正統派青春ROCK漫画 “シオリ・エクスペリエンス” ①
Jimi Hendrix (ジミ・ヘンドリクス)
の記事を書く際に、
たまたまネット上で見つけてしまったのが、
ジミ・ヘンドリクス(ヘンなおじさん)の幽霊が、
地味(ジミ)な女性高校教師に取り憑く、
という設定の漫画、
“シオリ・エクスペリエンス”
ジミなわたしとヘンなおじさん
(作画-長田悠幸 原作-町田一八)
最初は正直…
「なんじゃこりゃ???…」
出版社は、スクウェア・エニックス。
掲載誌は「月刊ビッグガンガン」???…
以前仕事で、
スクウェア・エニックスの雑誌のグラビアで使う、
某アイドルグループのメンバーを使った撮影に
立ち会う事が有り、その後、
掲載誌が会社宛に送られてきた事があったけれど…
大変失礼ながら、
「これは… 自分でお金払っては買わんなぁ…」
というそこはかとなくB級感漂う雑誌 (失礼…)。
そんな事もあり、少々腰が引き気味ながらも、
とりあえず、少し気になったので、
このページで、コミックスの1巻分を試し読みしてみた。
まるごと無料試し読み
https://booklive.jp/product/index/title_id/316171/vol_no/001
クロスロードでの悪魔との契約で、
ジミ・ヘンドリクスの幽霊が、
主人公の地味な高校教師(ジミセン)、
本田紫織(シオリ)の前に、突然現れる。
(本人は契約した覚えが無く…
失踪した兄・丈二が、契約しようとした為?)
紫織の首の後ろのジャックに、
ジミがギターのプラグを
ジャキーン(JACK in)する事で、
2人は融合し、
超絶テクのギタープレイが可能になる。
なぜかジミと同じく、紫織も左利き。
失踪した兄が残したギターも左利き用。
エレクトリック・レディー・スタジオで、
大量の未完成作品を残していたジミは、
紫織にジャキーン(JACK in)して、
ギターを弾きたがり、未完の曲を仕上げようとする。
しかし、クロスロードの契約では、
取りつかれた本人は、
27歳の最後の日が終わるまでに、
音楽で大成しなけれは、
“死”が待っている。
もちろん27歳とは、
ジミをはじめ、
ジャニス・ジョプリン、ジム・モリスン、
ブライアン・ジョーンズ
達が死んだ年齢。
むちゃくちゃな設定ながら、
なかなかにROCKを聴いてきた者の、
琴線をクスグルものがある。
しかし、
2013年から連載が始まったこの作品は、
現在コミックスで15巻まで発売されているが、
正直、1巻だけを読んだ限りでは、
その後を読む価値が有るかどうか、
少々疑問だった。
ただ… 個人的に、
ROCK的な要素以外で、
妙な部分に引っかかってしまった。
吹奏楽部の顧問、青島すばる。
表向きのキラキラ・ブリッコ・キャラとは裏腹に、
生徒達には鬼のようなスパルタ指導を行い、
紫織達を見下すヴィランズ・キャラ。
(後に、めちゃくちゃ良い味を出すが…)
とにかく、その関西弁が凄すぎる!!
きょうび、
ネイティブ関西人でも、
なかなか使わんよーな
“エグイ” 関西弁!
作者は、ROCKだけでは無く、
関西弁にも、実に造詣が深い!!!
と… 変な部分に引っかかった状態で、
たまたま立ち寄ったブック・オフで、
2巻目から5巻目までを発見。
「とりあえず、続き読んでみよか…」
と、購入して読み始めたところ…
こ…これがぁ!!
やたらと面白い!!
勢いで、コミックスの残りの巻も、
ブック・オフやまんだらけで、
中古を安く購入!!
(新品…買うたれよぉ~…)
コミック各巻の装丁にも、
ROCKを聴いてきた者の
琴線に触れる部分が満載。
こうしたギミックの部分はさておき…
本編のストーリーは、
王道の、熱ーい青春BANDマンガ!!
