永遠の桃源郷・九鬼谷温泉 – 『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の四・1982年 )
1982年 掲載作品
第129話~第176話 全48話 (10月に2週、産休の為休載)
単行本(マンサンコミックス)の第14巻の5話目から第19巻の7話目まで。
この年、艶笑騒動譚の舞台には、新たな登場人物達が大量に参入。
さらに、第156話『風鈴』、 第157話『屋上の凡人』、 第169話『穴』、 第174話『温泉子守唄』と言った、“艶笑騒動譚の枠に収まりきらない名作”が数多く発表された。
1979年発表の作品30話は、『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の一・1979年 )
1980年発表の作品50話は、『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の二・1980年 )
1981年発表の作品48話は、『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の三・1981年 )
今回も、下の様なフォーマットで各話を紹介する。
第〇〇話 『各話・タイトル』
週刊漫画サンデー 1981年 〇月 〇日号掲載
マンサンコミックス〇巻 第〇話 ( 筑摩コミック文庫〇巻 第〇話 )
扉絵左枠のオリジナル・キャチコピー
● 初登場 (或いは主要) 登場人物 – 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
● 初登場 (或いは主要) 登場人物 – 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇 ーー(コメント)ーー 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇。
第129話 『ゆく年くる年』
週刊漫画サンデー 1982年 1月5/12日号掲載
マンサンコミックス 14巻 第5話

ゆく年、81年。くる年、82年。歳末から新年へ、あわただしくおめでたい九鬼谷の若い仲間たち!!
連載開始から3年目、良太達の年末年始が描かれる。ケンカしながらも相変わらず、つかず離れずの良太と月子。年末に月子の部屋に夜這いをかけた良太は、不覚にも朝まで爆睡…!?
初詣で二人と出会った春助は…
「おめでとうというか おめでたいというか…」
第130話 『湯の花』
週刊漫画サンデー 1982年 1月19日号掲載
マンサンコミックス 14巻 第6話

良太の兄、元太が東京から帰ってきた。新幹線の車中となりの席にすわった女の子をつれて!!
● 京子 – 築地の料亭の娘。
良太の兄・元太がまんだら屋に帰省。今回は新幹線で知り合った、逃避行中の京子を連れて… 母の決めた婚約者から逃げてきた京子だったが…
置手紙を残して姿を消した京子は、第132話『有田あたり』で再登場する。
第131話 『作家とその弟子』
週刊漫画サンデー 1982年 1月26日号掲載
マンサンコミックス 14巻 第7話

まんだら屋のおかみさんの弟が、九鬼谷へ帰ってきた。売れない小説家だが、態度だけは文豪なみ…
● 大山太 – 良太の叔父、ヨネの弟。46歳の売れない私小説家。
● 井上 – 太の弟子。太より才能有り。
売れない私小説家で良太の叔父・大山太(ペンネームは大山周蔵) が、弟子の井上を連れてまんだら屋に帰省。うだつの上がらない師匠の太と、文学賞候補の弟子の井上…
良太の叔父で売れない私小説家・大山太が初登場。
第132話 『有田あたり』
週刊漫画サンデー 1982年 2月 2日号掲載
マンサンコミックス 14巻 第8話

兄の元太から電話でよびつけられた良太。京子を救おうと、陶器の町・有田へかけつけひと騒動!!
● 泉 – フリーの陶芸家。綾子に片思い。
● 綾子 – 窯元 “宝山” に務めるミキの母親。
京子から連絡を受け有田に向かった兄・元太を追って、良太も陶磁器の町・有田へ。元太と京子に赤ん坊のミキを預けて、綾子は逃げた男を追って博多へ向う。綾子が戻るのを待つ元太達と泉先生…
良太に渡した “お守り” を取り返しに、月子と百合奴も有田へ…
第133話 『醜女(ブス)』
週刊漫画サンデー 1982年 2月 9日号掲載
マンサンコミックス 14巻 第9話

つきあっている男から、ブスといわれてショックの里見。顔はブスでも、心意気はブスじゃない……
● 里美 – 良太や月子の九鬼谷での幼馴染。醜女(ブス)。
● 鬼ガワラ(鬼やん) – 九鬼谷の青年団の厄介者。
● アゴさん – 九鬼谷の写真館の息子。
今回は、これまで九鬼谷通信社等に、脇役として登場していた里美が主人公。敬子にフラれたアゴさんは、鬼やん達の提案した “賭け” に、いきがってのってしまう。勢いでたきつけた良太は、里見を傷つけまいと火消しにはしるが…
九鬼谷の青年団の鬼ガワラ(鬼やん)とアゴさんが初登場。
第134話 『落花生』
週刊漫画サンデー 1982年 2月16日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第1話

九鬼谷芸者衆の人気者、たいこもちのラッカさん。陽気でおかしな芸のウラに、隠れた素顔が……
● ラッカさん – 三枚目を演じ抜く太鼓持ち。
● 小春 – “ひさや” の芸者。ラッカさんの “手品” で救われる。
週刊誌のスキャンダル報道でこじれた英一と百合奴の仲。10年前と同様にラッカさんに甘える “成長しない” 百合奴と、密かに百合奴に思いを寄せながら、私生活でも三枚目を演じとおす “神さまみたいな人” ラッカさん…
ピーナッツ頭の太鼓持ち・ラッカさんが初登場。
第135話 『人形』
週刊漫画サンデー 1982年 2月23日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第2話

