ロリー・ギャラガー(Rory Gallagher) 映像作品『Irish Tour 1974』

トニー・パーマー(Tony Palmer)監督による、
73年末から74年の、ロリーのアイルランド・ツアー
記録したドキュメント作成『Irish Tour 1974』

前項『ロリー・ギャラガー(Rory Gallagher) 1974 Live』
で紹介した、74年の2枚組ライブ・アルバム
『Irish Tour 1974』とは収録内容が異なる、
この映像作品について、今回改めて検証してみた。

70年代半ば、小規模な会場を借りて、
“フィルム・コンサート” と言う名称で、
当時の日本国内では見る機会が少なかった、
ロック関連の映像作品を上映するイベントが行われていた。

わたしも、地元関西で、
ストーンズの『ギミー・シェルター』や、
『ハイド・パーク』等と同様に、
ロリー『Irish Tour 1974』を、
そういったイベントで体験していた。

映像データとして手軽に自宅のモニターで、
何度も再生できる現在とは違って、
上映会場での1回限りの鑑賞

さすがに、細かい内容は覚えてはいなかったが、

アイルランド(コーク?)の北の海。荒れ狂う波。
波の音に被さって来るロリーのギター。

そして、いきなり汗だくのステージ・ショットへと切り替わる!

このオープニングの流れだけは、
鮮明に記憶に焼き付いている。

元々はTV放映用に撮影が始まったが、
短時間に編集することをロリーが拒んだ為
劇場用の映画として公開されたと言われている。

長らくVHSビデオではリリーされず、
ロリーの死後に2000年になって
ようやくDVD化された。

2011年にはリマスター版が再発され、
同時にブルー・レイもリリースされた。
(日本ではDVDのみ)

DVD化にあたって、
劇場公開版では未収録だった
「Cradle Rock」(1月2日ダブリン?)
の映像が追加収録されている。

ロリーの楽曲に対しての編集の荒さから、
監督のトニー・パーマーを非難する声も有る様だが、
元々長尺なロリーの楽曲は、
映画としての編集上のカット
やむを得ない事だったのではないかと思われる。

演奏の重要な部分はしっかり記録されており、
北アイルランド紛争のさなかでのツアーを記録した、
ドキュメンタリーとして捉えれば、
個人的にはそれほど気にはならない。

しかし、オープニングを盛り上げる代表曲、
「Cradle Rock」カットしていたという点に限っては、
若干の不満を感じざるを得ない…

2000年版と2011年リマスター版との差異

① 画質・トリミング

2000年版と比べて
2011年のリマスター版の映像は、
映像がクリアになった代わりに、
若干色合いが暗く仕上がっており、

更に、
全編を通じて画面をワイドにした事により、
縦方向が狭目にトリミングされてしまっている…

左が200年旧版・右が2011年リマスター版

この点については、
特に演奏中のアップのシーン等、
かなり不満を感じてしまう

② タイトル・メニュー

タイトル・メニューの、
チャプターにも多少差が有る。

タイトル・メニュー
左:2000年版 ・ 右:2011年リマスター版 
2000年版 チャプター
2011年リマスター版 チャプター

2000年版の方が、
演奏シーン、バック・ステージ、ドキュメント等
細かくチャプター割りされている。

③ ボーナス・トラック

2000年版は、日本ツアーの記録映像のみ
2011年リマスター版 『Music Maker』を追加

2000年版では、ボーナス動画は、
日本ツアーの記録映像のみ。
(2011年版には無い “Discography” は静止画)

2011年リマスター版では、
73年のTVプログラム『Music Maker』(後述)を追加。

ちなみに、2000年版2011年リマスター版では、
日本ツアーの記録動画が、全く別の物になっている。

2000年版は、わずか4分少々の動画。
バック・ステージでの、ロリージェリー・マカヴォイ
「Livin’ Like A Trucker」と、
「They Don’t Make Them Like You Anymore」
のリハーサル・シーンが中心。

2000年版

2011年リマスター版では、
74年1月27日の名古屋で
「In Your Town」のライブ音源をバックに、
来日中の記録動画(8ミリ・フィルム)が、
約11分間に編集されている。
ステージでの演奏シーンは、
やはり1月27日名古屋での物。

2000年版のシーンは未収録!!