(ヘンな)おじさん、
ジミ・ヘンドリクスは、
(今のところ…)
トリックスター的な役回りで、
あくまで主役は、地味な先生と、
バンドメンバーの生徒達と、
彼らを取り巻く仲間や、ライバル、敵役達。
“SHIORI EXPERIENCE” 結成まで
ジミ本人から提案された、
“The Jimi Hendrix Experience”
を元に、決定したバンド名、
“SHIORI EXPERIENCE”
しかし、当初の反応は…
焦るおじさん・・・・・
最終的なメンバーは
この7人のメンバーが、
バンド “SHIORI EXPERIENCE” として、
まとまっていくまでの紆余曲折を、
コミックス10巻を費やして、
実に丁寧に、じっくりと、熱く描かれていく。
この丁寧な描き込みによって、
各メンバーのみならず、
彼らを取り巻くすべての登場人物たちの
キャラクターが、しっかりと立ってくる。
“漫画” と言う限られた表現方法の中で、
ROCKと言う “音” を扱うにあたっても、
音の存在感をを表す、斬新な描写もさることながら、
リズムを感じさせるコマ割が、
実に上手く使われている。
過去のトラウマを引きずって、
唄う事を封印していた五月が、
思い出の曲、
モンキーズの「デイ・ドリーム・ビリーバー」
(清志郎ヴァージョン)を、
彼女を待ちながら、延々と演奏を繰り返していた
バンド・メンバー達に合流して歌い始めるシーン。
デビュー・ライブで、
自分たちの未熟さを思い知らされるが、
紫織をはじめそれぞれのメンバー達の、
そのトラウマを乗り越え、前へ進む為の葛藤も、
それぞれ各1話分を使って、丁寧に描かれている。
そして、やはり五月の場合。
自分を迎え入れてくれた紫織達のバンドにとって、
本当に必要なボーカリストなのかと悩む中、
“出来レース” のコンテスト会場に、
あえて自分を試すかのように駆け付けて、
唄い出すまでのシーン。
どちらのシーンも、
コマ割りと、歌詞が、
実にリズミカルにシンクロし、
しっかりと “音” と “唄” が聴こえてくる!!
そして、この実に青臭い選曲!!
70年代ROCKのクラシックでは無く、
あえて、登場人物達の世代にとっての、
クラシックで有り、スタンダードである
これらの曲を選んだセンスには脱帽!
ちなみに、おじさんは…
元吹奏楽部で、すばるに退部を言い渡され、
紫織たちのバンドの中でも居場所を見失った
サックスの井鈴。
紫織たちのバンドの音を聴いてしまった事で、
エゲツナイまでのスパルタ指導で、
井鈴を鍛え直す、すばる。
吹奏楽部部長で、
すばるが過去の自分とだぶらせて、
理想的なトランペッターに鍛えあげられた音々。
自らの分身の様な教え子の、
本来の居場所が紫織たちのバンドだと認め、
「目ぇ、そむけんな」、と、
突き放し、決別する、すばる。
井鈴の敬意に対しても、
音々の決意の涙に対しても、
あくまでも “憎まれ役” を演じ続ける。
井鈴と音々を加えた紫織たちのバンドの、
地元のフェスでの演奏は、大盛況に終る。
フェス終了後のステージで、
かつて自分が諦めたトランペットで、
決別の曲「ラブ・イズ・オーバー」を、
自分自身に向けて、
たった一人で吹く、すばるの一筋の涙。
その音色に、すべてを理解し、
一礼する紫織。
その紫織の隣で “おじさん”は…
イイ味出してる…
ここまで(コミックス10巻分)の、
『スクール・オブ・ロックンロール』的な、
青春学園バンド・ドラマから、
11巻以降は、
ROCKバンドとしての
“SHIORI EXPERIENCE”と、
ジミをはじめ、クロスロードの契約で召喚された、
27歳でこの世を去ったレジェンド達の、
“The 27 Club” 計画も絡んで、
新たな局面にシフトしていく。