Looking for 『L.A.M.F.』

1976年
マルコム・マクラーレン(Malcolm McLaren)の誘いで
イギリスに渡った、

ジョニー・サンダース(Johnny Thunders)と、
ハートブレーカーズ(The Heartbreakers)

   Johnny Thunders : Guitar. Vocals
   Walter Lure : Guitar. Vocals
   Billy Rath : Bass
   Jerry Nolan : Drums

トラック・レコーズと契約し残したのが、
77年リリース、唯一のスタジオ・アルバム

The Heartbreakers
『L.A.M.F. (Like A Mother Fucker)』(1977)
[Track Records TRACK – 2409 218]

Heartbreakers『L.A.M.F.』(1977)
(Track Records. Original Release)

A-1 Born To Lose
A-2 Baby Talk
A-3 All By Myself
A-4 I Wanna Be Loved
A-5 It’s Not Enough
A-6 Chinese Rocks

B-1 Get Off The Phone
B-2 Pirate Love
B-3 One Track Mind
B-4 I Love You
B-5 Goin’ Steady
B-6 Let Go

後年(2012年)
オリジナルLPからのリストア音源がリリースされるが、
下のYouTube音源は、
77年のオリジナル・カセット・テープ音源
「Get Off The Phone」「Chinese Rocks」の、
曲順が入れ替わっているのは、収録時間調整の為か?
オリジナルLPよりも、音質は良いらしい。

しかし、リリース後すぐにトラック・レコーズは倒産
市場に少量しか出回らなかったこのアルバム。

ジョニーも、バンドの他のメンバーも、
トラック・レコーズの、
オリジナル・ミックスには満足せず

特に、ジェリー・ノーランは、
この “下品な” ミックスに満足せず、
彼のバンド脱退の原因にまでなってしまう。

確かに、全体的に抜けの悪い音で、
特に、ドラムの音が貧相で立体感が無い
ジェリー・ノーランが怒るのも納得できる。


その後、84年になって、
倒産したトラック・レコーズの事務所から
入手したマスター・テープ
を、
ジョニー自身
(と、元ジェネレーションXトニー・ジェイムス)が、
ミックスし直した音源を、
Jungle Recordsからリリース。

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F. Revisited』
(1984)
[Jungle Records PRUED 4]

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F. Revisited』(1984)
(Jungle Records. Remixed by Johnny)

A-1 One Track Mind
A-2 I Wanna Be Loved
A-3 Pirate Love
A-4 Let Go
A-5 Do You Love Me *
A-6 Can’t Keep My Eyes On You *
A-7 Get Off The Phone

B-1 Chinese Rocks
B-2 Baby Talk
B-3 Going Steady
B-4 It’s Not Enough
B-5 I Love You
B-6 Born To Lose

下のYouTube音源は、
94年の英国盤再発CD音源?
8曲目に「All By Myself」が追加されている。
この曲も、84年当時のリミックス??
(しかし、ダサいジャケット…)

(Receiver Records Limited – RRCD 190)
L.A.M.F. (Revisited) FULL ALBUM

オーバー・ダブを施したり、
ボーカル・テイクを入れ替えたり…と、
ジョニーは、
かなり好き放題に手を加えていたらしい。

音質は、当時の主流だった、
低音と高音を強調した、
いわゆる “ドンシャリ”

ジョニー自身のギターも、
ジェリー・ノーランのドラムも、
多少クリアになり、音圧も上がっているが、
逆に、隙間の多い少々安っぽい音に成ってしまっている。

90年代に、CD化もされているが、
現在まで、リマスターされていない

また、「All By Myself」をカットし、
オリジナルには未収録の
A-5「Do You Love Me」
A-6「Can’t Keep My Eyes On You」
2曲が追加されていた。

