関西ノー・ウェイヴ 雑記 ④変身キリン・須山公美子

変身キリン本田久作君とは、
須山公美子を介して、
会うことが多かった。

須山公美子が、変身キリンと並行して、
わたしもベースで参加していた、
普通の(?)ROCKバンド
“ハッピーバンド”
を始めていた頃だったので、
ライブ・イベントの打ち合わせで
よく会っていたのかもしれない。
(ちょっと記憶があやふや…)

須山公美子と同じく、
変身キリンの最初のメンバーだった、
北田昌宏君は、すでにINUに移籍していたが、
ドラムの高畑千穂さんとも、
よく一緒に行動していた。

本多君の本名、久作からイメージされる
夢野久作の作品や、
稲垣垂穂『一千一秒物語』的な
世界観を持った歌詞。

ヴェルベッツ風のビートと、
大正・昭和初期を思わせるメロディー。

本多君自身の個性だけでは無く、
須山公美子当時の嗜好性も、
かなりの部分で反映されていたように思う。

本多君は、
文学青年然とした気難しい部分は無く、
結構気さくで個性的な
好青年と言った感じの人物だった。

作品の中では、
自分を “アノン” と呼んでいたが、
その由来は不明。
高畑千穂さんが、
“チーホ” として登場する事も有ったと思う。

変身キリンは元々、
本田君のワンマン・ユニット的なバンドだった為か、
メンバーは流動的で、
ライブ自体が少なかったと記憶している。

Idiot’o Clockイディオット(高山謙一)君、


螺旋階段(非常階段)リラダンズ頭士奈生樹君、


等が参加する事もあった様だ。

81年の春、
大阪のライブ・スペース
ウエストウッド(だったと思う…)
でのライブには、
INU町田君も飛び入りで参加していた。

82年には、
『ドッキリ・レコード』
3曲以来の作品として、
京都のゼロレコードから、
EP『8月4日に』をリリース。

須山公美子は、ゲスト扱いで参加
かげろうレコードを立ち上げた頃の、
ヴィオラ・リネア(Viola Renea)
今村空気君も、コーラスで参加。


エア(AIR)というバンドでベースを弾いていた
浅野宗彦君が、エンジニアを務めている。

浅野君によると、
レコーディング時には、
マイクのセッティング等、
かなり細かい部分まで拘って
音を作っていたらしい。

ローファイで有りながら、
凛とした奥行きの有る音に仕上がっており、
愛情を持って丁寧に造り込まれた
佳作といえる。

2003年に、
81年7月25日の、
京都 フレンチ・マーケットでの
ライブ音源を追加してCD化されている。

「赤い靴」「カラハリ砂漠の恋」等、
当時なじみのあった曲を、
改めて聴く事が出来る様になったのは、
嬉しくも懐かしくもある。

その後、
本多君は、活動の拠点を東京に移し
作品も、ブルースをベースにした物に変化

80年代も、
変身キリンとして活動を続けているが、
メンバーもすっかり変わり、
内容的には全く別のバンド
と考えた方が良いかもしれない。

その時期の音源は、
やはり2003年に、
『その後の変身キリン』
として、CD化されている。

この81年のデモ音源は、
クレジットはないが須山公美子も参加している?

そして、2004年
当の本田君自身は不参加という形で、

2004年の変身キリン『アノンを捜せ!』

と言うライブ・アルバムがリリースされる。
(既に音楽活動から離れ、
文筆業へ移行していた本多君は、
あえて演奏には参加しなかった様だ)

収録曲のうち
「Party Doll」は、
ハッピー・バンドでの須山の自作曲
「馬のヘンリー」も、本田君の作品ではあるが、
ハッピー・バンドで演奏していた曲

これは実質的には、
変身キリンのセルフ・カバーを含んだ、
須山公美子の作品。
と言っても良いのではないかと思う。

関西時代の変身キリンにおいては、
本田君と同等に、
須山公美子の存在が大きかった事を、
この作品を聴いて、
改めて認識し直す事になった。


ところで、須山公美子も、
変身キリンと並行して、
ハッピー・バンドを半年ほど続けた後、
ソロとしての活動を始めていた。

変身キリン『8月4日に』
と前後して、82年に、
やはり京都のゼロレコードから、
初のソロEP『虫の時』
をリリース。

自演のピアノのみをバックにした
シンプルながら、かなり強烈な印象を残す作品だった。

4曲収録のEP盤に、
別途1曲を収録したソノシートが付いていた様だ。

これも、
ずいぶん昔に現物を手放してしまっているので、
ソノシートが付いていたかどうかは、、
どうしても思い出せないのだけれど…

でも、どの曲も当時聴いた覚えが有るので、
多分、その形態に間違いは無いはず…

2年後の84年には、初のアルバム
『Les Chansons Qui Filent Du Rêve…』
を、やはりゼロレコードからリリース。

バックのメンバーは、
ほとんど大学時代の人脈のはず。
(ベースの西田君は、
一時ハッピー・バンドにも参加していた。)