新体操の特訓をうける舞。先生のいいなりになっている“人形”のような自分がいやになって……。
● 渡辺舞 – 小倉城南高校・新体操部のエース。
● 岡田先生 – 新体操部の顧問。
● 佐野 – 舞の恋人。ストイックなスポーツマシン。
● 小松先生 – バレーボール部の顧問。
岡田先生の “自分の夢” の為に、ストイックな生活を強要される舞。佐野と関係を持ったことで一皮むけるが “先生のお人形” でいることに嫌気がさす。
新体操も佐野も捨てて “私” になる舞…
舞 :「思いっきり好きなことするつもりです」
良太 :「好きなことちゅうてオ××か? オ××のことやろ おまえわりとゆうのお」
すかさず月子の張り手が飛ぶのは、いつものルーティン…
第136話 『匕首(ドス)』
週刊漫画サンデー 1982年 3月 2日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第3話

見なれぬ若いヤクザが無銭飲食。またもや小倉の街に血の雨か? お役者晴司、ひさびさの登場!!
● 黒田竜 – 解散した黒田組組長の息子。
● 日和 – 九鬼谷を狙う日和組組長。
● 田成 – 日和組の盆の出方(進行係)。
● フランソワ – 境町のクラブホステス。
何かと敵の多いお役者晴司。 仲良会系鬼頭組の鉄砲玉の襲撃からも、日和の刺客・フランソワの罠からも、晴司を守ったのは “関門の竜” こと黒田竜。しかし、竜が晴司に近づいた訳は… 晴司から受けた足の傷がもとで亡くなった父・黒田組組長と解散した組の仇を撃つため。 かつて、些細なトラブルを抑える為に、やむなく竜の父の足に突き立てた匕首(ドス)を、息子の竜から自らの足に受け止める晴司。
例によって晴司は、自分の血を見て見得を切ったまま気絶…
第137話 『ボッキ盛り』
週刊漫画サンデー 1982年 3月 9日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第4話

新しくまんだら屋にきた、板前の一夫。男っぷりがよくて女にモテモテ。良太はおもしろくない……。
● 一夫 – まんだら屋の新しい板前。
● 精四郎 – コメディアン志望。ゲンや良太とは幼馴染。
● 美津子 – 精四郎の彼女。
名門料亭 “羽衣” を出て、まんだら屋にやってきた板前の一夫。料理の腕も一流、容姿端麗で九鬼谷女子一同の注目の的だが、実は表に出せない秘密が… 一方、コメディアン志望の精四郎は、美津子を九鬼谷に残して東京を目指す。春、それぞれの再出発の物語。
今回、直美、麗子、里見、それぞれの苗字か再設定されている。
直美=北山直美。 麗子=松野麗子。 里美=小林里美。
第138話 『金太郎』
週刊漫画サンデー 1982年 3月16日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第5話

白い肌にうかぶ、背中のイレズミ。流れ流れて九鬼谷へ帰ってきた芸者、金太郎姐さんの親子慕情!!
● 金太郎 – 春から中学に上がる小学生。
● 金太郎姐さん – 金太郎のイレズミを背負った訳あり芸者。
● 澄江 – 金太郎姐さんの妹。手荷物預り所を営む。
● 真吾 – 澄江の再会した同級生。実は般若のジロの手下。
良太をアニキと慕う金太郎は、妙に大人びたかわいくない小学生。3年ぶりに九鬼谷へ戻ってきた金太郎の叔母(?)で、名付け親の金太郎姐さん。妹の澄江の浮気相手・慎吾の素性を知って…
九鬼谷の悪ガキどもの親分、子供版良太・金太郎が初登場。
第139話 『良太と月子』
週刊漫画サンデー 1982年 3月23日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第6話

ささいなことから、良太の母と月子の父がなかたがい。ロミオ・良太とジュリエット月子の悲喜劇。
● 豊福寺和尚 – 豊福寺のなまぐさ坊主。
良太の “電気アンマ” が原因で、まんだら屋のヨネと夕月荘の松之助が全面戦争!? 豊福寺の和尚から父・松之助と良太の母・ヨネの過去の結婚騒動を聞かされ、ショックで寝込んだ月子… 窓越しに、珍しく優しく穏やかに月子に語り掛ける良太。
「おいちゃんも かあちゃんも みんな なにものにもかえられん青春時代があったんやろの…」
一方、月子も夢でうなされ (夢の内容はともかく…) 良太の名を口走る…
良太と月子。ヨネと松之助。親子二代で絶妙に絡み合う。
第140話 『窓』
週刊漫画サンデー 1982年 3月30日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第7話
観光案内所の窓口係、幸男。いつも弱気でおとなしい彼が、ふとしたことから旅行者に恋をして……。
● 幸男 – 観光案内所の従業員。
● 坂本志保 – 観光案内所社長。 坂本哲郎の姉。
● 増田ルミ子 – 自殺した哲郎の恋人。
角山ホテルの若社長との結婚を決めた志保。志保に思いを寄せながら、自ら作った “窓” の内側で “案内係” を演じ続ける幸男。一方、自殺した志保の弟・哲郎を訪ねてやってきたルミ子は、亡き恋人にも九鬼谷にもはっきりと向き合う為、観光案内所に職を求める。
ルミ子に案内所の “窓” を開けた幸男に、良太は無言で用済みになった求人の張り紙を渡して立ち去る…
第141話 『お盛んクラブ』
週刊漫画サンデー 1982年 4月 6日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第8話
「お盛んクラブ」のとんでる老人たちが、九鬼谷にやってきた。良太もビックリのご乱行で大騒ぎ!!
● 万吉 – “お盛んクラブ” のリーダー。
● お玉 – 万吉の婚約者。
● 花子 – 亡くなった “お盛んクラブ” のメンバー。
● 木下栄助 – 花子の息子。木下工業所社長。
● 恵子 – 万吉の息子の嫁。
亡くなった花子の供養の為に、夕月荘に宿をとった “お盛んクラブ” のジイサン、バアサン達。母・花子のわずかな遺産を目当てにやってきた息子の英助。親不孝息子に “天誅” を下したのは…?? お面の下のホッペタですぐにわかる “計算のヘタな若者”。
「ジージー バーバー ジーバーバー」今回は、奔放でパワフルなご老人達が主役。
第142話 『求道』
週刊漫画サンデー 1982年 4月13日号掲載
マンサンコミックス 15巻 第9話
小説のために生活を破滅させてゆく作家の結末は……。文学とはなにかを問う、香り高い芸術編!!
● 鶴見狂次郎 – 俗世を捨てた私小説家。
● 狂次郎の妻 – 狂ってしまっているが、狂次郎と共に天真爛漫に生きる。
暇を持て余し(?)実家のまんだら屋に戻ってきた太(周蔵)が出会ったのは、“世捨て人” 鶴見狂次郎とその妻。
月子と太(周蔵)の私小説論議が繰り広げられるが、それを軽々と論破する良太のリアリズム…
「物書きを支えとるんは、大根のところは認められたいちゅうスケベ根性やないんか。自己顕示欲やないんか。」
鶴見狂次郎の “生活演技説” につてい論じる月子と太(周蔵)に対しても、良太は…
第143話 『一年生』
週刊漫画サンデー 1982年 4月20日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第1話