アルバム・ジャケットも、
黒地に、L.A.M.F.の文字だけのシンプルな物

わたし自身、長年、
これがオリジナル・デザインだと思い込み、
音も、曲順も、
このアルバムのものに慣れ親しんでいたし

同世代のリスナーの間では、
この『 L.A.M.F. Revisited』が、
『 L.A.M.F. 』定番的なアイテムに、
なっていたのではないかと思う。

86年には、
ライブ盤『D.T.K. Live At The Speakeasy』
との、2 in 1 CD
『D.T.K. – L.A.M.F』
(Jungle Records CD FREUD 4)
も、リリースされていた。

こちらも、 『L.A.M.F. Revisited』音源
「All By Myself」を追加している。

わたしも当時、このお得感のあるCDを購入していた。
CDで手軽に聞けるようになった音源が、
『L.A.M.F. Revisited』音源だったと言うのも、
わたし達世代が、
この音源に愛着を持つ原因かもしれない。


しかし、94年になって、

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』
(1994)
[Jungle Records  FREUD CD 044E

という2枚組CDがリリースされた。
(ボーナス・ディスクだったと思われるCD2を省いた
1枚物のアナログ・LPも、同時にリリースされている)

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』(1994)
(Jungle Records)

Disc1
(Track Records Altarnate Mix ’77)

01 Born to Lose
02 Baby Talk
03 All by Myself
04 I Wanna Be Loved
05 It’s Not Enough
06 Chinese Rocks
07 Get Off the Phone
08 Pirate Love
09 One Track Mind
10 I Love You
11 Goin’ Steady
12 Let Go
13 Can’t Keep My Eyes on You *
14 Do You Love Me *

Disc2
(Collection of Demos, Outtakes, and Alternate Mixes)

01 Born Too Loose
02 Chinese Rocks
03 Let Go

1977.02.20-22 The Essex Studios Demo Sessions

04 Goin’ Steady (backing track)
05 Baby Talk (backing track)
06 Pirate Love (backing track)
07 Born to Lose (backing track)
08 Chinese Rocks (backing track)
09 Do You Love Me?
Outtakes from The Ramport Studio Sessions

10 Can’t Keep My Eyes on You
Single B-side, Recorded Live
at London’s Speakeasy in Early 1977

11 Get Off the Phone (alternate mix)
1977.05.16 Mixed at Olympic Studio

12 All by Myself (alternate mix)
1977.?.? Mixed at Ramport Studio

13 It’s Not Enough (alternate mix)
1977.06.01 Mixed at Ramport Studio

14 One Track Mind (alternate mix)
1977.06.27 Mixed at Ramport Studio

15 Too Much Junkie Business (Walter Lure, Johnny Thunders)
16 London Boys (Johnny Thunders, Walter Lure, Billy Rath)
1977.12.13 Demos Done for EMI Records
at Riverside Studio, London

Disc2 の、
デモやアウト・テイクスも、
もちろん貴重なものだったが、
問題は、Dosc1

77年の、オリジナル・ミックスとは別の、
ジョニーが比較的満足していたミックス
CD化だと言う事だった。
(77年当時、オリジナル・ミックスに満足できず、
何度もミックスをやり直していたらしく、
その数は300テイクに及ぶらしい)

77年のLPに使用された、
オリジナル・ミックスの、
マスター・テープは既に紛失してしまっていたらしい

『L.A.M.F. Revisited』で、
追加された2曲も収録している。

(曲によって、ミックスに使われたスタジオも、
日時もバラバラ
なので、
やはり、別ミックスが完成した、決定的な
マスター・テープが有った訳では無い様だ。
)

L.A.M.F. The Lost ’77 Mixes

音的には、
『L.A.M.F. Revisited』と比べると、
やはり少し抜けが悪いと言うが、
多少濁ったモコモコした感触が有るが、

決して悪いミックスでは無く
音の厚みもあり
4ピースのバンドとしてのバランスは、
こちらのミックスの方が勝っている様にも思える。

ただ、どうしても気になるのは、
やはり、この曲順!!