『Les Chansons Qui Filent Du Rêve…』は、
モノクロのジャケットの色指定を間違えたのか、
妙に薄い色に仕上がってしまい、
ジャケットを作り直したり
(わたしの持っていたアルバムは、
正規のジャケットと、没ジャケット
2枚のジャケットが付けられたシロモノだった。)

B面の2曲目
「ライラ・ライラ」の代わりに、
本来収録するはずだった曲が、
(タイトル忘れた…)
ミキサーのミスで、
左右のチャンネルを逆にミックスされてしまい
没にせざるを得なくなったり…

はじめてのアルバムならではの、
色々と生みの苦しみがあった様だ

ちなみに、その没になった曲と言うのは、
“かぁさま、かぁさま、あめはまーだ、上がりませんか?”
という、むちゃくちゃ不気味な曲でして…

どういう経緯だったか、
これも思い出せないが、
当時その(不気味な)曲が入った状態での、
最初のアルバムの録音した
カセット・テープを持っていた。

わたしは既に就職していた頃で、
大阪の会社から、北陸方面を中心に、
商用車を使っての出張が多く
その際には、カーステレオで聴く為に、
お気に入りのレコードからダビングした、
カセットテープを何本も用意していた

ある時、
新潟のお客様のところでの商談が長引き、
その日に宿を取っていた富山市内まで、
夜になってから、車で戻ることになった。

今では
高速道路が開通している新潟・富山間だが、
当時はまだ、親不知の断崖絶壁沿いの
曲がりくねった国道
を使うしかない時代。

夜も更け、雨に雪も混じり始め
すれ違う車もほとんど無く、
親不知の国道を、たった一人で走るのは、
実に心細い。

暗く曲がりくねった
片側1車線の細い国道
真横は断崖絶壁
(もちろん断崖側は、
柱でガードされてはいるけれど)
心なしか雪も強く降りはじめ、
風の音も無気味。

しかし、よりによって
ちょうどそんなタイミングで、
カーステレオから流れてきたのが、

“かぁさま、かぁさま…”
と言う、例の須山の曲!!

「こ… 怖いやないかーい!!」

『虫の時』5曲は、
2016年に、ディスク・ユニオンの
Super Fuji レーベルから、
エンジニアの藤井暁さんの追悼シリーズとして、
『Les Chansons Qui Filent Du Rêve…』が、
リマスタリングCD再発された際に、
ボーナス・トラックとして全曲際収録されている。

ちなみに、1993年
VIVID SOUNDからの再発CDにも、
ボーナス・トラックとして4曲だけ収録されていたが、
「仮面の神」だけは未収録

その後、
関西を中心にソロ活動を続けていたと思うが、

大阪、天王寺“マントヒヒ”
(だったと思う… とにかく狭いスペース…)
で共演していた
“すきすきスウィッチ”
佐藤幸雄君との縁で、
東京方面での活動も増えていた様だった。

86年には、佐藤君の人脈で、

生活向上委員会パンゴ篠田昌巳さん、
チャクラ近藤達郎さん、清水一登さん、れいちさん、
A-MUSIC竹田賢一さん
等々… という豪華なメンバーで、

2ndアルバム
『夢のはじまり』を、リリース。

アルバム発表ライブも
大阪の当時としては大型のライブ・ハウス
“バーボン・ハウス” で行われ、
レコーディングの参加したメンバーも来阪し、
豪華なライブが行われた。

西成の “エッグ・プラント” での、
竹田賢一さん率いるA-MUSICのライブにも、
須山は参加。
ブレヒトのナンバー(だったと思う)を、
1曲だけ歌うと言う事も有ったと記憶している。

