永遠の桃源郷・九鬼谷温泉 – 『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の一・1979年 )

 故・畑中純氏(2012年62歳で他界)の出世作であり、同時に代表作と言える作品

 九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』

 『週刊漫画サンデー』(実業之日本社)に数度の休載は有ったものの、10年間にわたって描き続けられた、昭和の隠れた名作にして超大作である!!

 1979年5月から1989年5月まで、全483話(内3話は前・後篇2週にわたる為、連載回数は486回)!!

 舞台となるのは北九州・小倉からバスで1時間いう設定の、山々に囲まれた架空の温泉地 “九鬼谷”。 (偶然か意図的かは図りかねるが、昭和の狂気・安部慎一氏を生んだ “田川” とは、山を一つ隔てて隣接するという設定…)

 そこには主人公であり大いなる狂言回しを演じる、温泉宿 “まんだら屋” の一人息子大山良太。 良太の幼馴染で、やはり温泉宿 “夕月荘” の一人娘秋川月子。 饅頭屋の公美子芸者の直美煎餅屋のゲン村長の息子・光…と言った良太と月子の同級生達。 良太の母親で “まんだら屋” の女将・ヨネ。 月子の父で “夕月荘” の主人・松之助。 百合奴福助と言った芸者衆。 元エロ事師土産物屋の春さん。 香具師・天狗屋お役者晴 等々…の個性的な登場人物達と、彼らを取り巻くリアルな生活空間が存在するが…

 カッパやタヌキが悠然と暮らす幽鬼ヶ原。 戸籍を持たぬ山の民・サンカ(山窩)が隠れ住む雲採山。 はみ出し者やアナキストの吹き溜まり、温泉街から隔離された番外地。……と言った非日常の空間がごく自然に共存している。

 日常非日常。 また、主人公・良太の持つ徹底した低俗性と、時折見せる妙に大人びて悟り切った様な全うさ。 更に、この作品自体が大いなる大衆性を打ち出しながら、同時に潜ませている意外にも文学的な要素… 

 これらの様々な重層構造が、この昭和の大作九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』広がりと奥行を持たせている。

 九鬼谷温泉という桃源郷を、異なる中心点を持つ『楕円世界』と評したのはあの糸井重里氏であるが、ありていに言ってしまえば…… マンサンコミックス31巻(1985年)のカバー裏のこのコピー…

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 この作品の世界観を言い表すには、これに尽きるのではないだろうか?


 しかし… この昭和の大作にして名作(迷作)劇画・九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』… 一般的には認知度は意外に低く、加えて正当な評価も受けているとは言い難い

 その一つの原因(特に作品の評価面)として、現在ではコンプライアンス的にも難が有る奔放すぎる性描写も考えられるが、これは大衆紙としての掲載誌の性格上、長期に連載を続ける為の免罪符的な要素として許容されるべきものではないかと… わたし個人は捉えている。

 何よりも、この作品に関わることを妨げ全体像を捉えにくくしている第一の要因は、その全483話という膨大なの良質なエピソードが、読み捨てにされる事を厭わない、当時はいささか低俗と捉えられていた大衆紙という媒体に掲載されていたという事実ではないだろうか…

 わたし自身も、20代前半にこの作品に出合ったのだが…

 当時はけして積極的には購読しようとは思わなかった、いわゆる大衆誌『週刊漫画サンデー』。 新卒で入社した大阪の商社の近くで立ち寄った昔ながらの “散髪屋” の待ち時間に、たまたまこの週刊誌しか読むものが無く、気乗りがしないままパラパラとページをめくる… 横山まさみち小島功白木卓…と言った、当時の20代の若造の目から見ても、既にマンネリ化して…はっきり言って “終わってしまっている作家達” の駄作群の中に突如現出したのが… 九鬼谷温泉という異形の桃源郷!!