新人の仲居さんがまんだら屋にやってきた。新入生の子どもをつれて。あっちもこっちも一年生……。
● 木下朝子 – 東京の生活を捨てまんだら屋で再出発を図る仲居。
● 木下美彦 – 朝子の小学一年生の息子。
● 日ノ本正義 – 夕月荘に下宿することになった新任小学校教諭。
東京・中野の店を引き払い、太を頼ってまんだら屋にやってきた仲居一年生の朝子と、ひねくれた小学一年生の息子・美彦。 一方、翼と初めてのくちづけを交わしたネズミだが… ともにジャマ者扱いされたネズミと美彦は、散り積もった桜の花びらに八つ当たり。
10年前、一年生の頃を思い出した良太と月子も…
新任・一年生教諭、日ノ本正義が初登場。
第144話 『あいうえお月さま』
週刊漫画サンデー 1982年 4月27日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第2話
月子の家に下宿している小学校の先生、日ノ本正義。若くてハンサムな魅力に良太が嫉妬して……。
新任教諭日ノ本正義は、「あいうえお」から一年生を教育するため、月子と良太と共に積み木作りに… 軍歌が聞こえてきそうな正義の作品。保育園向き(?)の月子の作品。ひたすらお下劣(九鬼谷の土地柄を反映?)な良太の作品…
今回は「あいうえお」をネタにした言葉遊びが満載…
良太版「あいうえお」(か行以下…)
ちなみに、シメは…
第145話 『番外地』
週刊漫画サンデー 1982年 5月 4日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第3話