こちらも2016年に、
Super Fuji レーベルから、
藤井暁さんの追悼シリーズとして、
リマスタリング再発されている。

2002年にも、
須山のプライベート・レーベル
“Opera Club Office”からも、
CD再発されていた。

この作品の後は、
東京勢との繋がりは薄れた様で、
大塚まさじさんや、
中川イサトさんと言った
地元関西勢との活動が増えていた様に思う。


今回の一連の雑記では、
敬称を付けて紹介させて頂いた方々が多い中、
須山公美子さんだけは、
須山とか、須山公美子 とか…
呼び捨てで書いてしまっている。

どうしても当時の呼び方になってしまって、
逆に、敬称を付けるのも不自然な為、
御本人には、失礼かとも思いながらも、
敢えて敬称を略せて頂いた。


変身キリン
『8月4日に』(1982)
(Zero Records EP)

A-1 8月4日に
A-2 椅子

B-1 帽子

本田久作 : Vocals. Guitar
百太郎 : Bass (A-1. B-1)
須山公美子 : Piano. Organ. Vocals
イディオット(高山謙一) : Cymbal. Drums

頭士奈生樹 : Bass (A-2)
菅野直樹 : Guitar (A-2)
曽我晃次 : Backing Vocals (B-1)
今村空樹 : Backing Vocals (B-1)
木下真和 : Backing Vocals (B-1)

Mixed By : 木下真和. 浅野宗彦

変身キリン
『変身キリン』(2003)
(いぬん堂 CD)

01 8月4日に
02 椅子
03 カラハリ砂漠の恋
04 帽子
05 8月4日に
06 椅子
07 カラハリ砂漠の恋
08 クラリネット
09 赤い靴
10 シャララライライ
11 髪の長さで水を測る
12 帽子
13 少年のような少女
14 ウェディング・ムーン

本田久作 : Vocals. Guitar
百太郎 : Bass (01. 03-14)
須山公美子 : Piano. Organ. Vocals
イディオット(高山謙一) : Cymbal. Drums

頭士奈生樹 : Bass (02)
菅野直樹 : Guitar (02)
曽我晃次 : Backing Vocals (04)
今村空樹 : Backing Vocals (04)
木下真和 : Backing Vocals (04)

田中栄次 : Guitar. Vocals (05-14)

Mixed By : 木下真和. 浅野宗彦

1st Single “8月4日に” (01. 02. 04)
Unreleased Tape (03)
1981.07.25 “Soft Punk Party Vol.3”
at 京都 フレンチ・マーケット (05.- 14)

変身キリン
『その後の変身キリン』
(2003)

01 太った女
02 Six The Blues
03 女なのに
04 覚えている
05 クラリネット
06 シャララライライ
07 初めての夜
08 何処だ
09 ショッピング・バッグ・レディ
10 セシリア
11 後家殺し
12 Boo Bee Joe
13 もう一度通天閣の下で踊ろう
14 本田久作
15 七福神
16 何処だ
17 本田コール

本田久作 : Vocals. Guitar. Blues Harp (07.12.-16)
えびぞう : Bass (07. 12. -16)
浜田 : Drums (12.-16)
宮木英貴 : Percussion (12.-16). Drums(07)
Shigeo Matsumoto : drums

緒方敏明 : Guitar(07)
まなブー : Performer(10)

1981 Demo (05.10)
1986 Demo (01.06.11)
1985 Studio session (02.03.04.08.09)
1986.02.09 at 都立家政スーパーロフト“変身キリン復活祭”(07)
1986.10.27 at 大阪 エッグ・プラント“変身キリン復活ライブ”(12.-16)
Audience Noise 町田町象?? (17)

2004年の変身キリン
『アノンを捜せ!』
(2004)

01 Party Doll
02 8月4日に
03 赤い靴
04 カラハリ砂漠の恋
05 けむり
06 椅子
07 満月戦争
08 馬のヘンリー
09 サー・ロジャー・ドゥ・カバレー
10 ウエディング・ムーン
11 〜のために
12 99
13 シンナー
14 帽子
15 砂漠の砂売り
16 少年のような少女

須山久美子 : Vocals. Accordion. Piano
小間慶大 : Vocals. Electric Guitar
大熊ワタル : Clarinet. Glockenspiel. Percussion. Accordion. Piano. Vocals
中尾勘二 : Drums. Electronic Drums. Tenor Saxophone
関島岳郎 : Tuba