 当時のわたしは地方への出張営業が多い仕事だった為、鉄道での移動時間に時折この大衆紙を購入し、断片的にこの作品・九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』に接していく事になった。

 しかし…その後もこの大衆誌を継続して購読することは無く、私にとって長らくこの作品は、常に意識はしているものの… なかなか通読には及ばないという状態で放置されることになってしまった…

(念のために行っておくが、けして『週刊漫画サンデー』を蔑んでいる訳ではない。 劇画の一つの側面としての大衆性を前面に打ち出した “大衆紙” としての確固たるビジョンを持ち続けていたからこそ、畑中純氏のみならず、つげ義春辰巳ヨシヒロ、80年代後半には杉浦日名子内田春菊、と言った作家達が作品発表の場に選んでるのだから…)


 九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』という膨大な作品群は、一話完結のエピソードの集大成ではあるのだが…

 掲載の時系列に沿って連作として読まなければ多彩な登場人物達の相関性を把握し辛い… また、全話通読してこそこの騒動譚の舞台たる昭和の桃源郷の全容を把握し得るのではなかとさえ思えてしまう。(もちろん、断片的に読んでも十分に楽しめる作品として成立しているのだが…) 

 前述の糸井重里氏も、当初は単行本(マンサンコミックス)第6巻一度挫折したとの事である…

 第6巻と言うと、第59話(1980年7月)まで… 全作品群の約2割程度… 確かにこの段階では、その後の全盛期に比べ、絵柄もストーリーもやや硬めで、登場人物たちの会話も、中期から後期に見られる絶妙なテンポと “間” が効いたものには至っていない…

 そして… 糸井重里氏の2度目の挑戦(?)は、やはり当時この作品にハマっていたという村松友視氏からの影響で、単行本20数巻 第200話位(1983年夏)まで!  

 その後は止められなくなったそうである! 


 わたし自身、この度ようやく(ほぼ40年ぶりに!?)全話を通読することが出来た訳だが… 

 取っ掛かりは、たまたま入手した “ふゅーじょんぷろだくと”『畑中純自選集』の前期・後期の其々1巻。 

 実は… 前期・後期それぞれの選集に同時に出会えたというのが大きなポイントだった… 前期選集第1巻だったため、収録されていた作品はちょうど糸井重里氏が最初に挫折したあたりまで… しかし、たまたま同時に入手した後期選集に収録されていた脂の乗り切った時期の作品群に同時に触れることが出来た為、一気にこの作品群全体への興味が再燃してしまったのである!!!

 その後 “筑摩コミック文庫” 文庫本8巻をメルカリで入手。 更に、無性にその先(1981年12月 第126話 以降)が読みたくなり… Kindlew第14巻以降を少しずつ購読。

 全483話を通読するのに、ほぼ三ヶ月近くかかってしまった。

 そして、483話・全話をとりあえず通読し終えた頃には… そのあまりにも膨大なエピソードに登場した驚くほど多彩なの登場人物たちの相関関係がいまいち把握しきれていない事に、少なからずモヤモヤ感が残ってしまっていた。

 そして… 今一度、第1話から読み返す事に… 二度目の完読後には、この九鬼谷温泉という桃源郷は更なる広がりを見せる事となり… その甘美な中毒性は、更に更に全話を読み返すことを求めてくるのである。

 そう!! 九鬼谷温泉艶笑騒動譚『まんだら屋の良太』が作り上げた幻の昭和の桃源郷は、ひとたびそこに足を踏み入れてしまった読者の脳内で、

無限に循環し増殖し続ける小宇宙なのである!!


 今回、全483話のすべてをどういった形で紹介すべきかと非常に悩んだ末…

 “登場人物” “季節感” という二つの側面に注目し、1979年から1989年までの10年間1年区切り計10回にわたって取り上げていく事とした。

 “登場人物”

 村松友視氏が、潮出版社から1986年に刊行された単行本『良太! 畑中純スペシャル』のオビに寄せられたコメントが示す通り、この作品では、基本的に一話完結のエピソードであるにもかかわらず、実に多彩な登場人物達が複数のエピソードに絡んでくる

