未完の表現者・安部慎一 ① (作品一覧)
漫画家 “安部慎一”
この名を知る者が令和のこの時代に、
どれ程居るのだろうか…
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/11/ab094.jpg?resize=1024%2C810&ssl=1)
1970年代初頭、病的なまでに細密で有りながら、
錆びたカミソリの様に鈍く危うい描線で描かれた、
“私小説” ならぬ “私漫画” とも言える彼の諸作品。
それは、当時 “カウンターカルチャー” としての
“マンガ” を体験した世代の心中に、
鈍い痛みを伴う古傷を残していった…
福岡県、筑豊炭田の炭鉱町田川市で、
比較的裕福な家庭に育った彼は、
高校時代には新聞部に所属し、
小説家を目指したことも有ったという。
永島慎二の「青春裁判」に出会ったことから、
“マンガ” という表現手段を選択した。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1967年3月-永島慎二-「青春裁判」シリーズ黄色い涙-青春残酷物語-その3-.jpg?resize=590%2C453&ssl=1)
高校在学中の1968年には家出を決行。
阿佐ヶ谷の永島慎二を訪ねるが、追い返されている。
(福岡から飛行機で家出(?)して来たという若造を、
60年代前半の “フーテン” を体現してきた永島が
受け入れなかったのは、当然と言えば当然…)
高校卒業後、地元福岡県田川市の実家で執筆を続け、
当時「ガロ」に対抗して、手塚治虫が
虫プロ商事から発行していた月刊誌「COM」と、
小学館の青年誌「ビッグコミック」に、
5作を投稿している。
1969-① 「土曜日」「剣」「家出」
COM 1969-1970 ぐら・こん 佳作入選
1969-② 「春の休暇」「星のない夜」
ビッグコミック 1969-1970 投稿作品
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1969-①-COM-1969-1970-ぐら・こん-佳作入選.jpg?resize=787%2C1024&ssl=1)
「COM」「ビッグコミック」への投稿作は、
永島慎二やつげ義春の模倣の域を出ていなかったと言う。
(当時の原稿は、本人の手元にも残っていないらしい)
その後、つげ義春の「海辺の叙景」に影響を受け、
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/つげ-.jpg?resize=595%2C445&ssl=1)
淡々と事象を描いた “私漫画” 「やさしい人」を
「ガロ」に投稿、入選・掲載された。
1970年作品
1970-① 「やさしい人」
ガロ 1970年5月 入選作【再録単行本】A. L. N. Q.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
「ガロ」 1970年5月号に入選作として掲載された
「やさしい人」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1970-①-「やさしい人」-ガロ-1970年5月-入選作-.jpg?resize=1024%2C538&ssl=1)
同時期の漫画家、宮谷一彦とも重なる
細密でリアルに描き込まれた背景と、
デフォルメを極力避けた人物の描写により、
静かに冷たく張り詰めた “叙景” を見事に切り取る事に成功し、
デビュー作の時点で、ただならぬ存在感を示している。
その後、
高校時代の新聞部の後輩として出遭い、付き合い始めていた
畠中美代子(現在の奥様)の卒業を待ち、上京。
杉並区阿佐ヶ谷、富士荘二階で同棲しながら執筆活動を始める。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2022/01/C7S3JJsV4AAFHG7b.jpg?resize=698%2C676&ssl=1)
1971年作品
1971-① 「美代子阿佐ヶ谷気分」
ガロ 1971年3月号 【再録単行本】A. F. N.
1971-② 「孤独未満」
ヤングコミック 1971年4月14日号 【再録単行本】B. E. M. N. Q
1971-③ 「髪」
ヤングコミック 1971年6月9日号 【再録単行本】B. E. M. N.
1971-④ 「雨の少年」
ヤングコミック 1971年6月9日号 【再録単行本】B. E. M. Q.
1971-⑤ 「獅子」
ヤングコミック 1971年6月9日号 【再録単行本】B. E. M.
1971-⑥ 「沈める雪」
ヤングコミック 1971年9月22日号 【再録単行本】B. E. M.
1971-⑦ 「猫」
ヤングコミック 1971年9月22日号 【再録単行本】B. E. M. N. Q.
1971-⑧ 「浮気女」
月刊タッチ 1971年9月号 【再録単行本】B. H.
1971-⑨ 「富士荘二階」
ヤングギター増刊 OUR SONG NIPPON 1971年10月 【再録単行本】H.
1971-⑩ 「軽い肩」
ヤングコミック 1971年10月13日号 【再録単行本】B. E. M. N. Q.
1971-⑪ 「軍刀」
ガロ 1971年11月号 【再録単行本】A. F.
1971-⑫ 「背中」
ヤングコミック 1971年11月10日号 【再録単行本】B. E. M.
1971-⑬ 「冬」
ヤングコミック 1971年11月24日号 【再録単行本】B. H.
1971-⑭ 「まり子の憧れ」
月刊タッチ 1971年11月号 【再録単行本】C.
1971-⑮ 「屋根」
ヤングコミック 1971年12月22日号 【再録単行本】B. K. Q.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
上京後は、当時の「ガロ」誌上で “一二三トリオ” と呼ばれた
鈴木翁二、古川益三らと、阿佐ヶ谷近辺での親交を深める。
安部は当時の金額で7~8万円(現在の40万円相当)の仕送りを、
福岡の実家から受け取っていたというが、
そのほとんどを費やして、夜な夜な飲み明かしていたとも言われる。
そんな中で、美代子をはじめ、若き表現者達との交友の中で生まれた
先の見えない悩みや軋轢、愛情と憎悪、自己肯定と自己嫌悪…
それらの事象を断片的に描いた “私漫画” を精力的に発表し続ける。
「ガロ」3月号にデビュー2作目として掲載された
「美代子阿佐ヶ谷気分」は、安部の代表作となった作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-①-「美代子阿佐ヶ谷気分」-ガロ-1971年3月号-.jpg?resize=1024%2C545&ssl=1)
“彼”(安部)が不在の阿佐ヶ谷のアパートの一室。
美代子のモノローグが、写真を基にしたシュールな描線で描かれていく。
最後のページに描かれた、
床に無造作に転がった男性化粧品(MG5)の瓶と、
夕闇の中に浮かぶ幻想的な唇は、
当時の二人を暗喩するかの様な余韻を残している。
(この作品の絵柄に限っては、
当時の林静一にも通じるポップアート的な要素も感じられる。)
71年から72年の2年間は、「ガロ」以上に、
当時 “青年漫画” と言うジャンルを確立していた
“青年誌”「ヤングコミック」(少年画報社)
への作品の発表が中心になっている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-②-「孤独未満」-ヤングコミック-1971年4月14日号-.jpg?resize=1024%2C520&ssl=1)
孤独な日常の中での思い付きの様な自殺願望と、
無様で屈辱的なその挫折…
孤独さえも、俯瞰的に弄んでいるかの様な作品
「孤独未満」で、「ヤングコミック」にデビューする。
続いて6月9日号には、「髪」「雨の少年」「獅子」
という短編3作が掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-③-「髪」-ヤングコミック-1971年6月9日号.jpg?resize=1024%2C565&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-④-「雨の少年」-ヤングコミック-1971年6月9日号.jpg?resize=1024%2C565&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑤-「獅子」-ヤングコミック-1971年6月9日号.jpg?resize=1024%2C565&ssl=1)
誌面では “三部作一挙掲載” となっているが、
実は、予定されていた宮谷一彦の原稿が落ちた為、
急遽その穴埋めとして、この様な変則的な掲載になったと言われている。
同棲中の男女と、訪ねてきた友人との酒の席。
彼女の “髪をほどく” という些細な行為が、
男に別れを思い立たせるという作品「髪」
安部本人と美代子と思われる二人の、
微妙にすれ違う日常を描いた「獅子」
なかでも、
少女が女性へと変化していく中で、
“髪を切る” という行為で、
更に新しい自分を発見する
「雨の少年」は、次作「猫」と並んで、
この時期の安部作品の中でも突出した名作!