トンネルをぬけると、そこは九鬼谷番外地。鬼太郎とお役者晴司、アウトローを生きる男の美学!!
● 鬼太郎 – アナーキスト集団 “太陽の鞭” の元リーダー。
● ごんジイ – 九鬼谷番外地の仕切り役。
● 片倉健 – 晴司がごんジイから託された厄介者。
● 旗野順(水沼三平) – 鬼太郎の兄がさし向けたスパイ。
● 鬼太郎の女 – 自殺した疑獄事件の重要参考人の元秘書。
ついに九鬼谷のタブー、異界・番外地が初登場! トンネルで隔離され、普通の人間は出入りさえできない (晴司と良太は例外?!) その地は、はみ出し者達の吹き溜まり或いは楽天地。とある財団の後継者の双子の弟で、アナーキストの鬼太郎は、自らの目指した新たな秩序にさえ息苦しさを覚える。
社会からも異界からも、惚れた女との逃避行を図る鬼太郎… もちろん、助太刀するのはお役者晴司!
九鬼谷番外地の顔役・ごんジイと、鬼太郎が初登場。
第146話 『初めて物語』
週刊漫画サンデー 1982年 5月11/18日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第4話
空を泳ぐ鯉のぼりのように、スケールの大きな少年、金太郎。思わぬことから、女性を初体験……。
● 聡子 – 金太郎の同級生。
中学に上がった金太郎。良太は金太郎の初体験の相手を探すが…
同級生の悪ガキどもから乱暴されかけた聡子が、金太郎を頼ってまんだら屋にやってきた。直美との堂々たる初体験を (良太のフトンで…) 終えた金太郎と聡子は…
今回は、良太の弟分・金太郎の “初めて物語”。
第147話 『湯煙五人男』
週刊漫画サンデー 1982年 5月25日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第5話
歌舞伎の名作「白波五人男」を公演することになった。ところが、本物の盗賊があらわれて大騒動…。
● 大川佳乃 – 大川呉服店の未亡人。
月子の脚本で、源泉館での上演が決まった “白浪五人男”。 当初の配役は、「日本駄右衛門」お役者晴司、「弁天小僧菊之助」猫柳菊之助、「忠信利平」ハッパ目署長、「赤星十三郎」テッペン・熊五郎、「南郷力丸」こけし堂・桜木春助。そして…“黒子” 大山良太。しかし、初演の三日前に菊之助がリタイア…
中年達が入れあげる、衣装を担当する大川呉服店の未亡人・佳乃。 菊之助の代役として推された月子に、弁天小僧の着付けを行う志乃のもとに、本物の五人の盗賊 (強盗) が…
良太に弱みを握られた月子は弁天小僧役を辞退。結局、初日の配役は…
久美子 :「完全にミスキャストやね」
月子 :「知らんもん 私 」
第148話 『温泉育ち』
週刊漫画サンデー 1982年 6月 1日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第6話良太が恋をした。月子以外の女に、恋をした。本気でほれてしまった良太の、せつない胸のうち…。
● 操 – 菊水館の娘。
● 宮本 – 九鬼谷役場の観光課職員。
お嬢さん育ちながら “デタラメ” な操は “温泉育ち” を嫌悪し、何人もの男を “天国に行こう 遠くに行こう” と誘い、心中未遂を繰り返す。 月子と宮本に嫉妬し操と浮気した良太は、いつの間にか本気に…
傷心の良太と月子の仲を、やや強引な方法で取り持ったのは久美子…
久美子 :「あとはどうにでもなれ クソッ」
この回のオープニングの良太と月子のやり取りは、1989年のOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)『九鬼谷温泉艶笑騒動譚 まんだら屋の良太』(制作:砂工房)の、オーブニングシーンに転用されている。
第149話 『明暗』
週刊漫画サンデー 1982年 6月 8日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第7話
みやげ物屋の「河津屋」。面うち職人の老人とその息子夫婦、三者三様の欲がむきだす人間ドラマ!!
● 河津の大ダンナ – 隠居した雪絵の義理の父 (翁面・白式尉)
● 河津雪絵 – 河津堂の嫁。取締役社長。(更女面・曲見)
● 河津精四郎 – 雪絵の病弱な放蕩夫。大ダンナの息子。(痩男面・河津)
● 河津孫次郎 – 雪絵の息子。大ダンナの孫。(男面・喝食)
● 飛出 – 河津堂の取引業者。(男面・大飛出)
● 阿久井 – 夜叉ヶ谷のヒノキ林の山守。(鬼面・大悪尉)
● 深井 – 河津堂の従業員。(更女面・深井)
みやげ物屋 “河津堂” の美術商としての再建をもくろむ雪絵。義理の父、病弱な夫、翻弄される取引先、見下される山守… 周囲の者は皆雪絵を疎ましく思う。そんな折、文字通り能舞台の上での事件が、物語の “明暗” を反転させる。
今回の登場人物は、良太以外すべて能面で描かれるという異色作。
第150話 『さまざまな青春』
週刊漫画サンデー 1982年 6月15日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第8話
ボディービル、オートバイ、陸上競技……それぞれに青春をたくましく生きようとする、若い力!!
● 森山先生 – 正義の同僚の小学校女性教諭。
● 教頭 – 森山先生と正義が勤務する小学校の女性教頭。
● 信一(新一) – 香澄に一方的に思いを寄せる。
ボディービルに打ち込むヒカルとその先生。北九州大会に向けて陸上競技の指導に燃える正義と、足首をネンザした月子。女同士の危ない関係の森山先生と教頭。平尾台からバイクで香澄を迎えに来た信一… それぞれのカップル(?)の、初夏の艶笑騒動譚。
良太 :「さあ 若いもんのすることやけ わからんね」
第93話『石の群れ』(1981年4月7日)、第94話 『春、かすみ』(1981年4月14日)で初登場した “新一” は、今回は “信一” として再登場。
第151話 『九鬼谷人』
週刊漫画サンデー 1982年 6月22日号掲載
マンサンコミックス 16巻 第9話
ヘンな中年男が、九鬼谷へやってきた。民俗学者で、九鬼谷の雨ごいの行事を調査するという……。
● 川口正人 – 良太の叔父・太(周蔵)の友人。文化人類学者。
川口がまんだら屋にやってきた目的は、九鬼谷に伝わる雨ごい “九鬼谷楽” の学術調査。 良太は “九鬼谷楽” を再現する為に儀式の使者を集めるが… 良太が段取りした生贄 “神が好む貴婦人” は?
川口がまとめる学術書のタイトルは、井上ひさしの “吉里吉里人” ならぬ “九鬼谷人”。
