Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリクス)『Live In Maui』映像編

1970年7月30日
映画 “Rainbow Bridge” の為に急遽行われた、
Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリクス)と、
新生Experience(エクスペリエンス)の、
マウイ島でのフリー・コンサート

ブートレッグ(海賊盤)でおなじみだった音源が、
50年の年月を経た、2020年の年末になって
ようやくオフィシャル盤『Live In Maui』として、
音源CD2枚と、映像Blu-rayのセットでリリースされた。

Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリクス)『Live In Maui』音源編
では、CD2枚の音源に触れたが、

今回の目玉となるのは、こちらのBlu-rayに収録された、
Late Showの制作に巻き込まれた、
このフリー・コンサートの顛末を描いたドキュメント
“Music, Money, Madness… Jimi Hendrix in Maui” と、
現存するすべての16ミリフィルムを使い
2回のライブを可能な限り再現した2ステージ分の映像
と言う事になる。

“Music, Money, Madness… Jimi Hendrix in Maui”

Eddie Kramer(エディ・クレイマー)
Billy Cox(ビリー・コックス)
をはじめ、
監督のChuck Wein(チャック・ワイン)本人の他、
当時のマウイでの出演者ら(ほとんどが素人)による、
映画 “Rainbow Bridge” 制作時の証言を集めたドキュメント

この “Rainbow Bridge” というカルト・ムービーに対して、
エディ・クレイマーや、ジミ・サイドの人間と、
チャック・ワインはじめ、マウイでのスタッフや出演者達とでは、
評価が全く違うというところも興味深い。
(ぜひ、日本語字幕付きのバージョンで観て頂きたい)

2回のライブを可能な限り再現した2ステージ分の映像

フリー・コンサート当日、
用意されたカメラは4台
撮影に使えたフィルムは、各々10分程度
と言う事は、
ライブ映像を記録したフィルムはせいぜい40分

その為、
(全く映像が残っていない何曲かを除いて)
当日のセットリストに沿って、断片的なフィルムを編集し、
撮影されていない部分には、当日の静止画と、
「ALL CAMERAS STOPPED」という

この画像をパッチして繋ぐという方法が取られている。

曲の途中で、たびたび静止画がカット・インしたり、
曲の大半が静止画になっている場合も有るが、

50年前の貴重なライブを、
可能な限り追体験できる作品に仕上げた、
エディ・クレーマーの手腕には、拍手を送りたい!!

映像で見るステージの様子は、

70年当時、
かなりのステータスを築いていたジミ達が、
立つ場所とは思えないほど狭く粗末なステージ

その両サイドのポール(竹??)には、日本の鯉のぼり
聴衆の中には、番傘をさした者や、陣笠をかぶった者も。
ステージの前に垂らされた布の色合いも、
心なしか歌舞伎の垂れ幕の様な配色

日本人の我々から見ると、少々不思議な光景に映る。

Mitch Mitchell(ミッチ・ミッチェル)の、
手数が多く、オーバー・アクション気味のドラミングは、
(オーバー・ダブによるズレは多少あるものの…)
動画で見る方が、さらにパワフルにノリを感じさせ

Billy Cox(ビリー・コックス)のベースは、
さすがに、兵役時代からの相棒と言う事で、
安定してジミをサポートしている

Early Show

01. Chuck Wein Introductio

音源CDでのスピーチの、
始めと終わりの部分だけをエディットして20秒程収録。

02. Hey Baby (New Rising Sun)

会場に向かう観客たちの映像から、
ジミたちがステージに登場するシーンに、
CDでの音源と同じく
曲の最初の20秒ほどのジャム風の演奏部分がカットされた、
ボーカル・パートへのイントロ部分の音が被せられ、
この曲が、オープニング曲だった様に仕上げられている。
(当日はその前に、「Spanish Castle Magic」と、
「Lover Man」が演奏されている)

後半に僅かに、客席側からの画像と、観客の画像
静止画がパッチされるが、自然な繋がり方で、
動画として、ほぼ問題無く観ていられる

03. In From the Storm

「Hey Baby (New Rising Sun)」からの、メドレー。
息の合った絶妙のタイミングで、曲を切り替えるシーンは、
見ていてゾクゾクしてしまう!

残念ながら中盤以降、
曲の約半分にあたる約2分30秒近くの間
映像が残っておらず、

この静止画が、延々とパッチされている
(エンディングの部分だけ映像が戻る)

04. Foxey Lady

オープニングでは、当日会場に集められた、
映画 “Rainbow Bridge” の出演者達に向かって、
(パット・ハートレイの姿も見える)
オーバー・アクションぎみにアプローチ

曲の頭と、後半に一部静止画のパッチ有り。

かなりノリノリで、おなじみの歯弾きも見られる。
エンディングでは、マイクスタンドにギターを擦り付けるプレーも。

05. Hear My Train A-Comin’

演奏前のジミによる曲紹介のスピーチから収録。
それぞれ1分から2分程度ではあるが、
全部で9ヵ所の静止画パッチが有る。
これはさすがに、見ていて少々ストレスを感じる

06. Voodoo Child (Slight Return)

この曲は、静止画のパッチは無し!