少しのブランクの後、9月22日号には、
“安部慎一作品集” と言う形で、
短編「沈める雪」「猫」が掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑥-「沈める雪」-ヤングコミック-1971年9月22日号-.jpg?resize=1024%2C561&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑦-「猫」-ヤングコミック-1971年9月22日号-.jpg?resize=1024%2C560&ssl=1)
「沈める雪」では、その後の作品で度々登場する
美代子の実家の家族(?)がモデルになっている。
(もちろん、この作品での設定はフィクションだと思われる)
ただ “待つだけの生活” をおくる老人が、
大雪の中、樹氷を見に山へ入る。
深く暗い深雪の山中に踏み込み、
“待つ事” に区切りを付けようとするかのような老人。
子犬の声に答えて仔猫が「ニャアと言った」
と歌われる、道中知り合った娘の唄。
ささやかな繋がりが二人の救いになったのか…?
不思議な余韻を残す短編。
しかし、一般的に評価が高いのは
もう一編の「猫」だろう。
わずか4ページの、セリフのない短編。
無言で向き合う男女。
男が女の胸を掴む。
その時の女の表情が、二人の関係をすべて表している。
そして、そのすぐそばの猫は、
二人との接点が全く無いかの様な世界にいる…
宮谷一彦や真崎守らの単行本
“シリーズ現代まんがの挑戦”
を刊行していた三崎書房が立ち上げた劇画誌「月刊 タッチ」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑧-「浮気女」-月刊タッチ-1971年9月号.jpg?resize=1024%2C471&ssl=1)
わずか4号で休刊となるが、
9月創刊号と11月号に、安部の作品が掲載された。
縦横比が通常とは違う変則的な誌面の為、
作品自体も、変則的なサイズになっている。
特にこの1作目「浮気女」は、
この絵画的な変則サイズを生かしたコマ割りで、
ビジュアル面でのインパクトが増大している。
〈ニュー・ポルノの衝撃〉(??)
という見当違いなキャッチと共に、
10月13日号に掲載された「軽い肩」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑩-「軽い肩」-ヤングコミック-1971年10月13日号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
安部と美代子と思われる男女の日常を描いた “私漫画”
漠然とした不安と頼りなさを宿した男の肩に、
寄り添う女の重みが、現状へのささやかな安堵感を与える…
性的な描写が多い為、
先のキャッチが付けられと思われるが、
その描写は実に美しいものと成っている。
特にラストの1ページ全体を使って描かれた
寄り添う二人のシーンは、絵画的にも秀逸!!
久しぶりに「ガロ」11月号に掲載された
「軍刀」も、安部作品の作品の中では評価の高い作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑪-「軍刀」-ガロ-1971年11月号-.jpg?resize=1024%2C547&ssl=1)
「美代子阿佐ヶ谷気分」に続いて
「ガロ」に持ち込まれた3作目「美代子」は、
当時の編集者だった高野慎三氏の目には
過去2作の水準に達していないと映り、未掲載(未発表?)に終わる。
その後「ヤングコミック」誌上で名作を立て続けに発表した後、
「ガロ」の為に十分に練り上げられた長編が、この作品。
同級生とその家族が描かれるが、
要になるのは戦争体験世代である、その父親。
戦時中、軍刀で「ヒトを殺した…」経験の有る父親と、
同級生の家族の家を後にし、
夜行列車で東京へと戻る主人公(安部自身?)。
ラストの独白「あと少し待てばよい」とは?
単に列車の発車時刻だけではなく、
彼自身の思い出と、前世代との決別を意味するのか…?
同時期の「ヤングコミツク」に掲載された「背中」は、
これまでの “私漫画” とは異なる設定を持った作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑫-「背中」-ヤングコミック-1971年11月10日号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
(安部自身を思わせる)小説家志望の男と、
彼の小説に “遺書” めいた匂いを感じる男。
惨めな現状を更に上塗りするかの様な、
無様な彼の背中を足蹴にする男。
二人は、分断された阿部自身なのか?
悲壮な状況をも客観的に俯瞰しているかの様な、
冷静ささえ感じてしまう。
続く「冬」は…
少々、掴みどころのない作品…
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑬-「冬」-ヤングコミック-1971年11月24日号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
〈己の存在の不確かさを、
より現実性をもって描き続ける心的状況作品〉(??)
と言う、苦肉の策とも言えるキャッチが付けられている…
雪の降りしきる放課後の高校。
卒業を控えた二人の男が、
剣道場で手合わせをするだけの作品だが、
降りしきる夜の雪の光景が、
この二人の心情を表すかの様に寒々しく映る。
「月刊 タッチ」第3号(11月号)に
巻頭特集 “現代まんがの挑戦” として、
政岡としや、ダディ・グースの作品と並んで掲載された
「まり子の憧れ」は、
美代子と安部とその友人(誰かは不明)をモデルにした “私漫画”。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑭-「まり子の憧れ」-月刊タッチ-1971年11月号-1.jpg?resize=1024%2C473&ssl=1)
この後、何度か繰り返し取り上げられる
微妙な関係の男女と、もう一人の男
と言う構図が使用されている。
(鈴木翁二の実名が使用されている)
「浮気女」と比べると、コマ割りが細かく、
変形サイズの掲載誌の特性を生かし切れていないのが残念…
「ヤングコミツク」12月22日号掲載作「屋根」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1971-⑮-「屋根」-ヤングコミック-1971年12月22日号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
現在は学生運動に関わり、
革マル(派)に殴られ負傷したかつての秀才。
彼が見たというリアルで “かわいそう” な夢の独白を聞く…
という変則的な設定の作品。
-未確認作品-
● 1971-⑨ 「富士荘二階」
ヤングギター増刊 OUR SONG NIPPON 1971年10月
【再録単行本】H.『悲しみの世代』(2001年5月 まんだらけ)
単行本で作品は確認できたが、
増刊号と言う事なので、掲載誌の形態は不明。
わずか2ページのみの作品で、
原稿は「月刊 タッチ」と同様の変形サイズ。
1972年作品
1972-① 「サーカス小屋」
ヤングコミック 1972年3月8日号 【再録単行本】B. E. M.
1972-② 「無頼の面影」
ガロ 1972年4月号 【再録単行本】A. F. N.
1972-③ 「一人暮し」
ヤングコミック 1972年4月12日号 【再録単行本】C. E. M. Q.
1972-④ 「悪い夜」
ヤングコミック 1972年4月26日号 【再録単行本】C. E. M.
1972-⑤ 「阿佐ヶ谷心中」
ガロ 1972年6月号 【再録単行本】A. F. N.
1972-⑥ 「久しぶり」
ヤングコミック 1972年7月12日号 【再録単行本】C. L.
1972-⑦ 「薔薇」
漫画フレッシュ 1972年8月号 【再録単行本】C. E.M.
1972-⑧ 「悲しき夏」
ヤングコミック 1972年8月9日号 【再録単行本】C. E. M.
1972-⑨ 「正しき人」
ガロ 1972年9月号 【再録単行本】A.
1972-⑩ 「秋の静かな風景」(小説)
ヤングコミック 1972年11月22日号 【再録単行本】C.
1972-⑪ 「殺人事件」
ヤングコミック 1972年10月11日号 【再録単行本】L.
1972-⑫ 「川」
ガロ 1972年10月号 【再録単行本】A. F.
1972-⑬ 「悲しい日」
秘録SM21CENTURY 1972年10月号 【単行本未収録】
1972-⑭ 「静かなピンク」
ガロ 1972年11月号 【再録単行本】A. F.
1972-⑮ 「15才のミヨちゃん」
SMトップ 1972年11月増刊号 【再録単行本】L.
1972-⑯ 「落下傘」
ガロ 1972年12月号 【再録単行本】A. F.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
「ヤングコミック」72年3月8日号に掲載された
幻想的な悪夢の様な短編「サーカス小屋」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-①-「サーカス小屋」-ヤングコミック-1972年3月8日号-「サーカス小屋」.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
6月に発表する「阿佐ヶ谷心中」
へと繋がる安部自身の葛藤を描いたのだろうか?