第152話 『人妻』
週刊漫画サンデー 1982年 6月29日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第1話
九鬼谷へ離婚旅行にやってきた奇妙な夫婦。百合奴と英一の仲も不穏。悩めるふたりの人妻は……
● 花岡夫妻 – “離婚旅行” でまんだら屋にやってきた夫婦。
妻・ゆう子の過去の事件と、夫・花岡の浮気… 夫婦の亀裂を乗り越えられずにいる二人。 一方、些細な事で大喧嘩になった百合奴と栄一。 宿に一人残されたゆう子と “九鬼谷のコールボーイ ギンマラの良ちゃん” こと良太。家を飛び出した百合奴と、妻を置いて一人飲みに出た花岡。それぞれが絡み合い…
夫婦の亀裂に修復の兆しを与えたのは、栄一と百合奴の(まんだら屋での)とどめの大喧嘩?
第153話 『テッペン狂騒曲』
週刊漫画サンデー 1982年 7月 6日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第2話テッペン観光の社長、クマゴローが結婚を決意した。まんだら屋で見合いをすることになって……。
● 美鈴 – “見晴らし山荘” 内の美鈴美容院女店主。
● 沢子 – 熊五郎の見合い相手。
祖母のたっての願いでまんだら屋で見合いをすることになった熊五郎。なぜか見合い相手の沢子に気に入られ、めでたく(?)入籍。そして… 速攻の離婚!
テッペン・クマゴローの傷心を癒すのは、昔なじみの “ブス髪切り” 美鈴…
『クマゴローの性春』(1979年 1月) では、熊五郎の母は小倉で店を経営しており、同居しているのは祖母・お春という設定だったが、今回は年老いた母との同居という設定に変更されている。
第154話 『良太の生きかた』
週刊漫画サンデー 1982年 7月13日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第3話「九鬼谷通信」で良太を取材することになった。ゲンがカメラで、月子が文章で、良太を追う……。
● 聖 – 売春婦に身を落とした都貴金属店の娘。
九鬼谷通信の新企画 “九鬼谷人”の初回の主役は良太。予定タイトルは「知性の勝利 大山良太の場合」「湯の町の哲人 良太の世界」?? (しかし、月子の初稿のタイトルは「愚か者の末路 大山良太の生きかた」…) 取材を意識して人格が変わる良太だったが、別世界に転落した聖と再会し、良太のハンパな頭が結論を出す。
最終タイトルは、月子の “理解と愛に裏うちされた(?)”「ハンパ者の美学 良太の生きかた」!!
第128話『オ〇コ売りの少女』(1981年12月)で登場した聖が再登場。
第155話 『宮川再生堂』
週刊漫画サンデー 1982年 7月20日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第4話九鬼谷に新開店した、漢方薬の店「宮川再生堂」。お役者晴司のインポを治して、たちまち大評判!!
● 宮川タケシ – “宮川再生堂” 店主。元まんだら屋のボイラー係。
● 宮川染子 – タケシの妻。元まんだら屋の仲居。
● 鎌田象一郎 – Q大学長、医学部部長。
シリーズ第1話から登場し、紆余曲折を経て九鬼谷に舞い戻った宮川タケシ・染子夫婦。心を入れ替え(?)鍼灸師として修業したタケシは、めでたく漢方薬の店 “宮川再生堂” をオープン。得意分野は下半身…?? 不能になった晴司と鎌田に処方した再生堂オリジナルの漢方薬 “再生丸” が、予想外の効果をあげて…
香具師まがいの漢方医・タケシは、なんと… Q大の講師に!?
第156話 『風鈴』
週刊漫画サンデー 1982年 7月27日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第5話ヒッチハイクで旅する男と堕胎したばかりの女。風が吹くままに揺れる、風鈴のようなふたり……。
● 風巻 – 離婚し失業中の旅行者。
● 太郎 – 造り酒屋兼民宿の息子。
● 涼子 – 九鬼谷で子供を堕した女。
● 風鈴 – 軒下でじっと風を待つ…
受け身で嫁を待つだけの太郎。風まかせの旅人・風巻。男しだいの日陰の女・涼子。それぞれ主体性のない “風鈴” の様な三人。しかし、太郎と涼子の間にはささやかな変化が… 二人には不要となった “風鈴” を軒先から外し、宿を去る風巻…
今回の主役は、鳴り方も風しだいの “風鈴” 。
良太をはじめ月子や久美子は、全く言葉を発せず物語の背景として描かれ、その静寂の中での風鈴の音を際立たせる役割を演じる。
第157話 『屋上の凡人』
週刊漫画サンデー 1982年 8月 3日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第6話
デパートの屋上で、ゲームセンターの管理をする男。その平凡な日常をとつぜん乱した事件とは?
● 鈴木力 – デパートの屋上遊園の主任。
● 青木美沙 – 自殺を図った良太たちの同級生。
● エリカ – 力の生き別れた娘。
過去にはサーカスの花形、今は胃袋を満たすだけの “凡人” の力は、“サーカスのにおいがする“ デパートの屋上で働きながら、生き別れた娘との出会い待つ。そんな力の前に現れたのは、自殺を図ろうとする女子高生・美沙…
平々凡々な人生を過ごした“凡人”は、ささやかな運命の巡り合わせに翻弄され、さびしく小倉の街から消える…
今回も良太達は小倉の街の背景の一部として描かれている。
第158話 『向日葵』
週刊漫画サンデー 1982年 8月10日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第7話夕月荘に泊まりこんで絵の制作をつづける、ふたりの新進画家。友情が嫉妬にかわってひと騒動…。
● 日向史郎 – 津田とは長年の付き合いになる画家。
● 津田 – 天才肌の抽象画家。
● マリ – 日向の恋人。
夏の夕月荘に創作活動にやってきたタイプの違う二人の画家、日向と津田。日本の画壇への反逆者という立場から、ニューヨークで勝利者へ転身しようとする自分自身に迷いを覚える津田。地道で正統派の日向の作品に嫉妬し、5年前までの恋人・マリを向日葵畑で…
第80話『母』(1980年12月30日号)で、まんだら屋の仲居・明子の息子として登場していた修が、さりげなく登場している。
第159話 『光の中へ』
週刊漫画サンデー 1982年 8月17日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第8話

