正統派青春ROCK漫画 “シオリ・エクスペリエンス” ②

『Bridge to Legend』予選突破と
O.A.としての全国ツアー

早い時期にドラマーとして加入しながら、
早々に故郷に引き籠っていた後、
ベーシストとして(かなりポッチャリ体形になって)、
“SHIORI EXPERIENCE(シオエク)”
に復帰したプリンス

コミックスの第11巻では、
彼の葛藤が描かれる。

そつなく様々な楽器をこなす
マルチ・プレーヤーだが、
“タピオカズ” のベーシスト・リョーの一言
「え? サポートメンバーだろ? キミ」で、
自分のバンド内でのポジションに疑問を持つ様になる。

たまたま出会った、紫織の兄・丈二と、
“優等生”と “落ちこぼれ” のセッションを繰り返す。

ひたすら不器用だが、可能性を諦めようとしない丈二

それぞれのメンバー達の、それぞれのパートを演奏するうちに、
自分自身のバンド内での立ち位置を再発見するプリンス

丈二は、負け犬の様な半生の中で生まれた唯一の曲、
「ストーリー」をプリンスに譲り
すぐにネタバレになってしまう不器用な悪態をついて、
プリンスを、本来彼が居るべき場所へと突き放す

後日、『Bridge to Legend』国内選考一次予選では、
「すっかりバンドマンの顔になった」プリンスを、
リョーは、帽子を取るという敬意で迎える。

“シオエク” が、
アマチュア・バンドの登竜門
『Bridge to Legend』
(どこかRainbow Bridgeを思わせるネーミング)
に参戦する為に、用意した、
バンドの持ち曲は4曲

「ストーリー」
ベースのプリンスが、
丈二とのセッションを通じて譲り受けた曲

「パーフル・ヘイズ」
もちろん、おじさん(ジミ)の定番曲
(プラス、ブラス・ヴァージョン)
紫織にとっては、兄・丈二との思い出の曲

「デイドリーム・ビリーバー」
五月と忍の思い出の曲であり、
五月のボーカリストとしての力量が発揮される。
モンキーズのスタンダード曲
(清志郎による日本語バージョン)。

Jack In! (ジャック・イン)」
紫織が、ジミとの一週間の  
「天国みたいな無限地獄」の中で完成させた、
「くそ最高な曲」

それぞれの曲が、
セット・リストに加えられるまでの、
エピソードも、しっかり描かれている為、
演奏シーンにもリアリティーが伴う!!

そして迎える
『Bridge to Legend』の
国内選考一次予選。

デビュー・ライブでは、
圧倒的な力量の差を見せつけられ、
この予選で再会することになった、

“Black Bus”

リーダー黒井バスはじめ、
「まだ、このバスを降りたくない」
各メンバー達の
丁寧なキャラの設定ばかりでは無く、
バスを走らせ続ける(バンドを続ける)為の軋轢も、
しっかり描かれる。

黒井の葛藤を描くシーンでも、
泉谷しげるの「春夏秋冬」が、
実に効果的に挿入されている。

ここは、オリジナル・ヴァージョンよりも、
88年の、泉谷のセルフカバー・アルバム
『IZUMIYA-Self Covers』の、
リメイク・ヴァージョンが似合う。

予選に参加した、一癖も二癖もある、
バンドのフロント達のキャラ
も、
実に味わい深く描き込まれている。

沖縄出身 “赤潮界隈”

ハードコア?  ハード・ロック??

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ラップ・ユニット “ドリルヒルズ

ふしぎちゃんキャラ?

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サイコビリー・バンド “ガーターキー

見た目によらず硬派。

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みんな、妥協やなれ合いを拒絶するが、
自分たちが認めた相手には、
素直にリスペクトする。

自分たちの演奏だけではなく、
ライバル達の “音楽” を、
純粋(単純?)に楽しむ “シオエク” のメンバー達。

ライバル・バンド達も、
戸惑いながらも、徐々に心を開いていく

トリの “シオエク”
ラストの曲 “Jack In!”演奏シーン!!

