失われた大切で愛おしい日常

グレッグ・オールマン(Gregg Allman)の、
2017年にリリースされたアルバム
『Southern Blood』

2017年5月27日に、
長年患っていた肝臓がんの為、グレッグがこの世を去り
同年9月 “遺作” としてのリリースとなってしまった…

自らの死を見据えて
友へのメッセージを託した “遺書” とも受け取れる、
オープニング曲
「My Only True Friend」

グレッグの体調不良と言う理由も有った為か、
この曲以外は全曲、
彼自身のフェイヴァリット・ナンバーを収録した
“カバー・アルバム” となっている。

2014年の、
オールマン・ブラザーズ・バンド
(The Allman Brothers Band)
の、
活動終了後、
グレックは、キャリアの集大成として、
全曲オリジナルのアルバムを計画していたが…
結果的には、叶わないままに終わってしまった。

しかし、45年間にも及んだ
オールマンズ・ファミリーを象徴する
『Southern Blood = 南部の血』

と題されたこのアルバムは、

何度かの浮き沈みを繰り返した後、
(体調の問題は別として…)
ようやく穏やかな私生活を手に入れたグレッグが、
その長い人生の中で出会った大切で愛おしい楽曲を、
ゆったりと(レイド・バックして)演奏した、
温かく・穏やかな “遺作” となっている。

収録曲とオリジナル曲の演奏者は

01 My Only True Friend (Gregg Allman/Scott Sharrard)
02 Once I Was [Tim Buckley]
03 Going Going Gone [Bob Dylan]
04 Black Muddy River [Grateful Dead]
05 I Love the Life I Live [Willie Dixon]
06 Willin’ [Little Feat(Lowell George)]
07 Blind Bats and Swamp Rats [Johnny Jenkins]
08 Out of Left Field [Percy Sledge]
09 Love Like Kerosene [Scott Sharrard]
10 Song for Adam [Jackson Browne]

このアルバムのラストを飾る曲が、
ジャクソン・ブラウンの、
72年のファースト・アルバム
『Jackson Browne』に収録された、

亡くなった友に捧げられた曲
「Song for Adam」

60年代からの戦友とも言える
ジャクソンとのデュエットで唄われている。

2014年の、アトランタで開催された
オールマンズへのトリビュート・ライブでも、
二人はステージを共にしており、

そのイベントでディレクターを務めたのが、
今作のプロデューサードン・ウォズ(Don Was)

自らの “死” を見据えた今作のラストに、
ジャクソンとの共演を配置したのは、
ドン・ウォズグレッグ共に望んだ事だったのかもしれない。

グレッグはこの曲の終盤、
声を震わせ、遂には歌い続けることができず
最後はジャクソンのボーカルだけで収録されている。

プロデューサーのドン・ウォズは、
あえてこのテイクを、アルバムのラストに収録した。

グレッグジャクソンも、
共にまだ20代だった頃に作られたこの曲。

この曲を唄う
共に歳を重ねた二人の脳裏には、
亡くなった友と過ごした日常への思いに加え、
人生の終盤に至るまでの長い年月の中で、
失われてしまった様々な風景が去来していた事だろう…

グレッグに、唄い続けることを出来なくしたのは、
オールマンズでの栄光への思いはもちろん、
いや、それ以上に、

もはやそこに立ち戻ることが叶わない、
失われた大切で愛おしい、
穏やかで、些細で、幸福な日常の風景への
痛みを伴う思いだったのでは無いだろうか?

現在のこの国のコロナ禍の中で、
本当に沢山の、大切なものが失われ続けている…

私事になるが…
この度わたしも “無職” となった。

10年以上任されていた
観光施設内の雑貨を扱う店舗

取扱いアイテムのチョイス、
売り場作りもある程度任され、
それなりに魅力のあるショップを作ってきたつもりだが…

確かに…けして儲かっていたわけでもなく、
ギリギリでなんとか店を回していた中で、、
度重なる、場当たり的な緊急事態宣言の乱発によって、
来客・売り上げ共に極端にダウン

今年の5月に、ついに閉店・撤退となった。

“閉店” という事実によって奪われたのは、

忙しく大変だが活気が溢れていた
四季折々のお店の光景。
同僚や、派遣スタッフ、
いつも顔を合わせる近隣店舗のメンバー達との日常。
毎朝通った近隣駅への道のり。
常連のお客様との、いつもの会話…

そんな些細な日常の光景は既に失われ、
もはやそこに立ち戻ることはできない…

都内でも、飲食店に限らず、
今もたくさんの店が閉店せざるを得ない状況が続いている。

“閉店” という事実は、
経営者・オーナーだけの問題ではない。

そこに関わる社員派遣スタッフ仕入れ先
楽しみに来店して下さっていた御客様達

沢山の人たちが慣れ親しんだ
大切な “日常” が奪われ続けている。

コロナ・ウィルスにとっては、
人に感染することが、生物としての宿命である。

そのウィルスに感染しても大丈夫な環境を作る事こそが、
政治のなすべき事ではないのだろうか?!

