頭脳警察 時代はサーカスの象にのって

前項のジャクソン・ブラウンの
“Before The Deluge”“洪水” という言葉が表す、
抗う事の出来ない時代の大きな流れの中で、
キリスト教的な世界観を持たない日本人である、
無力な我々にできる事といったら…

現在のコロナ禍で、ふと頭に浮かんだのが

2度目の再結成時頭脳警察
2008年シングル曲

「時代はサーカスの象にのって」の一節

 “せめてその象に、
  サーカスの芸当を教えてやろう”

同名の戯曲1969年
寺山修司の劇団・天井桟敷が初演

ベトナム戦争の時代、
アメリカに対する反発と、その裏にある憧れをテーマとした
短編のオムニバス形式の戯曲として演じられた。
(1984年には、寺山修司追悼公演として再上演された。)

楽曲としての「時代はサーカスの象にのって」は、
寺山修司の散文詩に、劇作家・演出家の高取英が加筆した歌詞に、
パンタが曲をつけたもの。

高橋廣行氏(元アダン音楽事務所)が代表を務める
アイドルジャパンレコードに所属する
アイドルユニット制服向上委員会に、
アルバム収録曲として、同じ事務所のパンタが提供していた曲。

2008年シングルは、頭脳警察バージョンとして再演されたもの。

作詞 : 寺山修司 / 高取英
作曲 : Pantax’s World

どこからでも やり直しは出来るだろう
おまえは(私は) おまえ(私)自身のつくり出した
一片の物語の主人公だから
でも せめて きかせておくれ
悪夢ではない ジンタのひびきを

戦争と戦争の間に
俺たち(私達は)はいる
それを 忘れることはない
でも せめて きかせておくれ
悪夢ではない ジンタのひびきを

時代はゆっくりと やってくる
おく病ものの象に またがって
せめて その象に
サーカスの芸当を 教えてやろう

()内は原詩

 1969年、戯曲初演当時。

アメリカからもたらされた物資的豊かさの象徴としてのコカコーラ
そのコーラの瓶の中で飼われはじめたトカゲ
大きくなりすぎて口からは出られないが、その瓶を砕く程の力も無い
戯曲では、そのみじめなトカゲに、当時の日本が投影された

そして、おく病ものの象を動かしていたのは
当時のアメリカが象徴する迷走する資本主義大国だったのか?

ただ当時はまだその先に裏返しの憧れが見え
悪夢ではない、明るいジンタのひびきが聞こえていたはず…

 2008年、シングル発売当時。

スリーマイル島事故阪神淡路大震災アメリカ同時多発テロ
にわかに、黙示録的世界が見え始めた時代

おく病ものの象をゆっくり動かす側に、
日本も含めた全世界が加担し始めている

 そして、2020年。

もはや世界中が共犯者として動かし始めた
おく病ものの象の背に乗って運ばれる時代には

“平和”と“戦争”
“発展”と“荒廃”
“天恵”と“災害… が、
大きなうねりの中に
ランダムに配置されていることだろう。

黙示録に記された世界の先に、
我々は、最期の審判に期待できる訳でもない

巨大な象の歩みを止める事が出来ないのなら。
手懐ける事もかなわないのなら、

せめてサーカスの芸当を教えてやろう

どちらへ転ぶかも解らない時代の中で、
悪夢かもしれないジンタの響きに乗って

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