作品の発表は少なくなり、『乙女の儚夢』で確立された、“少女画” 路線のイラストレーターとしての活動が主となっていく。
二人の希有な表現者の微妙にクロスしたベクトルが、それぞれの方向で実を結んでいく。
そして、60年代末から70年代初頭という『漫画』と『音楽』という、二つの異なる “カウンター・カルチャー” の蜜月の時代が産み落とした二つの「赤色エレジー」と、アルバム『乙女の儚夢』は、
21世紀、令和の現代にさえ、“幻の儚夢の時代” を現出させ続けている。
あがた森魚『蓄音盤』
(芽璃懺堂 – MA-100)LP 1970
(Vivid Sound – CHOPD-067)CD 1999
(Vivid Sound – RATCD-4371)CD Remaster 2007
A-1 冬が来る~冬の祈り
A-2 神様なんているのかい
A-3 漆黒の雨
A-4 俺にとって俺とは何か
B-1 僕の楽曲
B-2 青い華燭
B-3 もてない男たちのうた
B-4 ハッテイキャロルの淋しい死
あがた森魚 : Vocals. Guitar
鈴木慶一 : Guitar. Piano. Bells. E-Bow
細野晴臣 : Bass
渡辺まさる : Guitar. Bass. Piano
小野太郎 : Drums. Vocals
千本木じゅんいち : Harmonica
丸山由美子 : Effects
小坂陽子 : Vocals. Tambourine
田村寛 : Vocals
Director : 前島邦昭
Liner Notes : 福原武志
録音 – 御苑スタジオ
あがた森魚・林静一
『うた絵本 赤色エレジー』
(幻燈社/芽璃懺堂 MRZ-4711)EP 1971
(SUPER FUJI FJSP-117)CD 2011
A-1 赤色エレジー
B-1 清怨夜曲
A-1 南部菜食バンド
あがた森魚 : Vocals. Guitar
鈴木慶一 : Piano
鈴木博文 : Clarinet
武川雅寛 : Violin
小野太郎 : Drums
B-1 池田家六重奏団
あがた森魚 : Vocals
池田光夫 : Bandoneon
渡辺勝(?) : Piano
朽風太郎(鈴木博文)(?): Bass
Unknown : Violin
V.A.『自然と文化の72時間
1971年全日本フォークジャンボリー実況盤』
(SKK712 King Records)1971
A-1 教訓1 – 加川良
A-2 遠い世界に – 藤原秀子
A-3 人間なんて – 吉田拓郎
A-4 雨が空から降れば – 六文銭
A-5 一人ぼっちのお祭り – 六文銭
A-6 面影橋 – 六文銭
B-1 こんなに遠く – のこいのこ
B-2 赤色エレジー – あがた森魚
B-3 僕はいったい誰でせう – 野沢享司
B-4 秋田竹力打ち唄 – 山平和彦とマイペース
B-5 自転車にのって – 高田渡.岩井宏.加川良
B-6 かみしばい – 岩井宏
C-1 教訓II – なぎらけんいち
C-2 サラリーマンをバカにしてはダメよ – 岩井宏
C-3 カレーライス – 遠藤賢司
C-4 サーカスにはピエロが – ディランII
C-5 かくれんぼ – はっぴいえんど
C-6 春よこい – はっぴいえんど
D-1 もしも – 武蔵野タンポポ団
D-2 俺たちの時代 – 斉藤哲夫
D-3 俺とボビーマギー – 中川五郎
D-4 お前と俺 – 加川良
D-5 それで自由になったのかい – 岡林信康
V.A.『第3回全日本フォークジャンボリー’71』
(URC – H35K25011~12 Kitty Records)1987
Disc1
01 加川良 – 教訓Ⅰ
02 加川良 – お前と俺
03 吉田拓郎 – 人間なんて
04 及川恒平 – ひとりぼっちのお祭り
05 及川恒平 – 面影橋から
06 あがた森魚 – 赤色エレジー
07 野沢享司 – ぼくは一体誰でせう
08 高田渡 – 自転車にのって
09 岩井宏 – かみしばい
10 岩井宏 – サラリーマンをバカにしちゃだめよ
11 なぎらけんいち – 一円玉
Disc2
01 遠藤賢司 – カレーライス
02 ザ・ディランⅡ – サーカスにはピエロが
03 はっぴいえんど – かくれんぼ
04 はっぴいえんど – 春よ来い
05 三上寛 – 夢は夜ひらく
06 三上寛 – 誰を怨めばいいのでございましょうか
07 武蔵野タンポポ団 – もしも
08 斉藤哲夫 – 俺たちの時代
09 中川五郎 – 俺とボビー・マギー
10 岡林信康 – 俺らいちぬけた
あがた森魚+蜂蜜ぱい
『赤色エレジー/ハートのクイーン』
(Bellwood Records – OF-1)1972
A-1 赤色エレジー
B-1 ハートのクイーン
あがた森魚 : Vocals
鈴木慶一 : Piano. Guitar
本田信介 : Electric Guitar
武川雅寛 : Violin
和田博己 : Electric Bass
渡辺勝 : Guitar
カシブチ哲郎 : Drums
あがた森魚『乙女の儚夢』
(Bellwood Records – OFL-5)1972
A-1 乙女の儚夢
A-2 春の調べ
A-3 薔薇瑠璃学園 (Lyrics 長谷川守正)
A-4 雨傘
A-5 女の友情 (Lyrics 吉屋信子 / Music 田村しげる)
A-6 大道芸人(Lyrics 林静一)
B-1 曲馬団小屋
B-2 電気ブラン
B-3 秋の調べ
B-4 赤色エレジー
B-5 君はハートのクイーンだよ
B-6 冬のサナトリウム
B-7 清怨夜曲
あがた森魚 : Vocals. Performer
鈴木慶一 : Guitar. Backing Vocals
本田信介 : Electric Guitar. Mandolin
和田博己 : Electric Bass
渡辺勝 : Organ. Accordion
石塚幸一 : Arrange(A-1)
森澄真理 : Performer(A-1)
小坂陽子 : Performer(A-3)
遠藤賢司 : Performer(A-5)
山野美和子 : Performer(A-5)
松島詩子 : Performer(A-5)
友部正人 : Spoons(B-5)
鈴木茂 : Electric Guitar(B-7)
あがた森魚『清怨夜曲/大道芸人』
(Bellwood Records – OF-7)1972
A-1 清怨夜曲
B-1 大道芸人
A-1 池田家六重奏団
あがた森魚 : Vocals
池田光夫 : Bandoneon
etc…
B-1 はちみつぱい
あがた森魚 : Vocals
鈴木慶一 : Piano. Guitar
本田信介 : Electric Guitar
武川雅寛 : Violin
和田博己 : Electric Bass
渡辺勝 : Guitar
カシブチ哲郎 : Drums