1年以上も、エビデンスの無い
国民の協力(犠牲)だけでしのぎ続け、
選挙に落選者が続いて初めてワクチンに本腰を入れ、
弱者や困窮者に対しては、
「最終的には、生活保護が有る」等と、
本音を口走ってしまう首相

昨年のコロナ禍の中でさえ、
国の医療費を抑える為に、
病床の削減を求めた官僚達。

オリンピックの為に多額の無駄金を使いながら、
休業への補償金も協力金も、
未だに満足に支払わない知事。

彼らは、この国の “指導者” でも “責任者” でも無い!
ただ既存の地位にしがみつこうとするだけの
“権力者” でしかない!!

グレッグ・オールマン
「Song for Adam」
で、涙してしまうことを、
単なるセンチメンタリズムとして片付けるのは容易い。
(たぶんこの国の “権力者”達は、そう言うだろう…)

沢山の人達の、本当に沢山の、
失われてしまった、大切で愛おしい、
穏やかで、些細で、幸福な日常の風景。
それらを失う事による感慨、痛み、怒り!!

そういった “失われた者達の涙” への、
僅かながらの想像力すら持ち合わせない者達に対して、
憤りを通り越して、哀れみすら感じてしまう…


Gregg Allman
『Southern Blood』
(2017)

01 My Only True Friend
02 Once I Was
03 Going Going Gone
04 Black Muddy River
05 I Love The Life I Live
06 Willin’
07 Blind Bats And Swamp Rats
08 Out Of Left Field
09 Love Like Kerosene
10 Song For Adam

Gregg Allman : Guitar. Organ. Vocals
Scott Sharrard : Guitar
Ronald Johnson : Bass
Steve Potts : Drums
Peter Levin : Keyboards. Piano. Vibraphone
Marc Quinones : Percussion
Art Edmaiston : Tenor & Baritone Saxophone
Jay Collins : Tenor & Baritone Saxophone. Flute
Marc Franklin : Trumpet. Flugelhorn

Val McCallum : Guitar
Greg Leisz : Pedal Steel Guita. Mandolin (02.03.06.08.10)
Jackson Browne : Harmony Vocals (10)
Buddy Miller : Harmony Vocals (01.02.03.04.06.08)
Stephanie Brown : Backing Vocals (07)
The McCrary Sisters : Backing Vocals (03.04.06.07.08)

Producer : Don Was

Jackson Browne
『Jackson Browne』
(1972)

A-1 Jamaica Say You Will
A-2 A Child In These Hills
A-3 Song For Adam
A-4 Doctor My Eyes
A-5 From Silver Lake

B-1 Something Fine
B-2 Under The Falling Sky
B-3 Looking Into You
B-4 Rock Me On The Water
B-5 My Opening Farewell

Jackson Browne : Vocals. Guitar. Piano
Albert Lee : Electric Guitar (A-2. B-2)
Jesse Davis : Electric Guitar (A-4)
Clarence White : Acoustic Guitar (A-1)
Leland Sklar : Bass
Russell Kunkel : Drums
Sneaky Pete : Pedal Steel Guitar
Craig Doerge : Piano (A-5. B-4. B-5)
David Jackson : Piano (B-2)
Jim Gordon : Organ
David Campbell : Viola
Jim Fadden : Mouth Harp
David Crosby : Harmony Vocals
Leah Kunkel : Vocals (A-5)

V.A『All My Friends
Celebrating The Songs

& Voice Of Gregg Allman』
(2014)

Disc1
01 Come And Go Blues (Warren Haynes)
02 End Of The Line (Warren Haynes & Derek Trucks)
03 Stand Back (Susan Tedeschi & Derek Trucks)
04 You Can’t Lose What You Ain’t Never Had
(Devon Allman, Jimmy Hall & Robert Randolph)
05 Please Call Home (Sam Moore)
06 Just Another Rider (Keb Mo)
07 Before The Bullets Fly (Brantley Gilbert)
08 Let This Be A Lesson To Ya (Dr. John)
09 Queen Of Hearts (Pat Monahan)
10 One Way Out (John Hiatt)
11 Statesboro Blues (Taj Mahal & Gregg Allman)
12 Just Ain’t Easy (Widespread Panic) 1
13 Wasted Words (Widespread Panic & Derek Trucks)
14 I’m No Angel (Trace Adkins)

Disc2
01 Trouble No More (Trace Adkins)
02 Multi-Colored Lady (Vince Gill)
03 All My Friends (Martina McBride)
04 Can You Fool (Pat Monahan & Martina McBride)
05 Ain’t Wastin’ Time No More (Eric Church)
06 Win, Lose Or Draw (Eric Church)
07 These Days (Jackson Browne & Gregg Allman)
08 Melissa (Jackson Browne & Gregg Allman)

09 Midnight Rider (Vince Gill, Zac Brown & Gregg Allman)
10 Dreams (The Allman Brothers Band)
11 Whipping Post (The Allman Brothers Band)
12 Will The Circle Be Unbroken (full cast)

Audley Freed : Guitar
Jack Pearson : Guitar
Don Was : Bass
Kenny Aronoff : Drums
Chuck Leavell : Keyboards
Rami Jaffee : Organ
Jimmy Hall : Harmonica. Percussion
Jim Hoke : Saxophone
Vinnie Ciecielski : Trumpet
John Hinchey : Trombone
Alfreda McCrary : Backing Vocals
Ann McCrary : Backing Vocals
Regina McCrary : Backing Vocals

Directed By [Musical Director] : Don Was

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