うしろめたさが、恐怖の象徴としての
巨大な象として表わされているとも感じられる。
「ガロ」での4作目として
1972年4月号に発表された「無頼の面影」は、
盟友、鈴木翁二と古川益三をモデルにした作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-②-「無頼の面影」-ガロ-1972年4月号-.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
若き日のお二人の、ある一日を描いたものだが、
写真を基にしたシャープな絵柄と共に、
断片的な会話の一言一言が、実に生き生きと響いてくる。
(最後に二人が酒を呑むおでん屋は、
1973年の作品「恋愛」にも
かなりデフォルメされて、再び登場する)
「ヤングヤングコミック」4月12日号には、
“ポルノ競作”(??)という、またまた適当なキャッチが付けられて、
「一人暮し」が掲載される。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-③-「一人暮し」-ヤングコミック-1972年4月12日号-.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
自殺願望を持つ一人暮らしの女のモノローグだが、
彼女は、本気で死ぬ気は毛頭無さそうである…
単行本で(ワイズ出版から)再録されているものは、
描線が、雑誌掲載時と異なっている様にも見えるが…
もしかしたら、
オリジナルの原稿では無く、トレースされたものかもしれない。
続けて4月26日号に掲載された「悪い夜」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-④-「悪い夜」-ヤングコミック-1972年4月26日号-.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
故郷田川を舞台にした作品。
モデルは、やはり美代子の様だが、
設定はフィクションなのか?
この作品も単行本再録時に、トレースされている様に見える。
(オリジナル掲載作の方が、はるかに描線が繊細)
「ガロ」6月号に掲載された問題作「阿佐ヶ谷心中」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑤-「阿佐ヶ谷心中」-ガロ-1972年6月号-.jpg?resize=1024%2C530&ssl=1)
美代子の親友と関係を持ってしまった事に対する
安部自身の罪悪感を払拭する為に、
友人と美代子を関係させてしまう…
その屈折した行為は、
その後永きにわたって安部を苦しめる事になる。
安部の衝撃的な告白と言える作品。
この作品の後、
「川」「静かなるビンク」「落下傘」
「ピストル」「恋愛」 という、
阿部と美代子の、危うくも不思議なバランスの上に成り立っていた
阿佐ヶ谷での生活を、断片的に描いた一連の作品が、
72年秋から73年にかけて「ガロ」に掲載されることになる。
前作の反動なのか(?)、これまでの作品とは打って変わって、
全く暗さを感じさせない(ギャグマンガの様でさえある)作品
「久しぶり」が、「ヤングコミック」7月12日号に掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑥-「久しぶり」-ヤングコミック-1972年7月12日号-.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
この作品からは、写真を基に作画する事に疑問を持ち、
極端にデフォルメされた描写になっている。
連日のバカ騒ぎが原因で、
富士荘二階の部屋を追い出され
転居する様子を描いただけの作品。
安部自身が、妙に幼く可愛らしく描かれている…
双葉社が70年から2年間刊行していた月刊誌
「漫画フレッシュ」にも、72年8月号に一度だけ
「薔薇」が掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑦-「薔薇」-漫画フレッシュ-1972年8月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
高校時代の同級生、美術部と文学部の二人の男と一人の女。
卒業後の三角関係が描かれる。
先の見えない美術部出身の男が食べた
“赤い薔薇” は、彼自身の才能を象徴するものなのか…
「ヤングコミック」8月9日号に掲載された短編
「悲しき夏」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑧-「悲しき夏」-ヤングコミック-1972年8月9日号-.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
時代劇の設定の短編だが、
少々意味不明…
「ガロ」9月号では、“特集 安部慎一”として、
嵐山光三郎、上村一夫、高信太郎、
永島慎二、鈴木翁二、古川益三
の6人が寄せたコメントと共に「正しき人」が掲載される。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑨-「正しき人」-ガロ-1972年9月号-1-1.jpg?resize=1024%2C540&ssl=1)
救いようのない作家志願の男・松岡を描いているが、
これは安部本人ではなく、当時の友人をモデルにしているという。
(後日、“ここまで切羽詰まってはいなかった” と述べている)
「ヤングコミック」10月11日号掲載の
「殺人事件」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑪-「殺人事件」-ヤングコミック-1972年10月11日号-.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
二件の殺人事件が描かれている。
放課後の小学校での事件はフィクションだと言う事だが、
犯人の用務員が精神病院に入るという設定が、
この後の安部自身を予見していたかの様でもある…
さすがにこの急激な作風の変化の為か、
この作品の後は「ヤングコミック」への掲載は途切れる。
この後76年までは、
ほぼ毎月の「ガロ」への投稿がメインとなる。
10月号掲載の「川」
11月号掲載の「静かなピンク」
12月号掲載の「落下傘」
更に73年の
1月号掲載の「ピストル」
2月号掲載の「恋愛」
これらの作品は、前述の「阿佐ヶ谷心中」前後の
安部と美代子の阿佐ヶ谷生活を断片的に描いた作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑫-「川」-ガロ-1972年10月号-.jpg?resize=1024%2C540&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑭-「静かなピンク」-ガロ-1972年11月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑯-「落下傘」-ガロ-1972年12月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
(ちなみに、これらの作品に仮の時系列を設けて、
一つのストーリーを作り上げたのが、
2009年の坪田義史監督の映像作品『美代子阿佐ヶ谷気分』)
清風書房のSM誌「SMトップ」から依頼された作品
「15才のミヨちゃん」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1972-⑮-「15才のミヨちゃん」-SMトップ-1972年11月増刊号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
性的な妄想を描いた小作品。
-未確認作品-
● 1972-⑩ 「秋の静かな風景」(小説)
ヤングコミック 1972年11月22日号
【再録単行本】C.
● 1972-⑬ 「悲しい日」
秘録SM21CENTURY 1972年10月号
【単行本未収録】
1973年作品
1973-① 「ピストル」
ガロ 1973年1月号 【再録単行本】A. F.
1973-② 「恋愛」
ガロ 1973年2月号 【再録単行本】F. N.
1973-③ 「除夜」
コミックミステリー 1973年2月8日号 【再録単行本】C. L.
1973-④ 「月」
ガロ 1973年3月号 【再録単行本】K.Q.
1973-⑤ 「天国」
ガロ 1973年4月号 【再録単行本】K. Q.
1973-⑥ 「日の興奮」
ガロ 1973年5月号 【再録単行本】G. Q.
1973-⑦ 「野の行為」
ヒットパンチ 1973年5月号 【再録単行本】P.
1973-⑧ 「キス」
ガロ 1973年6月号 【再録単行本】F.
1973-⑨ 「海のこちら」
ヒットパンチ 1973年6月号 【再録単行本】C. E.M.
1973-⑩ 「巨人」
ガロ 1973年8月号 【再録単行本】K. Q.
1973-⑪ 「村上の休む日」
ガロ 1973年9月号 【再録単行本】K. Q.
1973-⑫ 「トマト」
ガロ 1973年10月号 【再録単行本】H. K. Q.
1973-⑬ 「よし子の幸福」
ガロ 1973年11月号 【再録単行本】K. Q.
1973-⑭ 「飛ぶ男」
Men 1973年12月号 【再録単行本】H.