もちろん、この曲順は、
トラック・レコーズの、
オリジナルLPに準じたもので、
最後に、
『L.A.M.F. Revisited』で、
ジョニーが追加した2曲を、
持ってきたものなのだけれど…

『L.A.M.F. Revisited』
曲順になれた耳には
1曲目に「Born to Lose」
と言うのは、
どうにも違和感がぬぐえない。


さらに、さらに
ややこしい事に、
2012年には、

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F.: Definitive Edition』
(2012)
[Jungle Records FREUDCD104

と言う、CD4枚セットのボックスがリリースされる。

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F.: Definitive Edition』(2012)
(Jungle Records)

Disc1
(Track Records Altarnate Mix ’77)

01 Born to Lose
02 Baby Talk
03 All by Myself
04 I Wanna Be Loved
05 It’s Not Enough
06 Chinese Rocks
07 Get Off the Phone
08 Pirate Love
09 One Track Mind
10 I Love You
11 Goin’ Steady
12 Let Go
13 Can’t Keep My Eyes on You *

14 Do You Love Me *

Disc2
(Restored Version of The Original Album)

01 Born To Loose
02 Baby Talk
03 All by Myself
04 I Wanna Be Loved
05 It’s Not Enough
06 Chinese Rocks
07 Get Off the Phone
08 Pirate Love
09 One Track Mind
10 I Love You
11 Goin’ Steady
12 Let Go

Disc3
(The Demo Session)

01 I Wanna Be Loved (MixⅡ)
02 Pirate Love
03 Going Steady
04 Flight
1976.01 SBS Studios with Richard Hell

05 Born to Lose
06 Can’t Keep My Eyes on You
07 It’s Not Enough
08 I Love You
09 Take a Chance
10 Do You Love Me?
1976. Jay Nap Studios

11 Let Go
12 Chinese Rocks
13 Born to Lose
1977.02 Essex Studios

Disc4
(The alternative mixes
from Different Studios and

Different Days in 1977)

01 Born to Lose (1977.02.20 Essex Studio)
02 Born to Lose (1977.03.22 Ramport Studio)
03 Baby Talk (1977.06.05 Ramport Studio)
04 Baby Talk (1977.09.15 Advision Studio)
05 All by Myself (1977.05.16 Olympic Studio)
06 All by Myself (1977.Unknown Date Ramport Studio)
07 It’s Not Enough (1977.06.01 Ramport Studio)
08 It’s Not Enough (1977.06.27 Ramport Studio)
09 Chinese Rocks (1977.03.22 Ramport Studio)
10 Get Off the Phone (1977.05.16 Olympic Studio)
11 Pirate Love (1977.06.07 Ramport Studio)
12 Pirate Love (1977.07.02 Ramport Studio)
13 One Track Mind (1977.06.22 Ramport Studio)
14 One Track Mind (1977.09.10 Advision Studio)
15 I Love You (1977.06.11 Ramport Studio)
16 Goin’ Steady (1977.05.19 Olympic Studio)
17 Goin’ Steady (1977.07.22 Ramport Studio)
18 Let Go (1977.06.10 Ramport Studio)
19 Let Go (1977.07.02 Ramport Studio)
20 Can’t Keep My Eyes on You (1977.04.22 Ramport Studio)
21 Do You Love Me (1977.07.22 Ramport Studio)

Disc1 は、
『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』
と、同内容
オリジナル・リリースが90年代前半なので、
リマスターされている様だけれど…

2017年には、このDisc1の内容と同じ、
つまり『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』の、
リマスター盤も、紙ジャケットで再発されており、
そちらは、低音が厚くなっているらしい。
わたしは未聴なので、未確認…

Disc3 は、
3か所のスタジオ・デモ音源

76年1月の、リチャート・ヘル在籍時の4曲は貴重かも。

Disc4 は、4か所のスタジオで、
77年の2月から9月まで、繰り返し行われた
別ミックス集

元のテイクは同じ物なので、
微妙なミックスの違いに拘る
マニア・コレクター向き

正直、これを聴き通すのは、
けっこうキツイ…

そして、問題は、
Disc2 !!