2011年リマスター版

撮影日時・場所の予想

前項『ロリー・ギャラガー(Rory Gallagher) 1974 Live』
で、取り上げた2014年にリリースされた
『Irish Tour ’74 7CD+DVD Box』
のおかげで、

73年12月28日29日 の、
ベルファスト・アルスター・ホール(Belfast Ulster Hall)
74年1月2日の、
ダブリン・カールトン・シネマ(Dublin Carlton Cinema)
74年1月3日の、
コーク・シティー・ホール(Cork City Hall)
74年1月5日の、
コーク・シティー・ホール(Cork City Hall)

と言う、このアイルランドへのツアーの全容
ある程度明らかになってきた。

(前項の別表参照)

しかし、映像作品『Irish Tour 1974』では、
演奏シーンがかなりエデッイトされており
『7CD Box』の音源との比較がしにくくなっている

今回は、
音源として、74年1月3日の、
コーク・シティー・ホール(Cork City Hall)での、
オーディエンス録音ブートレッグ
『Can’t Fight City Hall Vol. 5』
も参考にしながら、

映像に記録された、
ロリーのボーカル・マイク
ロリーのシャツ
モニタースピーカー
客席とステージの様子

等を検証しながら、
楽曲の収録日時を推測してみた。


74年1月3日コーク・シティー・ホール

まず、『Can’t Fight City Hall Vol. 5』と、
ほぼ同じだと確認できたのが

03. Who’s That Coming
04. A Million Miles Away

● この日のロリーボーカル・マイクは、
 “シングル”
ロリーのシャツは、
 “黒の無地”

左・Who’s That Coming     右・A Million Miles Away


● ステージ両サイドには、
 5日の映像と同じ
 “赤”モニタースピーカーが、
 確認できる。

客席の両サイドには、
 特徴的なラインの入った壁と、
 その上のアーチ状の窓が見える。

Who’s That Coming
A Million Miles Away

74年1月5日コーク・シティー・ホール

『7CD Box』Disc1-2と、
ほぼ同じだと確認できたのが

01. Walk On Hot Coals (前半)
02. Tattoo’d Lady

(「Walk On Hot Coals」は、
4分50秒あたりまで。
以降は2日ダブリンの映像に切り替わる。)

● この日のロリーボーカル・マイクは、
 ビニールテープで2本のマイクをまとめた
 “ダブル”
ロリーのシャツは、
 “赤のチェック”

 3日のステージまでは、
 “シングル” のボーカルマイクを使っている。
 1月5日以外の音源では、曲によっては、
 ロリーのボーカルに多少 “音割れ”
 起きている部分もあったので、
 最終日は、それを改善する為に、
 この様なマイク・セッティングになったのか…??

 この2曲の映像では、
客席と、モニタースピーカーは確認できないが、
 「Tattoo’d Lady」が始まる前に挿入されている、
 オープニングのシーンでは、
 “赤”モニタースピーカーが確認できる。

 この部分は、5日のオープニングで、
 この映像作品には未収録の1曲目
 「Messin’ With The Kid」
 始まる前のシーンだと思われる。

 ロリーは、この時はまだ
 デニムのジャケットを着こんでいる。

● また、同日と思われる、
 開演を待つ観客席の映像には、
 3日の映像と同じアーチ状の窓も確認できる。

Walk On Hot Coals
Tattoo’d Lady

74年1月2日ダブリン・カールトン・シネマ

『7CD Box』Disc3-4と比較して、
映像ではかなりエデッイトされている部分が多く、
確証は持てないが…

01. Walk On Hot Coals (後半)
06. Cradle Rock
07. As The Crow Flies
08. Hands Off

(「Walk On Hot Coals」は、
ギターを取り出すシーンをはさんで、
後半5分あたりから)

Walk On Hot Coals

● この日のロリーのボーカル・マイクは、
 “シングル”
ロリーのシャツは、
 “黒っぽいのチェック”
 (「Cradle Rock」では、
 ベージュのジャケットを着たまま)