1973-⑮ 「悲しみの世代」①
ガロ 1973年12月号 【再録単行本】D. H
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
この年の1月、
阿部と畠中美代子は結婚。
「ガロ」1月号掲載の「ピストル」と、
2月号掲載の「恋愛」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-①-「ピストル」-ガロ-1973年1月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-②-「恋愛」-ガロ-1973年2月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
「恋愛」では、一時的な(?)別居も描かれている。
毎回絵柄が変わり、作風にムラが有るのは
当時の安部の迷いの様にも見受けられる。
この年「ガロ」以外に発表された作品は、
双葉社の月刊誌「コミックミステリー」に
一度だけ掲載されたこの作品「除夜」
を含めて全4作のみ。
初期とは全く別人が描いたかの様な作風が、
一般誌には受け入れられにくく成っていたのかもしれない。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-③-「除夜」-コミックミステリー-1973年2月8日号.jpg?resize=1024%2C559&ssl=1)
過去のトラウマを抱えた男の、
故郷へ戻った大晦日の一夜の物語。
最後のページ、戻らない男を一人待つ少女と、
除夜の鐘の音が印象的な名作。
モデルは鈴木翁二だと言われている。
「ガロ」3月号掲載作「月」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-④-「月」-ガロ-1973年3月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
地元田川を舞台にした、
安部と美代子が高校時代のストーリー。
久しぶりの長編。
三橋誠(シバ)と、古川益三をモデルにした二人組が登場する。
続く「ガロ」4月号掲載作「天国」も長編作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑤-「天国」-ガロ-1973年4月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
前半に描かれた二つの “(事故)死” との対比して、
後半は結婚の為に帰省した安部と美代子が描かれている。
「体の中に憎しみがひとつあったら、ボクは生きていけるよ」
「ボクは今、ミーちゃんが恐い」
安部の印象的なセリフの後、
ラスト2ページ見開きで描かれた、
夜の炭鉱町と連なるボタ山は、安部と美代子の原風景なのか?…
長編2作の後、「ガロ」5月号に唐突に発表された
時代劇作品「日の興奮」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑥-「日の興奮」-ガロ-1973年5月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
芹沢鴨とその愛人の殺害で終わる
新選組の血みどろの粛清劇を描いた異色作。
さらに「ガロ」6月号と「ヒットパンチ」(檸檬社)6月号に
同時期に発表された2作品「キス」「海のこちら」も、
これまでとは作風が違う物になっている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑧-「キス」-ガロ-1973年6月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑨-「海のこちら」-ヒットパンチ-1973年6月号.jpg?resize=1024%2C559&ssl=1)
「キス」では、
異国の城でのパーティーで起きた
新婦殺人事件が語られる。
語り部の “ヨッパライ” は、ラストでは外套を羽織り
屋根から屋根へと飛び移りながら去っていく…
突然、鈴木翁二的な世界が描かれている。
更に「海のこちら」では、
画風もこころなしか鈴木翁二風になっており、
普通の女への変化を見限る “無頼の男” には、
つげ忠男の影響さえ見えてしまう。
共に、安部の漫画家としての迷いを感じさせる作品…
ひと月のブランクの後、
「ガロ」8月号に発表された「巨人」は、
一転してダークでカルトな作品となっている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑩-「巨人」-ガロ-1973年8月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ラストの血みどろの展開。
不気味に描かれた巨大な鯉。
冷たく暗いプール…等々
安部の精神が分裂の兆しを見せ始めている。
更に続く9月号に掲載された短編「村上が休む日」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑪-「村上の休む日」-ガロ-1973年9月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
病気の妻を抱える男の
性的な妄想が描かれている。
この年の秋、安部は創作に行き詰まり、
美代子と共に突然、福岡へと戻っている。
「ガロ」10月号掲載の「トマト」と、
11月号掲載の「よし子の幸福」 は、
福岡市中央区伊崎(実家からは少し離れている)への
転居後に描かれたのではないかと思われる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑫-「トマト」-ガロ-1973年10月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑬-「よし子の幸福」-ガロ-1973年11月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
後述の、雑誌「クイック・ジャパン」の記事
“消えたマンガ家・第7回”によると、
福岡へ戻ったのは、この年の暮れとなっているが、
「トマト」では、阿佐ヶ谷を引き払う様子とも取れる場面が見られる。
また、何よりもこの2作については、
写真を基にした、すっきりしとした絵柄に戻り、
ストーリーも穏やかなものになっている。
阿佐ヶ谷での、精神を病むほどの自堕落な生活から離れた、
地元福岡での生活による
“転地療法” の効果が表れている様にも見受けられる。
しかし、安部の精神状態は完全には回復する事は無く…
「ガロ」12月号からは、未完の問題作「悲しみの世代」の連載が始まる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1973-⑮-「悲しみの世代」①-ガロ-1973年12月号-1.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
姉(良子)と妹(種子)を軸に、
作家(漫画家?)鮫島、種子の恋人・武田等の、
屈折した関係が描かれている。
少なくとも74年の連載4回目までは、
一応ストーリー(らしきものも)の辻褄も合っていたが…
-未確認作品-
● 1973-⑦ 「野の行為」
ヒットパンチ 1973年5月号
【再録単行本】P.『安部慎一短編集2 キツネにばかされた女』
(2016年8月 ギャラリー白線)
● 1973-⑭ 「飛ぶ男」
Men 1973年12月号
【再録単行本】H.『悲しみの世代』(2001年5月 まんだらけ)
「飛ぶ男」については、単行本で作品の確認はできたが、
絵柄はかなり雑で、コマ割りも大きめ。
掲載誌のサイズ自体が小さいものだったと思われる。
1974年作品
1974-① 「漕げばボートは行く」
週刊漫画サンデー 1974年1月12/19日号 【再録単行本】H.
1974-② 「悲しみの世代」②
ガロ 1974年1月号 【再録単行本】D. H.
1974-③ 「悲しみの世代」③
ガロ 1974年3月号 【再録単行本】D. H.
1974-④ 「悲しみの世代」④
ガロ 1974年4月号 【再録単行本】D. H.
1974-⑤ 「悲しみの世代」⑤
ガロ 1974年5月号 【再録単行本】D. H.
1974-⑥ 「悲しみの世代」⑥ ⑦M~N議論
ガロ 1974年6月号 【再録単行本】D. H.
1974-⑦ 「悲しみの世代」⑧
ガロ 1974年7月号 【再録単行本】D. H.
1974-⑧ 「悲しみの世代」⑨
ガロ 1974年8月号 【再録単行本】D. H.
1974-⑨ 「悲しみの世代」⑩スモモの離し方 ⑪プールの説明又は野心の失敗
ガロ 1974年9月号 【再録単行本】D. H.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
週刊漫画サンデー1月12日/19日合併号には、
同時期に描かれたと思われる
「漕げばボートは行く」が、
“第3回漫画サンデー賞 佳作一席”として掲載されている。
(この年「ガロ」以外の作品掲載は、この一作のみ)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-①-「漕げばボートは行く」-週刊漫画サンデー-1974年1月1219日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
まるで新人作家の入選作の様な扱いではあるが、
一般商業誌の、当時の安部作品に対するスタンスは
残念ながらこの様な物だったのか…
冷めた関係の夫婦(?)が、
夫の思い出の場所である滝を訪れる。
妻の首を絞め、滝つぼへ投げ落とすという、
ラストの恐ろしい妄想(?)はもちろん、
食い違うセリフにも意味不明な箇所が多い。
当時の安部の分裂した精神状態が現れた作品となっている。
「ガロ」誌上で73年12月号から74年9月号まで、
「悲しみの世代」は、9回(全11話)掲載された。
(74年の「ガロ」2月号は、
掲載作すべてが再録作品という形態の為、2月号には未掲載)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-②-「悲しみの世代」②-ガロ-1974年1月号-2.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-③-「悲しみの世代」③-ガロ-1974年3月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-④-「悲しみの世代」④-ガロ-1974年4月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
第4回までは、かろうじて安定しているが…
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-⑤-「悲しみの世代」⑤-ガロ-1974年5月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
第5回は、突然絵のタッチが変わり、
唐突な登場人物紹介等、作品としては少しずつ壊れ始めている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-⑥-「悲しみの世代」⑥-⑦M~N議論-ガロ-1974年6月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-⑦-「悲しみの世代」⑧-ガロ-1974年7月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-⑧-「悲しみの世代」⑨-ガロ-1974年8月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1974-⑨-「悲しみの世代」⑩スモモの離し方-⑪プールの説明又は野心の失敗-ガロ-1974年9月号-1-2.jpg?resize=1024%2C585&ssl=1)
第6回以降は、急速に意味不明な展開が増える。
安部の精神の分裂状態は加速して行き、
9月号の第11回で、遂に中断となる…
実は、わたしはちょうどこの時期に
同時代的に「ガロ」誌上で
この一連の作品を読んでいた。
もちろん、
当時は作者の精神状態の事など知る由もなかったが、
難解でありながら、シュールで分裂症的なこの作品には
かなりの衝撃を受けていたことは確かである。
一般的には、なかなか受け入れ難い作品ではあるが、
初期の諸作品と並んで、
安部の代表作と言っても良いのではないだろうか。
(後に1987年になって
「夜行⑮」(7月号)に唐突に掲載された
「悲しみの世代 ⑪ 短縮論」は、
「ガロ」に掲載された一連のシリーズとの関連は感じられない。)
この年の年末には、
安部と美代子は、再び上京し阿佐ヶ谷に戻っている。
1975年作品
1975-① 「筑豊漫画・愛蓮の家族」
ガロ 1975年1月号 【再録単行本】I.
