The Rolling Stones Atlantic City 1989

アトランティック・シティ1989

2011年から始まったローリング・ストーンズの、
過去音源のアーカイヴス・シリーズ

“From The Vault”

これまでも、ブートレッグの定番となっていたライブ音源
リミックス・リマスターしてオフィシャル化してきました。

73年のブリュッセル 『Brussels Affair 1973』

75年のLAフォーラム 『L.A. Forum』

81年のハンプトン 『Hampton Coliseum』

2020年になって、ようやく、というか今更ながらに、
オフィシャル・リリースされたのが、

『Steel Wheels Live – Atlantic City New Jersey』

1989年スティール・ホイールズ・ツアー終盤、
12月19日 ニュージャージー州アトランティック・シティでのライブの、
リマスター音源と、リストアされた映像

ガンズ・アンド・ローゼズアクセル・ローズイジー・ストラドリン

ジョン・リー・フッカーエリック・クラプトン 

等、豪華ゲストを迎えての、このスペシャル・イベントの模様は、

ケーブルテレビで全米に生中継され、
同時にFMでも、全米に生放送されました。

わたしにとって、あるいは、多くのストーンズ・ファンにとっても
この89年アトランティックシティーの音源と映像は、
ストーンズ・ブートレッグ(海賊盤)の世界へ入口となった、
記念すべき(??)アイテムだったのかもしれません。

1990年の初来日を控えたタイミング。

当時の西新宿ブート街(海賊盤屋街)では、
商品のフォーマットの主流が、
アナログ・レコードからCDへと切り替っていました

併せて、ビデオも普及し始めた頃で、
海外のテレビで放映された映像や、
ライブ会場で隠し撮りした動画をVHSテープにダビングした物が、
ブート・ビデオとして販売され始めていました。

当時たまたま立ち寄った、
柏木公園の奥の雑居ビルの2階のブート屋さん
(店名は忘れました…)
流れていたのは、早速ケーブルTVの放送をダビングした、
アトランティックシティでのライブ映像
もちろん当時のメディアはHVSのビデオテープ

ダビングした物とはいえ、画質もまあまあ(もちろんブートとしては…)。
VHSテープ2本セットで、お値段もそこそしていたと思います。
ゲストも豪華ですが、なによりもケーブルTVの生中継ですので、
当日のコンサートの全容が、ノーカットで収録されている訳ですから、
当時としては、かなり貴重なアイテムです。

当時のわたしは、レコードやCDにはこだわりが有りましたが、
映像には、あまりコレクションの対象として魅力を感じておらず、
再生用のビデオ・デッキも持っていませんでした。

それでも、このアイテムには強烈に魅かれ…
結局、再生できないにも拘らず購入してしまいました。

こういう所がコレクターの性なんでしょうね…

80年代後半、フランク・ザッパが、
世界初のCDシングル『Peaches En Regalia』を発売した時も、
まだCDプレーヤーというものを持っていないのに、
2枚も購入してしまいました。

後日、再放送された番組を、エア・チェックしたVHSテープも出回りました。
アングルが違う映像が使用され、編集されて曲数も減っていました。

いずれの映像も、後日ブートDVDとして出回っていますので、
今では簡単に入手できると思います。

もちろんその後、FMのエアチェック音源から、
多くのブートCDが製作されたのは、言うまでも有りません。

そして、
このアトランティクシティ音源との出会いをきっかけに、
わたしはその後、西新宿、小滝橋通り沿いの
ブートレッグ街に通い詰める事になったわけです…

90年代、ブートCD最盛期には、
小滝橋通り沿いに
「新宿レコード」や「新宿ロフト」方面に向かって右手の、
雑居ビル「ダイカンプラザ」に2~3件。
道をはさんで向いのビルにも1~2件。
柏木公園の周辺には、昔からの輸入盤屋に混じって5~6件。
それぞれ少しずつ得意ジャンルの違う、
ブート専門店が点在していました。

当初は、イタリア・ドイツなどからの輸入盤がほとんどで、
まだまだアイテム数は限られたものでしたが、
そのうち、海外では “The Swingin’ Pig (TSP)” が登場。

さらに日本製のストーンズ専門レーベルも。
所沢の “アイドル・マインド・プロダクション(IMP)”
“ビニールギャング・プロダクト(VGP 通称ビニギャン)”
等々… 続々と登場してきました。

とにかく、店を覗く度に、
ストーンズ関連だけでも、
毎回何かしらの新アイテムが発売されていた訳で…
その上、ブートCDと言うのは、通常のCDに比べて
かなり高めの価格設定!