しかし、
この狭いステージに、撮影スタッフが二人も上がっている!
これは… かなりうっとおしい!
演奏するジミ達も、迷惑だったと思われる…

07. Fire

ミッチのドラム・ソロを途中で遮るように(?)曲が始まる
アップ・テンポな曲に、客席も盛り上がっているが、
相変わらず、撮影スタッフ二人がジャマ!

残念ながら、
曲の半分ほどの後半部分(2分程度)は、ずっと静止画のまま…

08. Purple Haze

前の曲から静止画が前半2分間程続き、
途中からようやく映像が見れる
Star Spangled Bannerのフレーズは、歯弾き!
エンディング部分も、静止画のまま終了…

「Spanish Castle Magic」
「Lover Man」

「Message to Love」
3曲は、映像が全く残っていないらしい。

Late Show

Late Showでは、さらにリラックスした雰囲気で、
ジャム風の長尺なメドレーも増えている。

01. Dolly Dagger

曲の初めの30秒弱は、静止画のカットアップ
これはなかなか良い感じ。

Late Showでは、ギターをフライングVに持ち替えている。
静止画のパッチは無く、ほぼ完璧な映像。

02. Villanova Junction (~Ezy Rider)

「Dolly Dagger」からメドレーで、
インスト「Villanova Junction」へ。
この部分は、完全に映像が残っている。

続く「Ezy Rider」は、映画用に
ドラムをオーバー・ダブしたテイクのはずだか…
なぜか、イントロ部分とエンディングしか映像が無く
ほぼ全編静止画がパッチされている。
Blu-rayのメニューに「Ezy Rider」が含まれていないのは、
こういう不完全な状態だからだろうか?

エンディング部分は、ステージ脇の女性たちのダンスのみ。

肝心の演奏部分は、ほぼ全編静止画
(ミッチ・ミッチェルは、どうやってドラムをオーバー・ダブしたのだろうか?)

03. Red House

この曲も、静止画のパッチ無しの完全な映像
相変わらず、ステージ右脇で女性二人が、
宇宙を感じながら踊っている…

04. Freedom

ジミは、イントロのワンフレーズのみ弾いて、
チューニングに狂っていたのか、
少し照れながら、仕切り直している
この部分は、今回のCD音源だけで無く、
今まで、どのブート音源でもカットされている。

曲の後半、1分30秒程は映像無しで、
静止画のパッチが続く。

この曲に限らず、残されたステージ上の映像のほとんどが、
ステージ左側からのショットの為、
ステージ右側のビリー・コックスの登場シーンが少ない…
この曲では、女性ダンサー二人の横で上機嫌?

05. Stone Free

イントロ10秒が静止画
その後も、一分程度の静止画のパッチが入り、
後半はすべて静止画…

使われた動画は、
10秒から30秒程度の細切れな部分が3シーンのみ
合計で1分程度。
これは少々厳しい…

この曲では、
ギターをEarly Showと同じ白のストラトに持ち替えており、
この曲は、ステージ右側からのショットになっている。

残念ながらLate Show中盤の、
「Jam Back At The House」
「Straight Ahead」
「Hey Baby (New Rising Sun) / Midnight Lightning」

の部分は、映像が残っていないのか、カットされている

このオフィシャル編集映像がリリースされる以前に
海外のコレクターが、今回と同じ発想で、
「MAUI WOWEE – BOB TERRY TAPES」等の音源をペースに、
映画 “Rainbow Bridge” のDVDから抜き出した、
ジミの演奏部分の動画に、
不足部分をイメージフィルムをパッチするという方法で、
プライベート動画を制作
ネットにアップしていた。

その動画で確認したところ、
映画では「Hey Baby (New Rising Sun)」の映像が、
1分40秒程使用されていたようだ

今回この部分が未使用なのは、
どういう理由なのか…
CD音源同様、若干の不満が残る。

当時のステージでは、
ジミはセットリストをあらかじめ決めず、
阿吽の呼吸でステージでのパフォーマンスを進めていたという。

バンドとしてのまとまりは、
この時期のメンバーならではのものだけに、

この後のジミの突然の死が悔やまれる…

半世紀前のカルト・ムービーの為に記録された、
断片的な素材を駆使して編集した労作とも言える、
今回の映像。

現在の様に
大がかりな撮影機材で、完全にコンサートを記録し、
デジタルで編集して、手軽に映像ソフト化…

といった作品には無い、
掘り下げた楽しみ方が出来た様に思う。

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