1975-② 「石田キヌの妊娠」上の一
ガロ 1975年7月 【再録単行本】I.
1975-③ 「石田キヌの妊娠」上の二
ガロ 1975年8月 【再録単行本】I.
1975-④ 「石田キヌの妊娠」中の一
ガロ 1975年9月 【再録単行本】I.
1975-⑤ 「石田キヌの妊娠」中の二
ガロ 1975年10月 【再録単行本】I.
1975-⑥ 「石田キヌの妊娠」中の三
ガロ 1975年11月 【再録単行本】I.
1975-⑦ 「石田キヌの妊娠」中の四
ガロ 1975年12月 【再録単行本】I.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
この年から翌年初めにかけて、
「ガロ」の編集担当から提案されたという、
地元である筑豊炭田を舞台とした、
“プロレタリア文学” ならぬ
“プロレタリア漫画”「筑豊漫画」の連作を発表する。
「ガロ」1975年1月号には、読み切り作品として
「筑豊漫画・愛蓮の家族」を発表。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-①-「筑豊漫画・愛蓮の家族」-ガロ-1975年1月号-.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
暗くシュールな作品だが、
ストーリーはしっかり組み立てられている。
7月号からは、設定を変更して長編作品
(筑豊漫画 二)「石田キヌの妊娠」の連載が始まる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-②-「石田キヌの妊娠」上の一-ガロ-1975年7月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-③-「石田キヌの妊娠」上の二-ガロ-1975年8月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-④-「石田キヌの妊娠」中の一-ガロ-1975年9月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-⑤-「石田キヌの妊娠」中の二-ガロ-1975年10月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-⑥-「石田キヌの妊娠」中の三-ガロ-1975年11月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1975-⑦-「石田キヌの妊娠」中の四-ガロ-1975年12月.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
明治時代の炭鉱を描いた作品の為、
安部は資料と格闘しながら執筆していたという。
連載開始時には、扉に登場人物紹介が描かれており、
60年代の「カムイ伝」を意識していた様にも思え、
それなりの長編大作を構想していたと思われる。
しかし、相変わらず回を追う毎に、
絵のタッチが変化し、ストーリーの展開も曖昧なものに成って行った。
また、資料からの引用と思われる書き込みも増えるが、
ストーリーとかみ合わない部分も目立つ様になる。
1976年作品
1976-① 「石田キヌの妊娠」中の五
ガロ 1976年1月 【再録単行本】I.
1976-② 「遠賀川と田川盆地」
跋折羅 5号 1976年1月 【再録単行本】H.
1976-③ 「筑豊居合道 – 柿の木の下、通過」
ガロ 1976年2・3月合併号 【再録単行本】I.
1976-④ 「筑豊居合道 – 坂をかけ登る 前編」
ガロ 1976年4月 【再録単行本】I.
1976-⑤ 「私生活」
週刊漫画Times 1976年5月22日号 【再録単行本】C. E. M. N. Q.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1976-①-「石田キヌの妊娠」中の五-ガロ-1976年1月-1.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
「ガロ」76年1月号の「石田キヌの妊娠」中の五 で、
一旦この章は完結する。
(中の五で終わり下が無い…)
同時期に、カルトな季刊(?)マンガ漫画誌「跋折羅」第5号に
地元田川を舞台にした4ページの短編
「遠賀川と田川盆地」が掲載されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1976-②-「遠賀川と田川盆地」-跋折羅-5号-1976年1月.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
「跋折羅」は、印刷・製本まで手作りで行っていた
ほぼミニコミ誌とも言える雑誌で、
鈴木翁二や勝川克志も作品を掲載していた。
「ガロ」2・3月合併号の「筑豊居合道 – 柿の木の下、通過」と、
「ガロ」4月号の「筑豊居合道 – 坂をかけ登る 前編」は、
「石田キヌの妊娠」の続編として掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1976-③-「筑豊居合道-柿の木の下、通過」-ガロ-1976年2・3月合併号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1976-④-「筑豊居合道-坂をかけ登る-前編」-ガロ-1976年4月.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
しかし、回を追うごとに絵のタッチは荒くなり、
ストーリーも掴み処が無いものになる。
結局「筑豊居合道 – 坂をかけ登る」の後編は
描かれる事無く「筑豊漫画」のシリーズも
中断となり、未完に終わる。
この年の初めに、
「ガロ」の初代編集長・長井勝一氏が心筋梗塞で入院し
実質的に南伸坊が編集長と成った事も関係してか、
この後「ガロ」への作品掲載がとぎれる。
芳文社が発行する「週刊漫画Times」5月22日号には、
唐突に過去の作品「私生活」が掲載されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1976-⑤-「私生活」-週刊漫画Times-1976年5月22日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
内容や絵柄から推測すれば、
73年の後半、福岡市伊崎へ戻った頃に描かれた物だと思われる。
1977年作品
1977-① 「意趣返し」
漫画エロトピア 1977年2月3日号 【再録単行本】G. H. Q.
1977-② 「愛奴」
漫画エロトピア 1977年4月21日号 【再録単行本】G. Q.
1977-③ 「獣愛」
漫画エロトピア 1977年6月2日号 【再録単行本】G. Q.
1977-④ 「親子将棋」
Joy Magazine 1977年11月号 【再録単行本】G.
1977-⑤ 「美代子、町に帰らず」
Joy Magazine 1977年12月号 【再録単行本】E.
1977-⑥ 「あいびき」
漫画エロトピア 1977年12月15日号 【再録単行本】G.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
安部は心を病む中で、
高橋信次が創設した宗教団体GLAに傾倒していく。
また、この年「漫画エロトピア」の平田昌兵と出会い、
当時サブ・カルチャーとして台頭し始めていた
“エロ漫画誌” への作品発表を始める。
KKベストセラーズが発行していた
「漫画エロトピア」には、
平田昌兵から自由に描く様に勧められ、
久しぶりに力の入った作品を発表する。
「漫画エロトピア」では、
2月3日号に「意趣返し」
4月21日号に「愛奴」
6月2日号に「獣愛」
という3作を立て続けに発表している。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-①-「意趣返し」-漫画エロトピア-1977年2月3日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-②-「愛奴」-漫画エロトピア-1977年4月21日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-③-「獣愛」-漫画エロトピア-1977年6月2日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
いずれの作品も、
かなりカルトでダークなストーリーを持っており、
当時の安部の病んだ精神状態が反映されている。
また、
異常なまでに細密に書き込まれた絵は病的でさえある。
檸檬社発行の “エロ漫画誌”「Joy magazine」にも、
11月号に「親子将棋」
12月号に「美代子、町に帰らず」
という2作品を発表している。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-④-「親子将棋」-Joy-Magazine-1977年11月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-⑤-「美代子、町に帰らず」-Joy-Magazine-1977年12月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
少しのブランクの後の、この2作では、
前3作の様な病的な描き込みは治まっている。
当時の安部は、
“宗教” と “エロス” と言う相反するテーマの中で、
悩みながら描いていたという。
「美代子、町に帰らず」では、
前半の阿佐ヶ谷のアパートのシーンに、
71年の作品「富士荘二階」と同一のシーンが
何コマも使用されている。
おそらく同じ写真を基に描いたものと思われるが、
残念ながら71年の絵の方が、はるかに美しい…
更にこの年の冬、
「漫画エロトピア」12月22日号に発表された
「あいびき」は、
珍しく穏やかな作風となっており、
“宗教” の影響が見え始めている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1977-⑥-「あいびき」-漫画エロトピア-1977年12月15日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
この作品を最後に、
「漫画エロトピア」への掲載は途切れる。
1978年作品
1978-① 「心」
漫画大快楽 1978年1月号 【再録単行本】G. H.