男との同棲生活がうまくいかず、イライラしている若い女。良太と月子が暗い生活から彼女を救う!!
● 服部知佳 – 九鬼谷・服部旅館のひとり娘。
● 和彦 – 元服部旅館の使用人。
駆け落ち同然に九鬼谷を出て小倉で暮らす知佳は、同棲する和彦との子供を宿す。和彦が作った借金のカタに、仲良会系のゴロツキ・エロジュンに妊婦マニアに売り飛ばされる知佳。その変態妊婦マニアと言うのは、実は…
知佳と和彦は、生まれてくる子供と共に九鬼谷でもう一度やり直すことになる。
第39話『クズ鉄』(1980年 3月 4日号)で登場した、九州の首領の孫娘・美紗子と、そのお目付け役・岩本が再登場。
第160話 『夏盛り』
週刊漫画サンデー 1982年 8月24日号掲載
マンサンコミックス 17巻 第9話お中元、暑中お見舞、ホタル狩り……夏まっ盛りの九鬼谷温泉。良太と月子も夏休みのまっただなか!!
夏休み真っ只中。豊福寺で行われる肝試しに参加する良太達。月子は気絶し、百合奴は暴漢に襲われ足を負傷… 「なんぎやなあ~」… 二人をおぶる良太の手は…
百合奴 : 「手はダメよ手は!」
月子 : 「手!手!手!!」
後日月子から良太に届いた暑中見舞いは…
第161話 『歩行者天国(ほこてん)』
週刊漫画サンデー 1982年 8月31日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第1話九鬼谷に現れた、ギンギラギンのロックンローラー。久美子がリーダーの男を好きになって……。
● ジミー – ロックンローラー・グループのメンバー。
● マーロン(岩村茂樹) – Y学園の3年生。グループのリーダー。
● コニー(永井清美) – 三郎丸女学院の3年生。短大に推薦入学が決まっている。
● 馬場 – 三郎丸女学院の生活指導教師。
原宿の歩行者天国(ホコテン)を目指すマーロン(岩村茂樹)とコニー(永井清美)達が、小倉の魚町を追い出され九鬼谷にやってきた。テツが旅行中なのを良い事に、久美子はメンバーのジミーに急接近!
久美子の同級生・コニーは、マーロンと二人で泊まった夕月荘で出会ってしまった母校の生活指導教師・馬場に弱みを握られ…
今回は、“ホコテン” と言ういかにも80年代前半らしいネタを取り扱った作品。
第162話 『うつむき少女』
週刊漫画サンデー 1982年 9月 7日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第2話
九鬼谷の別荘に避暑にきていた、陰気で暗い性格の少女。村の悪ガキたちにいたずらそれて……
● 正一 – 九鬼谷の悪ガキ。
● 真紀 – 九鬼谷の別荘に家族とやってきた “うつむき少女”。
母・あきこと部下の安川の不倫を知りながらも、“うつむいたまま” の真紀。一郎達に襲われた真紀を助けた 正一は、真紀の嘘のせいで一人で罪をかぶることになる。良くも悪くも “良太を小さくしたような” 九鬼谷の悪ガキとの出会いが、“自分の影だけが友だち” だった真紀の心を少しだけ開かせる…
金太郎は大人びた眼差しで正一たちを見守る… 悪ガキのひとり信介はハッパ目署長の息子と言う設定。
第163話 『男女学生交際』
週刊漫画サンデー 1982年 9月14日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第3話夏休みも終わりかけたある日、九鬼谷へ心中にきた高校生の男女。良太と月子がまきこまれて……。
● 谷口薫 – 月子の文芸部の後輩。
● 川上 – コーラス部の2年の男子学生。
夏休みも終盤。ひとりマッタリと湯につかる良太。旅行から戻ったテツは久美子を訪ねて九鬼谷へ。結婚に反対され心中を図る薫と川上のカップルも夕月荘へ… ふたりの “純愛” に辟易する良太が入れ替えた “薬” は、二人に九鬼谷流リアリズムを体現させることに…
饅頭屋・貴多本の久美子の母が初登場。
第164話 『残り火』
週刊漫画サンデー 1982年 9月21日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第4話
台風が吹き荒れる夕方、郵便局に強盗が押しいった。局員のオバサンが包丁をつきつけられて……。
● 山口 – 郵便局員の未亡人。
● 逃げて来た男 – 指名手配中の強盗殺人犯。
九鬼谷の村はずれに一人暮らす未亡人・山口と、台風の中やってきた逃亡中のサラ金強盗犯の男。吹き荒れる台風に封じ込められた様な身の上の男と女…
再び燃え始めた “残り火” も、無常に降り続く大雨の中で…
第165話 『夢幻行』
週刊漫画サンデー 1982年 9月28日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第5話
仕事が生甲斐の社長、突然引退させられて、どうしたものかと思案橋。そんな社長に女が……
● 大吉 – 陶芸商社 “のり吉” 社長。
● 吉太郎 – “のり吉” 重役。大吉の長男。
● 吉次郎 – “のり吉” 重役。大吉の次男。
● 川島奈津美 – 吉次郎が父を陥れようと手配した女。
まんだら屋に泊まる “のり吉” の社長・大吉は、二年間の病気療養を理由に息子達に会長職へ退かされる。ボルネオの戦地で亡き両親に手招きされる “悪夢” を見続ける大吉は、偶然(?)出逢った奈津美に癒される…
今回も、息子達に追いやられる老人が描かれるが… 自らの死を見据えながら奈津美に赤ん坊の様に癒された大吉は、新たな夢の中で幸福な死に顔を残す…
第166話 『幸福』
週刊漫画サンデー 1982年10月 5日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第6話
お役者晴司の命を狙う殺し屋が現れた。ところがふたりは昔なじみ。運命の糸がもつれもつれて……。
● 村松我視 (村松友視?) – 晴司の昔馴染。
● 吉行のオジキ (吉行淳之介?) – 岡山の吉行組組長。
出て行った “過激屋(?)の女房” マユミの帰りを待つ我視は、晴司の命の代償で骨董品屋 “時代屋” 開業を目論む。晴司の客人・吉行のオジキを狙って九鬼谷にやってきた仲良会の “乱入” を蹴散らし、幸福橋の上で晴司との決闘に臨む我視。そこに “銀色の雨傘” をさしたマユミが6日ぶりに戻って来る…
明らかに村松友視と吉行淳之介がモデルと思われる二人を交え、この年第87回直木賞を受賞した村松友視の小説『時代屋の女房』ネタとプロレスネタを散りばめた迷作…
例によって晴司の “自分の血を見て失神” ルーティンは今回も…
良太 : 「なんぼ自分の血に弱いちゅうても蚊をつぶして気絶するかねえ」
週刊漫画サンデー 1982年10月12日号 産休の為休載
『ミミズク通信(旧作再掲載)』(初出誌 : “宝島” 1978年1月)
週刊漫画サンデー 1982年10月19日号 産休の為休載
『木菟森芸人村(旧作再掲載)』(初出誌 : “ミミズク通信” 1979年11月)
作者自身をモデルにしたと思われる凡作のキャラクターは、この後テツに転用されている。
第167話 『青空』
週刊漫画サンデー 1982年10月26日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第7話
秋です。ここ九鬼谷でもマラソン大会を開催。反則ありスケベありのこの競争。栄冠はダレの手に?
「1等になったら欲しいものな~んでもやるよ」月子のこの一言で、マラソン大会への参加を決めた良太。しかしそこは “九鬼谷の” マラソン大会、審判にばれなければなんでもありの生き残りゲーム!? 月子のボディガードとして日ノ本正義も参加。娘の芳江から責められる “自慢でけることのな~んもない男” エロ事師・春助も…
雨の中行われた大会は、案の定大荒れ… すべてのランナーが棄権、テレビ局はひきあげるは、役員は酒くらうはで… 誰もいなくなったゴールに、ただ一人たどり着いたのは?
第168話 『女良太』
週刊漫画サンデー 1982年11月 2日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第8話