録音 – Big Apple, Kobe

須山公美子『虫の時』( 7″)
(1982) Zero Records

A-1 少女歌手
A-2 パラドックス

B-1 虫の時
B-2 仮面の神

少女の憧れ
C-1 少女の憧れ

Sound Conduct : 浅野宗彦

須山公美子
『Les Chansons Qui Filent Du Rêve…』
(1984) Zero Records LP

Face Du Soreil
A-1 サーカスがくるよ!
A-2 Dance
A-3 Lovers In China
A-4 冬の陽差し
A-5 午後の憂鬱
A-6 アラビアの夜

Face De La Lune
B-1 老娼婦の死
B-2 ライラ・ライラ
B-3 花嫁人形
B-4 寡黙な時間
B-5 夜に踊れば:心易く眠れ

須山公美子 : Vocals. Accordion. Piano
迎良久 : Mandorin (A-1. A-6)
西田卓 : Bass (A-1. A-6)
坪島功宣 : Guitar (A-2. A-4. B-2)
堀ひさのり : Bass (A-4. B-2)
白土“サイキック”まこと : Drums (A-4. B-2)
タイくん : Drums (A-6)
福島くん : Classic Guitar (B-1)

CSound Conduct : 浅野宗彦

須山公美子
『Les Chansons Qui Filent Du Rêve…』
(2016 Super Fuji Discs – FJSP-256)

Face Du Soreil
01 サーカスがくるよ!
02 Dance
03 Lovers In China
04 冬の陽差し
05 午後の憂鬱
06 アラビアの夜
Face De La Lune
07 老娼婦の死
08 ライラ・ライラ
09 花嫁人形
10 寡黙な時間
11 夜に踊れば:心易く眠れ
Bonus Tracks
12 少女の憧れ
13 虫の時
14 パラドックス
15 少女歌手
16 仮面の神

Mastered By : 宇都宮泰

須山公美子
『夢のはじまり
Yume No Ha Ji Ma Ri』
(1986) Zero Records LP

A-1 月夜の真空管
A-2 新しい大陸
A-3 空中フランコの唄
A-4 しゃぺらないわ
A-5 舟唄
A-6 花まつり

B-1 東京ーの軽業師
B-2 星のかけら
B-3 乙女のワルツ
B-4 マラソンランナー
B-5 すたあまいん

須山公美子 : vocals. Accordion. Piano
佐藤幸雄 : Guitar(B-3). Vibraphone(B-5)

篠田昌巳 : Producer & Alto-Saxophone. Tenor-Saxophone(A-2.B-1)
清水一登 : Piano(A-4)
大熊亘 : 2nd Conductor & Vibraphone(A-2)
中尾勘二 : Bass Trombone
中崎博生 : Euphonium

近藤達郎 : Percussion(A-3).Claves & Footstep(A-4)
Piano & Strings Arrangement(B-2)
れいち : Snare Drum(A-2)

竹田賢一 : 大正琴(A-6)

斉藤ネコ : 1st Violin(A-1.B-2)
栄田嘉彦 : 2nd Violin(A-1.B-2)
山田雄司 : Viola(A-1.B-2)
溝口肇 : Cello(A-1.B-2)

高田光子 : チンドン
高田千代子 : ドラム

迎良久 : Mandorin(A-3)

寒河江勇志 : Bass(A-3.A-4)
1st Conductor & Cello. Flute(A-2)
Producer & All Other Instruments(B-4)
小山伸一郎 : Wood Winds(B-4)
伊東信介 : Percussion(B-4)
服部夏樹 : Tenor-Saxophone(B-4)

Producer : 佐藤幸雄. 寒河江勇志(B-4)
Mixed By : 藤井暁

Viola Renea
『セイレイ舞踏』( 7″)
(1983 Kageroh Record)

A セイレイ舞踏
B 矢ばねのやいば

Vocals : 今村空樹
Guitar : 富依洋茂
Bass : 古賀俊司
Drum : 伊丹正典
Keyboards : 藤井 Shinko

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関西ノー・ウェイヴ 雑記 ④変身キリン・須山公美子” に対して2件のコメントがあります。

  1. TAKAHIKO より:

    懐かしいバンドばかりで、様々な事をおもいだしました。神戸では神戸大学六甲台講堂で、毎年行われていた「ROCKinROKKO」も、外せないイベントでした。当時私は、精密機械というバンドで活動していた。須山さんには、自主制作レコードにキーボードで手伝ってもらいました。精密機械は現在オリジナルメンバーで再始動しています。

    1. yoo-gto@zj9.so-net.ne.jp より:

      コメント有難うございます。
      精密機械の方ですか!!  懐かしいです!
      たぶん当時お会いしていたかもしれませんね。

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