1978-② 「誘拐」
劇画アリス 1978年6月号 【単行本未収録】
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
この年、
園頭広周が主催するGLA系宗教団体「国際正法協会」へ
正式に入信し、執筆をやめ帰省する事を指示される。
(その後は、脱会・再入信を繰り返す)
故郷田川では、
父親の会社や、友人の父の会社(チロルチョコ)などに勤務する。
この年の発表作品は2作のみ。
檸檬社発行の “エロ漫画誌”「漫画大快楽」は、
当時、「漫画エロジェニカ」「劇画アリス」と共に
“三大エロ劇画誌” と呼ばれていた。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1978-①-「心」-漫画大快楽-1978年1月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
「漫画大快楽」1月号掲載の「心」も、
異様なほど前向きな登場人物達に、
“宗教” の影響が表れている。
これは、帰省する前に描かれた作品だとおもわれる。
-未確認作品-
● 劇画アリス 1978年6月号
「誘拐」
1979年作品
1979-① 「友からの手紙」
ガロ 1979年7月号 【単行本未収録】
帰省後も宗教色の強い作品を
「ガロ」に投稿していたというが、
そのほとんどは掲載を見送られている。
唯一「ガロ」7月号に掲載されたのが
「友からの手紙」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1979-①-「友からの手紙」-ガロ-1979年7月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
どう見ても異常な作品!!
あの安部と美代子が、全くの別人の様に描かれ、
友の子供の誕生を祝福する…
“宗教” の布教漫画の様なこの作品を、
あえて掲載した「ガロ」の編集部には、
かつてのリリシズム溢れる無頼漢“安部慎一”の
変貌と狂気を示そうと言う意図が有ったのだろうか?
1980年作品
1980-① 「ポルノ劇画家山村真介」
漫画大快楽 1980年6月号 【再録単行本】G.
1980-② 「遠い激情」
エロトピア・デラックス 1980年6月号 【再録単行本】L.
1980-③ 「泣き虫金太」
ガロ 1980年7月号 【単行本未収録】
1980-④ 「淫らな娘」
エロトピア・デラックス 1980年8月号 【再録単行本】G.
1980-⑤ 「心のカルテ」
ガロ 1980年8月号 【単行本未収録】
1980-⑥ 「白い悪魔」
エロトピア・デラックス 1980年10月号 【再録単行本】L.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
この年、所沢市へ転居。
「エロトピア・デラックス」や「漫画大快楽」
と言った “エロ漫画誌” への作品発表と並行し
「ガロ」にも投稿を続ける。
総合失調症の進行と、“宗教” の影響下で
描かれたこの時期の作品は、
ストーリー・絵柄共に病的なものを感じさせる。
「漫画大快楽」6月号掲載の
「ポルノ劇画家山村真介」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-①-「ポルノ劇画家山村真介」-漫画大快楽-1980年6月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
商業誌を意識したストーリー展開ではあるが、
随所に “宗教” の影響が見受けられる。
消えたポルノ劇画家
(後に安部自身も消えた漫画家と呼ばれることになるが…)
が描いた作品が「イエスがいく」と言うのも、
普通の感覚ではない。
KKベストセラーズから独立した
ワニマガジン社が発行していた
「エロトピア・デラックス」に発表の場を移し、
6月号に「遠い激情」
8月号に「淫らな娘」
10月号に「白い悪魔」
という3作が掲載された。
「エロトピア・デラックス」では、
編集サイドからの絵コンテ作成も求められ、
「漫画エロトピア」の様に自由には
描くことが出来なかった様で、
ストーリーは、一応商業誌用に完結している。
しかし、絵柄、特に登場人物の顔は、
病的なほど異様に描かれている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-②-「遠い激情」-エロトピア・デラックス-1980年6月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-④-「淫らな娘」-エロトピア・デラックス-1980年8月号-.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-⑥-「白い悪魔」-エロトピア・デラックス-1980年10月号-.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
一方「ガロ」に掲載された
7月号「泣き虫金太」
8月号「心のカルテ」
2作は、前年の「友からの手紙」同様
“宗教” 色が強い異様な作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-③-「泣き虫金太」-ガロ-1980年7月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1980-⑤-「心のカルテ」-ガロ-1980年8月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
さすがにこの後、「ガロ」での掲載は途切れる。
1981年~1982年作品
1981-① 「結婚物語」
ヤングコミック 1981年3月25日号 【再録単行本】L.
1981-② 「麻雀物語」
近代麻雀オリジナル 1981年6月号 【単行本未収録】
1981-③ 「僕はサラ金の星です!」
エロトピア・デラックス 1981年6月号 【再録単行本】L. O.
1981-④ 「堕ちる… その時!」
エロトピア・デラックス 1981年12月号 【再録単行本】G.
1982-① 「いらっしゃいませ」
エロトピア・デラックス 1982年12月号 【再録単行本】L.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
この時期になると、
もはや、作者である安部自身も
自らの作品を執筆した記憶が無くなる程
精神的に混乱していたという。
72年以来久々に
「ヤングコミック」3月25日号に掲載された
「結婚物語」も、70年代初頭とは全く別人の作品かと思わせる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1981-①-「結婚物語」-ヤングコミック-1981年3月25日号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
やはり “宗教” の影響が現れており、
“ほのぼのとした男と女のイイお話” という
キャッチ通りの作品。
これは、以前に投稿するも掲載が見送られていた
(「ヤングコミック」サイドとしては当然の判断?)作品を、
原稿を落とした他の作家の作品の穴埋めに
急遽掲載した物らしい…
ちなみに、
この作品に登場するおでん屋の主人は、
友部正人の73年のアルバム『にんじん』の
ジャケットに写ってる人物だと言うが…
全然似ていない!!
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/にんじん-2.jpg?resize=1024%2C473&ssl=1)
「エロトピア・デラックス」1981年6月号掲載の
「僕はサラ金の星です!」は、
“特殊漫画家” 根本敬の発掘活動によって
一躍有名になってしまった怪作!!
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1981-③-「僕はサラ金の星です」-エロトピア・デラックス-1981年6月号-1.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
事の始まりは1996年の12月。
中野ブロードウェイ3階のサブ・カル系書店
“タコシェ(TACO ché)” の店頭に
根本敬氏自らが作成した
「僕はサラ金の星です!」のコピー本が、
自由に読める様にぶら下げられたという。
10年以上前のマイナー誌に掲載された
このレアな(?)作品の再発見は、
1997年の「クイック・ジャパン」の記事
“消えたマンガ家・第7回”へと繋がり、
阿部慎一再評価のきっかけとなった。
しかし…作品の内容はと言えば…
安部自身が、「自分が書いた物とは思えない…」
と言うほど錯乱した精神状態で描かれた作品だけに、
とにかく、絵もストーリーも錯乱している!!
さすがに “特殊漫画家” 根本敬が最高傑作(?!) と
評価するだけあって、超カルトな作品である事は確かだが…
(この作品は、その後2003年に
青林工藝社からの単行本でめでたく再録されている。)
その後も、「エロトピア・デラックス」には、
1981年12月号に「堕ちる… その時!」
1982年12月号に「いらっしゃいませ」
という怪作が掲載されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1981-④-「堕ちる…-その時」-エロトピア・デラックス-1981年12月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1982-①-「いらっしゃいませ」-エロトピア・デラックス-1982年12月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
いずれも、同じような精神状態で描かれた作品の為、
絵もストーリーも超カルト!
個人的には、唐突に女のユーレイがストーリーに絡む
「いらっしゃいませ」の方が、
「僕はサラ金の星です!」よりカルト度が高い様に思えるのだが…
82年の夏、安部の実家の事業が失敗し、
錯乱し、本格的に総合失調症を発病。
その後、田川市の実家へ帰省する。
この時に、過去の写真や原稿を燃やしてしまった
と言われている。
(単行本への再録が難しいのはこの事件のせいか?)
