フォーキー・ウッドストック・サウンド
“マッド・エイカーズ(Mud Acres)” Part.1
ベアズヴィル・レーベル以外の、
”フォーキーなウッドストック・サウンド”
というと、外せないのが、
“マッド・エイカーズ(Mud Acres)”
1972年に『Music Among Friends』
1977年に『Woodstock Mountains』
その後ウッドストック・マウンテン・レヴュー
(Woodstock Mountains Revue)と改名して
1978年に『Pretty Lucky』
1981年に『Back To Mud Acres』
4枚のアルバムを残しています。
中心となるメンバーは、
グリニッジ・ヴィレッジから
ウッドストックに移住した
兄弟フォーク・デュオ、
ハッピー&アーティ・トラウム
(Happy&Artie Traum)の二人。
ハッピー・トラウム(Happy Traum)
アーティ・トラウム(Artie Traum)
早くからウッドストックに住みついていた
元ニューヨークのブルーグラストリオ、
グリーブライア・ボーイズの
ジョン・ヘラルド(John Herald)
元ベアズヴィルスタジオ
のスタッフも勤め、
ボーダー・ラインのメンバーでもあり、
ブルーグラス、カントリー系のシンガー
ジム・ルーニー(Jim Rooney)
ジム・ルーニーと
キース&ルーニーという
ユニットを組んでいた
バンジョーの
ビル・キース(Bill Keith)
そこに、
エリック・カズ(Eric Justin Kaz)
マリア・マルダ-(Maria Muldaur)
エリック・アンダースン(Eric Andersen)
ジョン・セバスチャン(John Sebastian)
ポール・バターフィールド(Paul Butterfield)
と言ったゲストが加わった
アコースティック・ユニットといえます。
まずは、中心となるメンバーの紹介。
ハッピー&アーティ・トラウム(Happy&Artie Traum)
1969年のデュオ第一作
『Happy And Artie Traum』
ナッシュヴィルでの録音。
フォーク・ロックをベースに、
あまりカントリー寄りでは無く、
アメリカン・ルーツ・ミュージックや、
ブリティッシュ・トラッドの要素も
感じさせるアーシーな作品。
71年の『Double-Back』
大半がベアズヴィル・スタジオでの録音となり。
フォーク・ベースながら、
ザ・バンドにも通じる
ウッドストック産のロックが
出来上がっています。
75年の『Hard Times In The Country』
前2作が “名盤” として評価が高すぎて、
あまり話題にならない作品ですが、
前2作と比べて、
肩の力が抜けて楽しめる内容です。
個人的には、“名盤” という肩書抜きに好きなアルバム。
ジョン・ヘラルド(John Herald)
『John Herald』
1973年の作品。
ウッドストックでの録音では無いですが、
バックには、エイモス、マリアも参加。
ブルーグラスと言うよりフォーク・テイスト。
何より、独特の甲高いボーカルに好感が持てます。
いかにも東海岸のシンガーというイメージです。
ジム・ルーニー(Jim Rooney)
『One Day At A Time』
1975年のソロ・アルバム。
古くは ブルー・ベルベット・バンド
(Blue Velvet Band)、
マッド・エイカーズと、
ボーダーラインのメンバーでもあるシンガー。
A面はハーバードのコーヒーハウスでの録音。
B面はやはりマサチューセッツのスタジオ録音。
では、本題。まず第1作目。
Mud Acres
『Music Among Friends』
1972年1月15日、
トラウム兄弟(Happy Traum. Artie Traum)と、
ウッドストック在住のミュージシャン達、
ジム・ルーニー(Jim Rooney)
ジョン・ヘラルド(John Herald)
エリック・カズ(Eric Justin Kaz)
ビル・キース(Bill Keith)
トニー・ブラウン(Tony Brown)
マリア・マルダー(Maria Muldaur)
リー・バーク(Lee Berg)
は、それぞれ楽器を持参し、
4代の車に分乗して
ハドソン河上流のコロニーのスタジオへ。
気心の知れた仲間同士のパーティーのような
くつろいた雰囲気でセッションを行い、
このアルバムの録音を残しました。
フォーク・ブルーグラス・カントリー・
オールドタイムミュージック と言った要素が
力を抜いた状態でブレンドされており、
一般的に4作の中で最も評価が高い作品です。
実は… わたし個人的には、
典型的な(商業的な?)