大量のシールドが、観客に向けて放たれ
それぞれの心に突き刺さる。

この見事な描写は、作画の長田悠幸氏の、
斬新な “音” の描写の中でも、
群を抜いて “音圧” を感じさせる!!

思わず、“シオエク” のステージに向かって、
駆け出した黒井と、
全員でダイブさせようとするライバル達。

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それぞれのキャラの、丁寧で、細かい描き込み
がなされているからこそ、
へたをすると、安っぽい
バンド同士の連帯・友情物語になる事を回避し、
ライバルたちの、この表情が
実に深い温かみを感じさせてくれる

“シオエク” は、一次予選を見事に突破!!

初範の先輩バンド “タピオカズ” のツアーに、
“Black Bus” と共に、
前座として共に参加し
大規模な会場でのライブで、
バンドとしての経験を重ねていく事になる。

“The 27 Club”

コミックス13巻あたりから、
さらに、フェイズが変わってくる

海外の大物フィクサーが企てる、
大規模野外イベント。

“Woodstock 27”と、

そのイベントのメインアクトとしての、
クロスロードの契約で召喚した、
伝説のミュージシャン達の、
スペシャル・ユニット

“The 27 Club”

また、“シオエク” が目指す
『Bridge to Legend』の、
世界大会での優勝バンドにも、
“Woodstock 27”
出演権が与えられる。

“The 27 Club” の計画は、
物語の早い段階から描かれていたが、
ここにきて、
“スクール・オブ・ロックンロール” と、
“レジェンド・ミュージシャン” 達の物語が、
いよいよシンクロし始める。

また、コミックス15巻で、
“シオエク” と “Black Bus(ブラバス)” が同行した
“タピオカズ” のツアー最終日

3バンド合同のエンディングが終わった後に、
ジミは、衝動を抑えきれずに、
紫織に “ジャック・イン” し、
完成したばかりの未発表の新曲を、
ステージで披露してしまう。

これまで、トリックスター的に描かれてきた、
(変な)おじさん・ジミの、
本来のJimi Hendrixsとしてのストーリーも、
ようやく始まりそうな展開になってきた。

ところで…
この未発表曲は、作者の中では、
どういった曲としてイメージされているのか??

非常に気になる!!

「Hey Baby (New Rising Sun)」
タイプでは無さそうだし、
「Dolly Dagger」「Ezy Rider」の様な
ストレートな曲でもなさそう…
インストの様なので、
「Jam Back At The House(Beginnings)」タイプか??

物語の中で、現代に召喚されたジミは、
ニルヴァーナも含めて、
自身の死後に作られた音楽を、
貪欲に聴きあさっている為、

70年代以降の要素も取り込んだ、
全く “新しい音”

と言う設定なのだろうけれど…

それぞれの契約者達の出会いと、
“The 27 Club” の結成までも、
“シオエク” の初めてのツアーと
並行して描かれる。

紫織と同じ様に、
クロスロードの契約で、
カート・コバーン“ジャック・イン”
した、フォード

大物フィクサーの指示で来日し、
Jo-Z(紫織が変装したアフロ・ギタリスト)と、
お互いに “ジャック・イン” した状態で
セッションする事になる。

フォードJo-Z(紫織) = カートジミとのセッションで、
「Smells Like Teen Spirit」
に対するトラウマが払拭されるシーン。

落ちこぼれでも、
諦めようとしない紫織の兄・丈二に対するシンパシー

等、かなり細かく描かれており
カートのキャラは、特に立っている。

さらに、アメリカへ帰国したフォードは、
ジャニス・ジョプリンとの契約者、エランと、
“the 27 Club” として、
『Bridge to Legend』にエントリーする。