-未確認作品-
● 近代麻雀オリジナル 1981年6月号
「麻雀物語」
1987年作品
1987-① 「悲しみの世代 ⑪ 短縮論」
夜行⑮ 1987年7月号 【再録単行本】D. H.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
元「ガロ」の編集者、高野慎三氏が発行していた
雑誌「夜行」15号に、突然掲載された
「悲しみの世代 ⑪ 短縮論」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1987-①-「悲しみの世代-⑪-短縮論」-夜行⑮-1987年7月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
「ガロ」に連載されていた未完の長編
「悲しみの世代」との直接的な繋がりは感じられない。
珍しくすっきりとした絵柄で、
明るいエロティック・アートと成っている。
執筆時期や、掲載の経緯は不明。
1990年代作品
1993-① 「混浴の思想」
ガロ 1993年7月号 【再録単行本】J.
1993-② 「美代子田川気分」
ガロ 1993年8月号 【再録単行本】H. J. N. Q.
1996-① 「長井さんと美代子」
コミック・ボツクス 1996年5月号 【単行本未収録】
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
「ガロ」1993年5月号の特集の為、
青林堂新社長・山中潤が田川を訪問、
安部へのインタビューを行う。
特集には「美代子阿佐ヶ谷気分」が再録されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1993.05-インタビュー.jpg?resize=1024%2C503&ssl=1)
山中潤の訪問がきっかけで、
安部は創作を再開。
「ガロ」へ新作の投稿を行うが、
掲載されたのは、
1993年7月号「混浴の思想」
1993年8月号「美代子田川気分」
わずか2作のみに終わっている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1993-①-「混浴の思想」-ガロ-1993年7月号.jpg?resize=1024%2C540&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1993-②-「美代子田川気分」-ガロ-1993年8月号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
「美代子田川気分」は、
以前の様に写真を基に描かれた
繊細な絵柄と、穏やかな展開の小作品。
しかし、
総合失調症の治療薬の投薬と、
宗教的な妄想のせいか、
作品の出来にムラが有り、
完全復活とは成らずに終わっている…
1996年1月に、惜しまれながら亡くなった
「ガロ」の初代編集長であり、青林堂の創業者、
長井勝一氏の追悼特集号となった
「コミック・ボツクス」5月号には、
数々の漫画家の追悼作品と共に、
わずか1ページの作品だが、
「長井さんと美代子」が掲載された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/1996-①-「長井さんと美代子」-コミック・ボツクス-1996年5月号.jpg?resize=1024%2C558&ssl=1)
1997年には、サブ・カル系雑誌
『Quick Japan』(クイック・ジャパン)Vol.13で、
“消えたマンガ家・第7回” として、
阿部慎一が取り上げられた。
(きっかけは、前述の根本敬による発掘活動)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/クイック・ジャパン-Vol.13-太田出版-1997年4月.jpg?resize=1024%2C503&ssl=1)
編集長の赤田祐一とライターの大泉実成が、
田川の安部の実家を訪れた際のインタビューが掲載されている。
(1971年の作品「雨の少年」も再録されている。)
2000年~2001年作品
2000-① 「車」
幻燈② 2000年1月(コミック・ボツクス1996年未掲載) 【再録単行本】M. Q.
2001-① 「続美代子田川気分」
幻燈③ 2001年 【再録単行本】Q.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
2000年の春。
旧友・古川益三が、まんだらけ出版からの単行本
『悲しみの世代』刊行に先駆けて田川を訪れる。
旧知の仲ならではの、遠慮のないインタビューが
2001年の単行本に掲載されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2023/08/2000-インタビュー.jpg?resize=696%2C508&ssl=1)
高野慎三氏が「夜行」の後継誌として
北冬書房から刊行した雑誌「幻燈」には、
2000年2月の第2号に「車」
2001年5月の第3号に「続美代子田川気分」
の2作が掲載されている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2000-①-「車」-幻燈②-2000年1月コミック・ボツクス1996年未掲載.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2001-①-「続美代子田川気分」-幻燈③-2001年-1.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
「車」は、「コミック・ボツクス」1996年5月号で
“次号に掲載” と告知されながら未発表に終わっていた作品。
後半は、未発表作品「迫真の美を求めて」
と同様の展開になっている。
高野慎三氏は、安部のデビュー当時から、
「ガロ」の編集者として交流が有り、
その後も安部作品の単行本化にも尽力している。
またこの年の後半には、
青林工藝社が「ガロ」の後継誌として発行している
雑誌「アックス」誌上での、
小説(エッセイ?)「田川生活」の連載が始まっている。
(2011年まで断続的に継続)
2002年作品
2002-① 「ポルノ」「友達のエッチ(根本敬との共作)」
アックス Vol.27 2002年6月号 【単行本未収録】
2002-② 「凄惨なる宴 (根本敬との共作)」
アックス Vol.28 2002年8月 【再録単行本】L.
2002-③ 「哲学 (根本敬との共作)」
アックス Vol.29 2002年10月 【単行本未収録】
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
湯浅学と根本敬が雑誌「BUBKA」の取材で
田川の安部を訪れたことがきっかけで、
根本敬との共作(?)作品を「アックス」に発表する。
アックス Vol.27 (6月)には、安部単独作「ポルノ」と
根本敬との共作「友達のエッチ」り2作
アックス Vol.28 (8月)に、根本敬との共作「凄惨なる宴」
アックス Vol.29 (10月) に、根本敬との共作「哲学」
3号連続で4作が発表された。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2002-①-「ポルノ」「友達のエッチ根本敬との共作」-アックス-Vol.27-2002年6月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2002-②-「凄惨なる宴-根本敬との共作」-アックス-Vol.28-2002年8月.jpg?resize=1024%2C523&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2002-③-「哲学-根本敬との共作」-アックス-Vol.29-2002年10月.jpg?resize=1024%2C527&ssl=1)
しかし、いずれも根本敬の特殊漫画に、
安部が、脈絡のない絵を添えた…
と言うだけの作品になっている。
2003年作品
2003-① 「ヤス子」「結婚生活」
アックス Vol.31 2003年2月号 【単行本未収録】
2003-② 「孤独」
アックス Vol.32 2003年4月号 【単行本未収録】
2003-③ 「夫婦刑事(めおとでか)」
単行本 L.『僕はサラ金の星です!』
2003-④ 「私」
アックス Vol.36 2003年12月号 【再録単行本】O.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
前年の根本敬との共作がきっかけとなり、
「アックス」に作品を発表する。
この後、安部の作品の掲載は「アックス」のみとなる。
(「ガロ」に連載していた小説「聖書」も、
2002年10月号での「ガロ」廃刊に伴い中断)
アックス Vol.31 (2月)に掲載された短編
「ヤス子」「結婚生活」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2003-①-「ヤス子」「結婚生活」-アックス-Vol.31-2003年2月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
2作共に、リハビリ明けと言っても良いのか?…
相変わらず分裂した作品。
アックス Vol.32 (4月)の「孤独」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2003-②-「孤独」-アックス-Vol.32-2003年4月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
安部自身の現在を独白する短編。
今回は写真を基に描いている。
単行本『僕はサラ金の星です!』
発売に合わせて書き下ろされた新作
「夫婦刑事(めおとでか)」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2003-③-「夫婦刑事めおとでか」-単行本『僕はサラ金の星です』.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
絵柄は安定しているが…
とにかく、タイトルも設定もストーリー(?)も
かなり錯乱した物になっている。
ある意味、このカルトな単行本向きの作品とも言えるが…
同じ年の年末
アックス Vol.36 (12月)掲載の「私」
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2003-④-「私」-アックス-Vol.36-2003年12月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
この作品は、久しぶりに奥様(美代子)の協力で、
新たに撮影した写真を基に描かれたモノローグ。
2004年作品
2004-① 「平成のバカ侍」(三本美治と共作)
アックス Vol.38 2004年4月号 【単行本未収録】
「男」(三本美治と共作)「父(ヤツ)」(三本美治と共作)
アックス Vol.38 2004年4月号 【再録単行本】P.
2004-② 「彼」(三本美治と共作)
アックス Vol.39 2004年6月号【再録単行本】P.