自他ともに認めるスケベの第一人者、久美子の前に強敵が出現!! 顔からして良太にそっくりで……
● 小夜 – 良太の従姉。女版良太!!
● 坪内直子 – 聖女学院の小夜の後輩。
● 安 – 不動明王の刺青を背負った天狗屋の舎弟。
見た目は良太そっくり、下品さは良太以上の “女良太” 小夜。下品さでは双璧の久美子とも意気投合し、怖いものなし! 浩一達不良グループに乱暴された直子の、奪われた生徒手帳を取り戻そうとする小夜と久美子。そこに不動の安さんも加勢して…
小夜に圧倒されっぱなしの良太… 今回は珍しく弱気。ツンツン月子も出る幕がない…
天狗屋の舎弟の一人、不動の安と、女良太・小夜が初登場。
第169話 『穴』
週刊漫画サンデー 1982年11月 9日号掲載
マンサンコミックス 18巻 第9話炭鉱閉鎖で九鬼谷に流れてきた人々。炭鉱には苦い思い出ばかり。が、ある日ひとりのこどもが―
● 寛吉(カン) – 炭鉱(ヤマ)を追われた元炭鉱夫。
● 植田久子 – 落盤で亡くなった寛吉の友人の娘。
● 植田一人(かずと) – 久子の一人息子。
● 川谷(タク) – 寛吉の昔からの炭鉱(ヤマ)の同僚。
亡くなった友人の娘・久子とその息子一人(かずと)と暮らす寛吉 。豊州、室井、赤池、九鬼谷時刻谷… と炭鉱(ヤマ)を流れ歩いてきた寛吉は、友を喪った落盤事故の悪夢に苦しめられる。通気口から転落した一人(かずと)と大助を救うため、勘吉は川谷と共に複雑な記憶が渦巻く廃坑の中へ…
九鬼谷通信で炭坑節の考察を企画する月子。寛吉の哀しい記憶を呼び覚ます “炭坑節”…
川谷(タク)が覚えていた “本唄” は、
また… 久子が口ずさんだのは…
敗戦後、三井三池炭鉱を管理した進駐軍が流行らせたというポピュラーな “炭坑節” ではなく、田川の “選炭節” が元唄という設定になっている。
第170話 『青い目をした…』
週刊漫画サンデー 1982年11月16日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第1話
フランス帰りの秀作が連れてきた青い目をしたお嫁さん。川下りの準備が進む中、九鬼谷は大騒ぎ!
● フランソワ – 秀作のフランス・クキータニ地方出身の妻。
● 秀作 – パリから帰国した一作の息子。
紫川下りのイベントを控えた九鬼谷に、まんだら屋の番頭・一作の息子秀作が、フランス人の妻フランソワを伴って戻ってきた。パリで自らの画家としての才能に見切りをつけた秀作。駆け落ち同然に連れ帰ったフランソワは、実は秀作が帰国後東京で半年間務めた会社の社長夫人!
九鬼谷唯一の鏝絵(こてえ)師、父・一作の弟子になる決意をする秀作とフランソワ…
番頭・一作の息子秀作と、その妻フランソワが初登場。
第171話 『紫川』
週刊漫画サンデー 1982年11月23日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第2話
フランソワを取り戻しに夫がくる!? 九鬼谷は川下りに沸き返っているが、秀作は気が気でない……
● アンリ氏 – 東京日本橋の装飾品店とレストランのオーナー。
紫川下り大会は「湯の町芸者」パートⅡの特別番組の企画に組み込まれ、TV新宿の熊田達に合流して、主演女優の池内志摩も九鬼谷へやってきた。同時にフランソワの元夫・アンリ氏も秀作の命を狙って九鬼谷へ! 良太たちのイカダに交じって紫川を下る秀作とフランソワのゴムボートと、それを追うアンリ氏…
ほぼすべてのイカダは転覆或いは棄権、テレビの実況も無くなり… 良太達のイカダ “良玄光” も地味に遭難?
第65話『晩夏』(1980年 9月16日号)に登場した女優・池内志麻が再登場。
第172話 『九鬼谷紳士録』
週刊漫画サンデー 1982年11月30日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第3話ひょうたんから駒? 軽い気持ちでいった “九鬼谷紳士録” 出版計画に、金が集まって……
● 田所親子 – 九鬼谷の印刷屋 “大日本文化印刷出版局” の経営者親子。
● 順 – “大日本文化印刷出版局” の社員。
● 光子 – 飲み屋 “愛ちゃん” のママ。
大型の両面4色の輪転機や、上質のアート紙等、九鬼谷には不必要なものばかり抱え込む印刷屋、その名も “大日本文化印刷出版局”。 年末を乗り切るための苦肉の策、掲載料一口10万の “九鬼谷紳士録” の計画は、村長や旅館組合長らの名誉欲を煽り順調に進むかと思われたが…
集金した掲載料は順と光子に持ち逃げされ、輪転機は転売。屋号も控えめに “田所印刷所” に変更…
“九鬼谷紳士録” の話に乗らなかったのは、まんだら屋のヨネと、夕月荘の松之助の二人だけだったが、良太は全面的に協力し、九鬼谷中に恥をさらす…
第173話 『オレが団長!』