77年、Track Recordsの、
オリジナル・アナログ・ミックスの、
リストア音源

マスター・テープは紛失してしまっている為、
アナログ・レコードからの、
いわゆる“盤起こし” 音源

スクラッチ・ノイズ等の
リダクションも行われている様だが、
基本的に、アナログ音源の
ストレートなデジタル化らしい。
(リマスタリングはされているかも…)

うーん… こういうもんだったんだぁー

と言う程度の物。

上に揚げたYouTube
オリジナル・カセット・テープ音源より、
更に抜けの悪い音に感じる。

『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』
ミックスが有れば充分!!

音源を持っている事に満足できる、
という意味で、コレクター向き。


と言う事で…

ナチュラル・ボーン・バンクス!!
ジョニー・サンダースの作品の中でも、
最高傑作と言われ、

ハート・ブレイカーズとしては、
唯一のスタジオ・アルバム、

『L.A.M.F.』

現在では、
『 L.A.M.F. Revisited』は、
完全に無視された様な状態で、

『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』が、
定番となっている。

が…

これは、世代的なものかもしれないけれど…

個人的には、
『L.A.M.F.』と言えば、やはり、
『L.A.M.F. Revisited』!!!

この、今となっては時代遅れな音と、
やりたい放題のオーバー・ダブ

真黒なジャケットに、
殴り書きの L.A.M.F. !!

ジョニーのいい加減さが、
良い意味で出ている様にも思えて、

現代的に整えられた
『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』
と比べると、ある意味 “かっこわるい”
『L.A.M.F. Revisited』の方に、
何故か愛着が湧いてしまう

『L.A.M.F. Revisited』
音像から伝わってくるのは、

ジョニー・サンダースと言う
“PUNKS” の、

器用でも、知的でも無く、
自己管理も上手くできず…
ドラッグに溺れて、
生き急ぐ様に逝ってしまった…

そんな “かっこわるさ” の裏返しの
“かっこよさ” なのだから!!

「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」
(By. 早川義男)

ところで、わたしの持っている
『L.A.M.F. Revisited』の日本盤CDは、
90年代製と言う事も有り、
かなり音圧が低く、若干貧相な音源…

『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』の、
曲順を入れ替えて聴いた方が良いのかも…
等とも考えてしまう。
(正直、今回この記事を書く為に聞き比べていたら、
『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』
厚みの有る音も好きになってしまった…)

『L.A.M.F. Revisited』無視せずに、
しっかりとリマスターした上での、
CD再発を期待したい。

(【追記】2021年10月4日)

最近、この作品の共同プロデューサーだった
ダニエル・セクンダ(Daniel Secunda)のロフトから
「Copy Master 12.7.77」題されたテープが発見されたが、
実はこれが、紛失したとされていた『L.A.M.F.』
マスター・テープだったと言う事らしい!!

このオリジナル・マスターを基に、
7月のRECORD STORE DAY(レコードストアデイ)に、
『L.A.M.F. The FOUND masters』
と言うアナログ・レコードが発表されている。

Johnny Thunders & The Heartbreakers
『L.A.M.F. – The Found ’77 Masters』
(2021)
[Jungle Records TRACKLP77]

A-1 Born To Lose
A-2 Baby Talk
A-3 All By Myself
A-4 I Wanna Be Loved
A-5 It’s Not Enough
A-6 Chinese Rocks
A-7 Get Off The Phone

B-1 Pirate Love
B-2 One Track Mind
B-3 I Love You
B-4 Goin’ Steady
B-5 Let Go


B-6 Can´t Keep My Eyes On You
B-7 Do You Love Me

これは、1977年のTrack Records版
『L.A.M.F.』最終マスターと言う事になる!!
曲順は、『L.A.M.F.: The Lost ’77 Mixes』と同じで、
最後に、「Can´t Keep My Eyes On You
「Do You Love Me」2曲を追加
(相変わらず、『L.A.M.F. Revisited』は無視されたまま…)

アナログ・レコードは未入手ながら、
10月末には、
シングル・ミックス等のボーナス・トラックCDを加えて、
2枚組CDがリリースされる予定!!

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