 時には要となる主役として、また時には物語の背景にさり気なく配置される脇役としての役回りを演じる… これらの多彩な登場人物達各エピソードごとにチェックしておく事は、全話を通読する事への一助と成るのではないかと思われる。

 “季節感”

 都会を舞台にした作品には表れにくい四季の空気感がしっかりと描き込まれている事が、この架空の桃源郷・九鬼谷温泉にリアルな膨らみを持たせている。 単行本等で通読する際には捉えにくい、10年間の季節の移り変わりを意識して頂きたいという思いから、あえてこだわってみた…

 便宜的に、それぞれのエピソードの掲載誌に表記された発行日(実際の日付より1週間先のものになっている)に基づき、3月から5月6月から8月9月から11月12月から次の年の2月、とした。


 各エピソードの扉絵に関しては、初出誌のものにこだわった。 今回は、国立国会図書館の蔵書から資料を集めているが… 週刊誌は一月ごとにファイリングされており、資料としてのコピーを取る際に扉絵のトジの部分がどうしても不完全なものになってしまった為、ある程度修正を加えている。
 また、二色刷りのページについては、初出誌と単行本・電子書籍では、その扱いがバラバラになっている為、あえてモノクロで統一した。

 各作品の内容については、単行本・文庫本・選集・電子書籍…いかなる形でも良いので、是非とも各自で読んでご確認頂きたいという思いから、初出誌のトビラ絵に添えられたコピーの再現と、最小限のコメントに留める事にする。


 ちなみに、第1話~1980年12月の第76話まで(2025年1月現在)は、畑中純氏がお亡くなりになった後もご遺族の奥様とお嬢さんが運営されている『漫画家・版画家 畑中純 公式ウェブサイト』にて、youtube動画がアップされている。(コンプライス面への配慮から一部カットされた部分が有る)

 まずは、こちらからこの作品に触れるのも良いのではなかろうか…

 残念ながら2024年夏以降、更新が泊まってしまっている。 奥様のご年齢や、お嬢さんのご家庭の諸事情も有るかと思われるが… 少々気がかりである…

まんだら屋の良太』前史

 本編483話の発表以前に、『まんだら屋の良太』の前史とも言える2作品が存在する。 


週刊漫画サンデー 1979年 1月 2日号掲載 (1978年作品?)

 原題は『テッペン馬鹿』。週刊漫画サンデーに初めて掲載された作品。『まんだら屋の良太』の登場人物の一人、見晴山のテッペン “見晴らし山荘” のオーナー・クマゴロー(熊五郎)の若い頃が描かれている。 まだ、九鬼谷温泉の名称は登場していない。 原題『テッペン馬鹿』は、『まんだら屋の良太』第12話に転用される。 クマゴロー以外の登場人物はこの作品にのみ登場、その後のエピソードには登場しない。


週刊漫画サンデー 1983年11月 8日号掲載 (1978年作品?)

筑摩コミック文庫 1巻 第1話

 1983年の休載期間に未発表作品として掲載される。九鬼谷温泉の名称が初登場。良太ヨネ(女将)が登場。 しかし、この段階ではまだ屋号 ”まんだら屋“ ではなく “まんだら湯” と成っている。 掲載時のキャッチ通り『まんだら屋の良太』の設定のルーツが出来上がっている。  “筑摩コミック文庫” 第1巻には、本編の前にこの作品が収録されている。 後のお役者晴司に転用されたのではないかと思われるキャラも登場?

1979年 掲載作品

 1979年春から順次掲載された6作『温泉宿』『姦々まつり』は、当初まとめて仕上げた状態で持ち込まれた物の為、まだそれほど季節感が感じられない……

 当初持ち込みの6作は、其々26ページ(その後は毎回24ページに統一)に仕上げられているが、なぜか第1話のみ20ページ


週刊漫画サンデー 1979年 5月29日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第1話  筑摩コミック文庫 1巻 第2話