一方、イギリスでは、
ジム・モリスンとの契約者、マーティンと、
ブライアン・ジョーンズとの契約者、ロイスが、
“GLOCKS” としてエントリー。

そこにフォードエランが現れ、
一緒に “The 27 Club” としての
エントリーを提案する。

27歳でこの世を去ったミュージシャン、
ジャニス、ジム、ブライアン
それにこのメンツの中では “若造”
カートが、顔を合わせる事になる。

当初は “The 27 Club” への合流を拒否していた
ジムブライアンも、
ジャニスが歌うカート新曲に魅了される。

4人が合流した、小さなパブでの演奏は、
広大なクロスロードでのセッションへ、
イメージが昇華していく。

そして、“The 27 Club” 最後のパーツである
Jimi Hendrixsの参加を待つことになる…

ジャニス、ジム、ブライアンそれぞれの
70年代からROCKを聴いてきた世代にとっては、
おなじみのエピソードも、
うまく盛り込まれているが、

ジャニスに関しては、正直、
我々の世代がイメージしていた、
“弱さ” の部分が、あまり描かれておらず、

ジムも、やたらと粗野に描かれている。
(西部なまりが関西弁で表わされるのは、
なかなか!!)

ブライアンは、
ストーンズとの確執を引きずっているが、
少々、クールすぎるのでは…

そして、今のところ、
このメンバーの中で、一人だけ別の世代カートほど、
細かい性格描写は、なされてはいない。
(今後、さらに各キャラごとにストーリーが展開されるのか?)

ここに、あえてニルヴァーナカート・コバーンを加えたのは、
作者の世代的なものだけでは無く、
今後のストーリーの中で、
キーパーソンとしての役割を果たしていく
のではないかとも思える。

今後の展開は?

最新の「月刊ビッグガンガン」のインフォでは、
紫織は、単身で “The 27 Club”
加入する為に渡米を決意する。
と、なっている…

バンドとしての “シオエク” は、
どうなるのか?

紫織は、“シオエク” では、
ジミ“ジャック・イン” せずに
プレイしている訳だし、
“The 27 Club” では、
ジミ“ジャック・イン” したJo-Zとして参加し、

別枠で、“シオエク” として、
“Woodstock 27” のステージに立つのか?

また、物語の始め、
“ジャック・イン” した状態で
紫織にフラッシュ・バックした、
1970年9月18日の、ジミの死の瞬間

この伏線は、どう描かれるのだろう?

死の真相については、
“The 27 Club”他のメンバー達の、
それぞれのエピソードも語られる可能性も有るが…

また、渡米したジミが、
エディー・クレーマーや、
ビリー・コックスと再会する等と言う
エピソードも期待してしまう。

紫織の27歳最後の日までは、
まだまだ日数が残っている。

まだまだ続いて行きそうなこの作品の、
今後の展開に期待してしまう!

最後に…

わたしたちの世代にとっての、、
1960年代後半から70年代
『COM』『ガロ』等で体験してきた、
“漫画” では、

登場人物のバックグラウンドは、、
詩的と言うか、
敢えて読者にイメージを膨らまさせるような
描かれ方をすることが多かったように思える。

これは、作者の力量による部分が
非常に大きい。

しかし、現在の “漫画” においては、
出版社サイドの示唆も少なからず有るとは思うが、

各登場人物たちのバックグラウンドを、
じっくり描きこみ、
それぞれのキャラを生きた物にしていくと言う方法
が、
一つのフォーマットとして存在している様にも思える。

しかし、この作品においては、
たとえフォーマット化された方法論に
則ったものだったとしても、

それは、確実に、効果的に、それも熱く、
読者の胸を打つ。

そう、ジャック・インしてくる!!!

この歳になると、
少しずつ塁線も緩くなってきているのは確かだけれど、

この、実に熱く、少しばかり青臭いストーリーに、
思わず目頭が熱くなってしまう…

ROCKへのこだわりの有る無し、
そして、年代も問わず、

“Experience(体験)” する価値の有る、
作品である事は間違いない!!!

(2月発売予定の、コミックスの新刊からは、
ちゃんと新しいの買いまーす…)

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