週刊漫画サンデー 1982年12月7日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第4話痔の病高じて引退する青年団長。あとがまを狙う若者どもは口々に、オレが団長! オレが団長……
● 正治 – 痔持ちの青年団長。
● 花村慶子 – 小倉の菊本医院の看護婦。
● 賢三 – 青年団長の座を狙う旅館組合長の血縁者。
青年団の団長・正治の痔の症状か悪化し統率が取れない中で、団長の座を狙い青年会館の設立をもくろむ “ニューリーダー” 気取りの賢三だが、一目惚れした慶子にはフラれ、臨時の団長代行に甘んずることになる。団長・正治と慶子の仲を取り持った(?)のは、他ならぬ正治の痔の病。
青年団の下部組織・若衆組も、組長・良太、書記長・ヒカル、副組長・久美子にリーダーを一新(?)。
九鬼谷青年団の正治と賢三が初登場。
第174話 『温泉子守唄』
週刊漫画サンデー 1982年12月14日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第5話孫の背におぶさって、九鬼谷へやってきたおばあちゃん。ふたりの様子はなにかいわくありげで―
● おばあちゃん – 九鬼谷の山主・蔵田家の子守り女。
● おばあちゃんの孫 – おばあちゃんと九鬼谷のカラス谷を目指す。
● 蔵田家の老夫婦 – 心中の為に九鬼谷にやってきた蔵田家の末裔。
小倉からバスで九鬼谷へ向かう老夫婦が車窓から目にしたのは、年老いたおばあちゃんを背負い “歩いて” 九鬼谷へ向かう男。15の歳に蔵田家で地獄を見てきたおばあちゃんは、九鬼谷温泉の “裏の子守唄” にさそわれて殺した赤ん坊に呼ばれ、姥捨て伝説が残る「カラス谷へ捨ててくれ」と孫に願いを乞う…
おばあちゃんが唄う “裏の子守唄” は…
カラス谷で絶命したおばあちゃんの遺骨を抱いて、下畑まで “歩いて” 帰るという男…
「盆と正月に… 親の家に帰るのだけが楽しみやったち オニギリふたつとかえのワラジを腰にさげて…」
男が、バスに乗らず “歩く” 訳を理解した月子の涙… 良太の哀し気な後ろ姿…
心中を思い止まり帰路に就く老夫婦が、再び車窓から目にした男が唄う、哀しく寂しいはずの “裏の子守唄” は、何故か… 残された者達を優しく温かく包み込む…
第175話 『灰色の町』
週刊漫画サンデー 1982年12月21日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第6話妊娠して退学になった元同級生のルミに良太は再会した。ルミはトルコ嬢になっていて―
● 国男 – 元ミュージシャンで今は薬の運び屋。
● 白川ルミ – 元良太達の同級生。今は「かぐや姫」のソープ嬢・夢子。
夜の小倉の街で酔った良太と出会った国男の同棲相手は、高校退学後トルコ(ソープ)嬢に身を堕とした、良太達の元同級生の白川ルミ。トルコ嬢をやめ、国男と “暖かいとこ” へ行く事を夢見るルミ… 薬の運び屋から足を洗った国男だったが…
病院へ向かう二人を乗せたタクシーは、“暖かいとこ” を目指して “灰色の町” の中を走る…
第4話『春の嵐』(1979年 6月19日号)と第5話『聖職は性色?』(1979年 6月26日号)に登場した白川ルミが久しぶりに再登場。
第176話 『バナちゃん』
週刊漫画サンデー 1982年12月28日号掲載
マンサンコミックス 19巻 第7話もとバナナのたたき売りのおっさん。ストリップ劇場で、バナナが突っこまれるのをみて憤り……
● 立花 – 天狗屋にワラジをぬぐテキヤ。
● サリー(貞子) – “湯の町ヌード劇場” の子持ちの踊り子。
● アレレちゃん – TV勝山の女性リポーター。
天狗屋御一統の仕切る九鬼谷の “湯畑まつり” で、“関門バナナのタンカ売” を見事な口上で演じるテキヤの立花。ストリッパーのサリー(貞子)とも良い仲になり、子供と三人で九鬼谷にいすわろうかと… しかし、TV勝山で中継されたことで、サリー(貞子)の別れた亭主と、立花の妻が九鬼谷へ…
バナちゃん(立花) のモデルは… 勝新太郎??
この年・1982年、新たに九鬼谷温泉艶笑騒動譚の舞台に加わったのは、
良太の叔父で小説家の大山太(周蔵)。 厄介者の鬼ガワラ(鬼やん)。 写真館のアゴさん。 悪ガキどもの親分金太郎。 夕月荘に下宿する小学校教諭日ノ本正義。 九鬼谷番外地のごんジイと鬼太郎。 饅頭屋・貴多本の久美子の母。 天狗屋の舎弟不動の安。 女良太小夜。 一作の息子秀作とその妻フランソワ。 九鬼谷青年団の正治と賢三。etc…
第177話~第218話 全42話 (10月から11月に2か月間休載)は、
『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の五・1983年 ) にて…