As The Crow Flies
Cradle Rock

ステージ後方と、
 ドラムのロッド・ディアスの後ろには、
 カーテンが確認できる。

客席の様子は、
 暗くて確認できない…

 しかし「Cradle Rock」では、
 コーク・シティー・ホール
 特徴的なラインの入った壁と、
 その上のアーチ状の窓や、
 モザイクタイルの天井が見られる…

 観客のシーンだけ、
 コークの映像を使用したのか…??
 (この曲に関しては確信は持てない)

Cradle Rock
As The Crow Flies
Hands Off

73年12月28日 又は 29日
ベルファスト・アルスター・ホール

05. Going To My Hometown

当時のベルファストの、
銃弾の後が残る建物や、ブリテン軍の様子など、
クリスマス休戦中とはいえ
緊張感を感じさせる映像に続くこの曲は、

『7CD Box』Disc5-6と比較しても、
なかなか判断しづらいが…

ルー・マーティンキーボード・ソロの直前
 ロリー「ピアノ・マン!!」と叫ぶ部分は、
 ベルファストの音源と一致する

● ここでも会場の天井には、
 コーク・シティー・ホール
 モザイク・タイルが見えるシーンが挿入されるが…
 これも、別会場の映像なのか??

Going To My Hometown

74年1月5日コーク・シティー・ホール
(音源未発表)

『7CD Box』Disc1-2
コークでの音源に含まれていないのが

09. Bullfrog Blues

● この日のロリーボーカル・マイクは、
 ビニールテープで2本のマイクをまとめた
 “ダブル”
ロリーのシャツは、
 “赤のチェック”

客席の両サイドには、
 特徴的なラインの入った壁と、
 その上のアーチ状の窓

“赤”モニタースピーカーも、
 確認できる。

収録は1月5日コーク・シティー・ホール
に間違いはなさそうだ。

ツアーの最終日と言う事で、
特別なアンコールだったのかもしれない。
(ジェリーロッドシャツが、
同日の他の映像と変わっているのは、
さすがにアンコール前に着替えたのか??)

Bullfrog Blues

演奏シーン以外の映像

バック・ステージでのシーンは、
別会場のものが繋がれていたりする為、
なかなかロケーションの判定はしにくい

ベージュのジャケットはダブリンで着ていたもの。
しかしシャツは赤のチェック… 
収録場所は不明…
ボトルネック奏法を語るシーンは、
1月4日のコーク、セッション時?

ステージでのジャムのシーンは、
『7CD Box』Disc7と同日の
1月4日コーク・シティー・ホール
での物ではないかと思われる。

ドキュメント部分での映像は、
ごく一部、
ベルファストダブリンの風景が使用されているが、

ベルファスト           ダブリン

ほとんどは、
ロリーが育った地元コークでの物と思われる。

コークの街並みと港
地元コーク(?)の楽器店      “雄弁の石”で有名なコーク・ブラーニー城

TVプログラム『Music Maker』

2011年リマスター版には、
73年のTVプログラム『Music Maker』が、
ボーナス映像として追加収録されている。

27分間72年5月11日
リムリック、サヴォイ・シアターでのライブを中心に
編集されたアイルランド国営放送のTV番組。
(2008年リマスター再放送された物)

収録時、72年5月は、
ウィルガー・キャンベル
ドラマーを務めていた時期だが、
ウィルガーは当日参加出来無かった為、
急遽ロッド・ディアスがドラムを担当している。
(ロッドの参加はこの時が初めてだったらしい)

収録曲は

01. Tore Down
02. Laundromat
03. Pistol Slapper Blues
04. Don’t Know Where I’m Going
05. Bullfrog Blues


今回の映像作品にしても、
前項音源にしても、
まだまだはっきりしたデータが公開されていない。

2024年には、50周年を迎える
これらの作品に関して、
更に詳細なデータが公開されることを期待している。

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ロリー・ギャラガー(Rory Gallagher) 映像作品『Irish Tour 1974』” に対して1件のコメントがあります。

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