大山良太 – 温泉宿 “まんだら屋” の息子(次男)。17歳の小倉城南高校2年生。この作品の主人公。

大山ヨネ – 女手一つで宿を切り盛りする “まんだら屋” のやり手女将。 良太の母

宮川染子 – 温泉宿 “まんだら屋” の美人仲居。タケシの妻。

宮川タケシ – 温泉宿 “まんだら屋” のボイラー係。染子の夫で競輪狂い。

一作 – 温泉宿 “まんだら屋” の番頭。

 記念すべきシリーズ第一作目。 (実はまとめて持ち込まれた6作品の内の第一作)  九鬼谷温泉温泉旅館 “まんだら屋”、その女将と主人公である息子の良太… という設定が完成。 染子タケシ夫婦はその後のエピソードに度々登場することになる。 また “まんだら屋” の従業員達のキャラクターが未だ出来上がっていない中で、番頭(一作)がすでに登場している。


週刊漫画サンデー 1979年 6月 9日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第2話  筑摩コミック文庫 1巻 第3話

幸子 – カラス谷のぶんぶく茶屋の娘。一度は捨てた故郷・九鬼谷に戻ってきた…

山源組・組長と組員達幸子を追って九鬼谷へやってきた小倉のヤクザ。 この回のみの登場。

九鬼谷の住民達 – この時点では全くキャラクターが確立されていない

 九鬼谷を訪れる訳ありの女… それを追うヤクザ達と、対する九鬼谷の住民達… 物語の後半には、そのどちらにも確立されたキャラクター達がそれぞれの役回りを演じることになるが、この段階ではまだどちらも有象無象の衆…


週刊漫画サンデー 1979年 6月12日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第3話  筑摩コミック文庫 1巻 第4話

秋川月子 – 温泉旅館 “夕月荘” のひとり娘で良太の幼なじみ。小倉城南高校2年生。17歳

秋川松之助 “夕月荘” の主人。月子の父で男やもめ。

熊五郎“見晴らし山荘” のオーナー。 

 良太の相方・月子が初登場。 二人とも同じ高校に通う同級生。 この時点では高校二年生、後に三年生に進級するが、この物語の最後まで幾度か季節が巡っても、二人を含めた同級生たちは年を重ねることなく17歳のまま。 これは、主人公である彼らを、大人でも子供でもなく、社会的責任から距離を置いた立場で、自由に立ち回らせたいという作者の意向かと思われる。

 アノニマスな九鬼谷住民達の中に、熊五郎(クマゴロー)が登場している。


週刊漫画サンデー 1979年 6月19日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第4話  筑摩コミック文庫 1巻 第5話

百合奴 – 九鬼谷のナンバーワン美人芸者(?)。 

白川ルミ – 良太と同じ高校に通う性悪女子高生

テツ(石田鉄男)良太の同級生。小倉の石田酒店の一人息子。

ネズミ(根津実)良太の同級生。 教育委員会事務局勤務の父を持つ。小倉在住。

花子月子の愛犬。 クマ殺しの異名を持つ猛犬(?)

 良太の同級生で親友の二人が初登場。 美人芸者の百合奴姐さんも初登場だが、この段階では良太たちの憧れの女性として描かれている… それが…… 物語の後半でのリアリズムを極めたブタ女房へと変貌していくとは… 併せて、月子の愛犬・クマ殺しの花子も登場!


週刊漫画サンデー 1979年 6月26日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第5話  筑摩コミック文庫 1巻 第6話

白川ルミ – 先のエピソードでは良太の夢に現れた同級生

逆さラッキョ(松下幸三) – 良太たちの通う小倉城南高校の数学教師

● 喫茶「人魚姫」の夫婦 – 良太たちの行きつけの喫茶店のオーナー夫婦。

 “まんだら屋” に宿泊したのは、良太達の高校の数学教師・逆さラッキョこと松下幸三と、その教え子の白川ルミの不倫カップル… 逆さラッキョは高校を退職、白川ルミは退学となるが、二人とも後のエピソードにも登場する。 

 良太たちは無事に高校三年生に進級。

 喫茶「人魚姫」は、この後も数多くのエピソードの舞台となる。


週刊漫画サンデー 1979年 7月 3日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第6話  筑摩コミック文庫 1巻 第7話