今になって考えると、
なかなかに無駄な散財をしていたものです…

たしか… 
中野D児さんが関係していたお店だった思いますが、
ストーンズのアナログ・ブートからの、
いわゆる “盤起こしCD”
(レコードの再生音をデジタル化してCDにした物)を、
お店独自で販売を始め、
(King Snake Records というレーベル)

King Snake Records


LPレコード・サイズの豪華ボックス入りのCDも販売していました。

そのうち、CDケースよりひとまわりほど大きい、
ジャケットのシールを貼ったダンボール製の化粧箱に、
CDのディスクを入れた物を販売し始めました。
さらに、その化粧箱も、黒、ピンク、白 等のヴァリエーション豊富に…

もちろん、中身はどれも同じ!!
レコードのスクラッチ・ノイズがバチバチ入ったような、
今考えると、ひどい内容のCDを、装丁で誤魔化していたようなものです。
でも当時は、それしか音源を聴く事が出来なかった為、
なんだかんだで売れていたようです。

ジャケット違い、メーカー違い 等はもちろん、
1stプレスと2ndプレスで品番が違う物まで
蒐集の対象として見てしまうのが
コレクターの性ですが、

さすがに、これには… 
手を出すことは有りませんでした…

アトランティクシテイー音源のブートCDとしては、

最初に出たのは、

TSP(The Swingin’ Pig)
『Atlantic City ’89』(TSP-075)BOXセット

初回盤
「2000 Light Year From Home」未収録
(エア・チェックのトラブル?)の3枚組。

2ndバージョン
「2000 Light Year From Home」収録

3rdバージョンは、なぜかまた、
「2000 Light Year From Home」未収録

初回バージョンから3rdバージョンは、シルバーのロゴ


最終形
「2000 Light Year From Home」も収録の3枚に
テレビ放送時に、ライブ開始前に流れたドキュメントの音声や、
幾つかのボーナス・トラックを収録したディスクを加えた4枚組

最終形(限定版)は、ゴールドのロゴ
ボーナスディスクの内容

当時のTSPのブートCDは、このアイテムに限らず、
90年代当時流行りの低音と高音を強調した、
イコライジング処理が強過ぎる音に仕上げられていて、
今聴くと、キンキンしていて少々疲れます。

その後、このTSP盤をコピーしたアイテムも
何点か登場しました。
オープニングの「Continental Drift」を短くしたり、
曲間完成などをカットして、
コンパクトにCD2枚に収めていました。

『ATLANTIC CITY 1989』(Crystal Cat CC459-460)

さらに、国産、ビニギャンからも
TSPとは別ソースを使用したと思われる3枚組も登場。

『Terrifying』(VGP-309)

今のところ、ブートCDとしては、
SODDからの『Terrifying』(SODD 064/65/66)が、
音質も良好で、曲間のカットが少なく、
ベスト・アイテムと言われています。

『Terrifying』(SODD 064/65/66)

そして、ついに出た、オフィシャル音源!!!

まずはCDですが、
音質の面では、リマスター・リミックス
と言う事で、もちろん文句の無いものです。

しかし、ブート音源は、放送当時のままの未編集
ノン・リマスター、ノン・リミックス音源なので、

オフィシャル音源とは別物と
考えて良いと思います。

今回のオフィシャル音源の最大の欠点は、

オープニングの「Continental Drift」を、
まるまるカットしてしまい、
突然「Start Me Up」から始まってしまう…
という点です!!

スティール・ホイールズ・ツアーのオープニングというのは、
延々と続く「Continental Drift」で盛り上がった所で、
突然打ち上げられる花火の直後に、
キースが、「Start Me Up」イントロのリフを、
ギターで切りこんでくる!!
というのがワンセットになっていないと!!!

特に、1990年に初めてストーンズのライブを体験した
日本のリスナーにとっては、

あの歴史的な… 
と言っても良いオープニングは
特別な物だったはずです!!

1975.76年のツアーでの、
「Fanfare for the Common Man」の無い
「Honky Tonk Woman」でのオープニング

1981.82年のツアーでの、
「Take The A Train」の無い
「Under My Thumb」でのオープニング

以上に、これは致命的かもしれません。

そして、ブルーレイ(またはDVD)の映像ですが、
さすがに30年前の放送用の映像ですので、
リストアしても、限度が有る様です。

2000年代以降のブルーレイ画質を期待すると、
とょっと肩透かしをくらうかもしれません。

でも、ブートDVDのような輪郭の滲み等は無く
安心して観ていられる画質です。

やはり、再編集されている様で、

89年当日の生放送映像と、
再放送映像を収録した
ブートDVDも、

併せてコレクションしておきたいものです。

どうせなら、放送当日のオリジナル再放送バージョンも、
併せてリストア、ブルーレイ化して欲しかったところです。

ブートDVDの動画より

ガンズの二人をゲストに迎えた、
この日限りの「Salt Of The Earth」の、
ブートDVD動画ですが、
今回のオフィシャル動画と比べると、
基本的には同じですが、
オフィシャルでは、

ブート(=ケーブルTV生放送)動画には無いカットが、
何か所か使われていました!!

やはりコレクター泣かせなアイテムです…

しかし!!!
映像の方でもオープニングに問題が!

まず「Continental Drift」が短い!

放送当日のオリジナルは、生中継と言う事で、
編集ができなかったという事情も有ったのかもしれませんが、
延々と「Continental Drift」が流れる中、
スティーム・パンク的なセットを映し続けていたのが、
結果として、ライブの開始を待つ聴視者の気持を、
徐々にに高揚させてくれる効果を生む事になっていた訳ですから。

それに、セットを映した映像の上に、
ストーンズのロゴ・マークと、
なんだか訳のわからん水色の点々が、かぶさっていて…

これでは、あの印象的なオープニング・シーンが、
台無しです!!

まあ、なんだかんだと文句を言いながらも、
久しぶりに30年前のストーンズを楽しませてもらいました。

しかし今見ると、ミックやロニーのステージ衣装は…
80年代バブル期を引きずっている様で、
少々、気恥ずかしくなってしまいます。

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