ブルーグラスや、カントリー・ミュージックは、
少々苦手です。
予定調和と言うか、お行儀よく整っていると言うか…
保守的な雰囲気も含めて、
いわゆる “カレッジ・フォーク” と同じ匂いもして、
どうにもしっくりこない…
しかし、
今回のマッド・エイカーズの各メンバーは、
ブルーグラスやカントリーの、
ルーツ・ミュージックとしての本質を理解し、
演奏技術も充分体得した上で、
自分達なりに表現ができるキャリアを持った人達。
そういうプロフェッショナルな人達の、
商業的な “お仕事” としての場では無く、
プライベートでリラックスした環境での
演奏を記録したからこそ、
このアルバム独特の味わいが
生まれたのではないかと思う。
だから、当時わたしも自然になじむ事ができたのかもしれない。
この1枚目のアルバムでは、
ブルーグラス、カントリー、ヒルビリー、マウンテンミュージック、
いった要素が強めですが、
2枚目以降、加えて
フォーク、ロック、ブルース、ゴスペル、
といった雑多な要素も、
“ごった煮”的に取り込んでいます。
また、ベアズヴィル・レーベルの、
トッド・ラングレンにしても、
エイモス・ギャレットにしても、
ジェフ・マルダーにしても、
ザ・バンドのメンバーにしても、
多かれ少なかれ、そういう
“ごった煮” “チャンプルー” 感覚を
持っていたのではないかと思う。
日本の、久保田真琴や『大安洋行』の頃の細野晴臣、
90年代のソウル・フラワー・ユニオン等
とも通じる感覚かもしれない。
話が大幅にずれてしまいましたが…
今回、アルバムの全曲が、1曲ずつYouTubeにアップされていたので
以下にまとめてみました。
曲ごとのクレジットは、解る限りで入れましたが、
完璧では無いので… ご了承ください。
● Mud Acres 『Music Among Friends』(1972)
A-1. Cowpoke (by Gene Autry)
A-2. Done Laid Around (Traditional)
A-3. Darlin’ Corey Is Gone (Traditional)
A-4. Titanic (by Leadbelly)
A-5. Give Me Back My Fifteen Cents (by Jimmie Rodgers)
A-6. Out Of Joint (by Bill Keith)
A-7. Jackhammer Blues (by Woody Guthrie)
A-8. Oh, The Rain (by Blind Willie Johnson adapted by Maria Muldaur)
B-1. Hobo Blues (by Link Davis)
B-2. Off To Sea Once More (by Ewan MacColl)
B-3. Fifteen Miles To Birmingham (by Delmore Brothers)
B-4. Lonesome Pines (by Wayne Raney)
B-5. Prison Wall Blues (by Gus Cannon adapted by John Herald)
B-6. Parting Friends (Traditional Arr. by Lee Berg)
B-7. Mud Acres (by Artie Traum)
A-1 Cowpoke (by Gene Autry)
Vocals. Guitar : Eric Justin Kaz
Banjo : Happy Traum
Guitar : Artie Traum
Backing Vocals : Lee Berg. Maria Muldaur
A2 Done Laid Around (Traditional)
Vocals. Guitar : Jim Rooney
Banjo : Bill Keith
Bass : Tony Brown
Harmony Vocals. Guitar : Happy Traum
A3 Darlin’ Corey Is Gone (Traditional)
Vocals : Jim Rooney
Banjo : Bill Keith
Bass : Artie Traum
Blues Harp : Eric Justin Kaz
Harmony Vocals : Maria Muldaur
A4 Titanic (by Leadbelly)
Lead Vocals, Guitar : Happy Traum
Backing Vocals. Guitar : Artie Traum
Backing Vocals. Bass : Bill Keith
Backing Vocals. Piano : Eric Justin Kaz
A5 Give Me Back My Fifteen Cents (by Jimmie Rodgers)
Vocals, Guitar : John Herald
Guitar. Vocals : Bill Keith
Guitar. Vocals : Eric Justin Kaz
Melodica : Happy Traum
Bass, Vocals : Tony Brown
A6 Out Of Joint (by Bill Keith)
Banjo : Bill Keith
Guitar : Jim Rooney
Bass : Tony Brown
A7 Jackhammer Blues (by Woody Guthrie)
Vocals, Guitar : Happy & Artie Traum
Bass : Tony Brown
Blues Harp : Eric Justin Kaz
A8 Oh, The Rain (by Blind Willie Johnson adapted by Maria Muldaur)
Lead Vocals. Guitar : Maria Muldaur
Guitar. Vocals – Artie Traum
Bass. Vocals – Happy Traum
Blues Harp. Vocals – Eric Justin Kaz
Harmony Vocals – Lee Berg
B1 Hobo Blues (by Link Davis)
Vocals : Artie Traum. Lee Berg
Guitar : Artie Traum
Banjo : Happy Traum
Bass : Bill Keith
Blues Harp : Eric Justin Kaz
Fiddle : Maria Muldaur
B2 Off To Sea Once More (by Ewan MacColl)
Vocals, Guitar. Melodica : Happy Traum
Banjo : Artie Traum
Steel Guitar : Bill Keith
B3 Fifteen Miles To Birmingham (by Delmore Brothers)
Lead Vocals. Guitar : Artie Traum
Harmony Vocals. Guitar : Happy Traum. John Herald
Blues Harp : Eric Justin Kaz
B4 Lonesome Pines (by Wayne Raney)
Lead Vocals. Guitar : Artie Traum
Guitar : Happy Traum
Bass : Bill Keith
Blues Harp : Eric Justin Kaz
Harmony Vocals : Jim Rooney. John Herald. Lee Berg. Maria Muldaur
B5 Prison Wall Blues (by Gus Cannon adapted by John Herald)
Vocals. Guitar : John Herald
Banjo : Bill Keith
Fiddle : Maria Muldaur
Bass : Tony Brown
Piano : Eric Justin Kaz
Washboard : Happy Traum
B6 Parting Friends (Traditional Arr. by Lee Berg)
Vocals : Lee Berg
B7 Mud Acres (by Artie Traum)
Banjo : Artie Traum. Bill Keith
続く…