2004-③ 「陽子物語」
アックス Vol.42 2004年12月号 【単行本未収録】
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
投薬の影響による手の震えの為
細密な背景の作画が不可能となり、
人物のみ安部が作画し、
背景を三本美治が描くという競作を試みる。
アックス Vol.38 (4月)には、短編3作
「平成のバカ侍」「男」「父(ヤツ)」
続いてアックス Vol.39 (6月)にも
「彼」
が発表される。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2004-①-「平成のバカ侍」「男」「父ヤツ」三本美治と共作-アックス-Vol.38-2004年4月号.jpg?resize=1024%2C480&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2004-②-「彼」三本美治と共作-アックス-Vol.39-2004年6月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
この4作のうち「平成のバカ侍」だけは、
相変わらずの分裂作品(?)だが、
安部の独白「男」
息子の目線で描かれた「父(ヤツ)」
市井の牛乳屋の日常を描いた「彼」
この3作は、かろうじて作品の体を成している。
同年末からは、
背景を描くことを諦めたのか
人物のみのモノローグ作品を
2005年まで「アックス」に描き続ける。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2004-③-「陽子物語」-アックス-Vol.42-2004年12月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
2005年作品
2005-① 「純子伝」
アックス Vol.43 2005年2月号 【単行本未収録】
2005-② 「楽園」
アックス Vol.44 2005年4月号 【単行本未収録】
2005-③ 「アダムとイブ」
アックス Vol.45 2005年6月号 【単行本未収録】
前年末から継続した作風が続くが、
徐々に分裂したもの(?)に成っていく。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2005-①-「純子伝」-アックス-Vol.43-2005年2月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2005-②-「楽園」-アックス-Vol.44-2005年4月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/2005-③-「アダムとイブ」-アックス-Vol.45-2005年6月号.jpg?resize=1024%2C567&ssl=1)
アックス Vol.45 (6月)掲載の「アダムとイブ」
に至っては、わずか2ページの意味不明な作品。
もはや、連載小説(エッセイ)「田川生活」の添え物の様になっている。
この作品を最後に、現在まで
安部の漫画作品が発表される事は無くなってしまった…
2022年作品
(2022年9月29日 追記)
2022-① 「活動と命」
アックス Vol.148 2022年8月号
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2022/10/2022-①-「活動と命」-アックス-Vol.148-2022年8月号.jpg?resize=1024%2C538&ssl=1)
わずか4ページながら久しぶりの新作!!
作風は相変わらず意味不明な部分も多く、
作画も投薬のせいか、かなり荒く乱れた物になっているが、
愛犬の死や孫の誕生が断片的に描かれている。
巻末にも、ほかの執筆者に混ざって、短いコメントも書かれている!!
貴重な生存確認作品!!!
小説・エッセイ
「海辺の人」
ガロ 1993年10月号・11月号【単行本未収録】
「第二病棟常夜灯」
ガロ 1994年1月号・2月号・4月号【単行本未収録】
「背徳の美徳」
ガロ 1994年5月号【単行本未収録】
「白狼と呼ばれた女」
ガロ 1994年6月号・7月号・8月号【単行本未収録】
「海に似た男」
ガロ 1995年1月号【単行本未収録】
「聖書」(全25回)
ガロ 2000年1月号~2002年10月(最終)号 【再録単行本】I.
「田川生活 (田川ローカル)」
アックス Vol.23 2001年10月号~Vol.79 2011年2月号 【単行本未収録】
「椿」
単行本 R.『気分』2012年1月
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh①-ガロ-1993年11月号-「海辺の人」.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 1993年10月号・11月号に掲載された
美代子が登場するポルノ小説ともいえる作品。
ところどころに宗教の影が見受けられる…
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh②-ガロ-1994年1月号-「第二病棟常夜灯」.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 1994年1月号・2月号・4月号に3回にわたって掲載。
安部自身の総合失調症での入院体験を元に書かれた作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh③-ガロ-1994年5月号-「背徳の美徳」.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 1994年5月号掲載の読み切り作品。
妻以外の女性との浮気を描いているが、
最後には男の夢に釈迦が現れる…という宗教の影響がみられる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh④-ガロ-1994年6月号-「白狼と呼ばれた女」.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 1994年6月号・7月号・8月号に3話掲載。
筑豊漫画の延長作。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh⑤-「海に似た男」ガロ-1995年1月号-1.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 1995年1月号掲載の短編。
やはり安部自身をモデルにしたと思われる作品。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh⑥-「聖書」-ガロ-2000年2月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
ガロ 2000年1月号から2002年10月(最終)号まで
描き続けられたエッセイ。
かなり宗教色が強くなっており、一部意味不明な部分も…
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/Sh⑦-「田川生活-田川ローカル」-アックス-Vol.23-2001年10月号~Vol.79-2011年2月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
こちらも、アックス誌上で、
2001年10月号(Vol.23) から、2008年まで
断続的に描き続けられた宗教色の濃いエッセイ。
2008年以降は「田川ローカル」として2011年2月号(Vol.79)まで継続。
原作 (作画 : 西野空男・斉藤種魚)
作画 : 西野空男
「フヨウ」 月刊・架空 2010年4月号
「耳鳴」 月刊・架空 2010年5月号
「西日」 月刊・架空 2010年6月号
「夜曲」 月刊・架空 2010年7月号
「家出前夜」 月刊・架空 2010年8月号
「理知という名の赤い花」 月刊・架空 2010年9月号
「深夜の栄光」 月刊・架空 2010年11月号
「珍犬バナナ」 月刊・架空 2010年12月号
「愛は悲しみを越えず」 月刊・架空 2011年1月号
「雪中記」 幻燈⑫ 2011年11月
「気分」 単行本『気分』2012年1月
作画 : 斉藤種魚
「愛」 月刊・架空 2010年7月号
以上【再録単行本】R.
(【再録単行本】の詳細は、別項
天然なる狂気・安部慎一 ② (単行本収録作一覧) を参照)
2005年(?)以降は、
総合失調症治療の為に継続していた投薬により、
作画が困難となる…
高野慎三氏が北冬書房から断続的に刊行していた
「夜行」(1972~1995)・「幻燈」(1998~)で
執筆していた漫画家・西野空男が作画を担当し、
自らが中心となって刊行するミニコミ誌「架空」に、
2010年から作品を発表している。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/「耳鳴」-月刊・架空-2010年5月号.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
この時期の作品は、ワイズ出版の単行本「気分」で、
まとめて読むことが出来るが、これらは、
西野空男の作品として捉えるべき物の様に思われる。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/無題2.jpg?resize=1024%2C476&ssl=1)
また、「架空」2010年7月号には、
同じく「夜行」・「幻燈」系の漫画家斉藤種魚による作品
「愛」が発表されているが、
タイトル通り斉藤の安部への愛が溢れる作品となっている。
![](https://i0.wp.com/yoo-gto.com/wp-content/uploads/2021/12/「愛」-月刊・架空-2010年7月号-1.jpg?resize=1024%2C541&ssl=1)
なおこの号では、安部慎一の特集が組まれており、
西野空男・斉藤種魚両氏の作画作品と共に、
インタビュー、73年の「海のこちら」の再録が
掲載されている。
わたし自身が10代の頃に、
その強烈な作品と出会ってしまって以来、
現在に至るまで心中で微かに疼き続ける古傷。
今回、それを恐る恐る確認するかのごとく、
漫画家・阿部慎一の作品を
年代に沿って(可能な限り)読み返してみた。
正直なところを言ってしまえば、
私が魅了されていた漫画家・阿部慎一の世界は、
70年代半ばで終わっていたのかもしれない。
しかし反面…
70年代後半の迷走する作品群。
82年の総合失調症発病と帰省後の、
散発的な存在確認の様な諸作品。
そして現在も
病気と宗教という問題と葛藤しながら、
表現活動を続けようとする老いた無頼漢。
そのすべてを吞み込んでこそ
表現者・安部慎一の世界が成立し得るのではないかとも思えた。
「表現者・安部慎一」は、未だ未完のままである…
Great content! Keep up the good work!