宮川染子“まんだら屋” の美人仲居でタケシの妻。夫の借金のかたに…

宮川タケシ“まんだら屋” のボイラー係で染子の夫。競輪で作った多額の借金の追われる。

ハルさん(桜木春助) – 九鬼谷温泉の土産物屋の主人でエロ事師。 通称コケシ

 染子タケシ夫婦が再登場。借金取りのヤクザに追われ、夫婦は夜逃げするが… 

 エロ事師ハルさんが初登場。そのハルさんが手に入れたブルーフィルムには?!

 ここまでの6話は、作者が書き溜めていたものを週刊漫画サンデー連載決定時にまとめて預けたもの。 この後は毎週24ページの作品アシスタントを使わずに仕上げ続けるという、とんでもないハードワークが約10年間続く…


週刊漫画サンデー 1979年 7月10日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第7話  筑摩コミック文庫 1巻 第8話

画家の女“まんだら屋” に宿泊した画家の女。松尾の婚約者。

松尾清治 – 九州商事の社員で画家の女の婚約者。

 九州商事の社長の娘との結婚と支店長の椅子に目がくらみ、画家の女と縁を切ろうとする松尾は、自社と取引のある黒川木工所のチンピラ達を使い…  クマ殺しの月子(?)…もとい…花子が大活躍?!

 1989年VHSテープでリリースされたOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)『九鬼谷温泉艶笑騒動譚 まんだら屋の良太』(制作:砂工房)は、初期持ち込みの6作のうち、第1話『温泉宿』第4話『春の嵐』第6話『姦々祭り』3話に、この第7話『白いキャンバス』を組み込んだ作品と成っている。 リリースされた1989年秋と言えば、既に全483話の連載が終了した時期と言う事もあり、最初期の作品群とはいえ、その後の “完成したまんだら屋の良太の世界観” が反映されており、なかなか楽しめる内容になっている。特に月子ツンツン加減が絶妙! この段階ではまだ設定されていないキャラクター・香具師 “天狗家” のお役者晴司も登場する。

 この作品はDVD化されておらず、オリジナルのVHSテープもかなりレアで、オークションでもかなり高額で取引されているが、海外のサイトで動画が公開されている。(ただ…画質はかなり劣悪…)


週刊漫画サンデー 1979年 7月17日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第8話  筑摩コミック文庫 1巻 第9話

大山元太大山家の長男で良太の兄。東京の調布産業大学3年生。空手部主将(??)

荒川龍子調布産業大学空手部マネージャー

小林健一調布産業大学空手部部員元太の後輩。

 親不孝者の元太(良太の兄)が九鬼谷に帰省。マネージャーの龍子をめぐり後輩の小林と… 

 元太龍子は今後のエピソードに度々登場する。


週刊漫画サンデー 1979年 7月24日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第9話  筑摩コミック文庫 1巻 第10話

逆さラッキョ(松下幸三) – 高校教師を退職後、肉体労働に就く。

 第5話『聖職は性色?』で登場した逆さラッキョの後日談。 小倉での祇園祭の夜。良太、テツ、ネズミの3人は立ち飲み屋で逆さラッキョと再会するが… 

 ちなみに… 良太月子彼らの同級生の高校生達酒も煙草もごく当然の様に嗜んでいる… (現在ではコンプライアンス的にアウトかも…)


週刊漫画サンデー 1979年 7月31日号掲載

マンサンコミックス 1巻 第10話  筑摩コミック文庫 1巻 第11話

家出娘 父の再婚相手への当てつけに狂言家出を試みる。

家出娘の両親 – 娘の実の父再婚相手の母

文子・悦子 – 海水浴場とテント村で良太達と出会った女子大生

 不純な目的で海水浴に出かけた良太達3人が出会った狂言家出娘は、父の再婚相手をとして認めるのか…? 

 女子大生二人(文子・悦子)後のエピソードにも登場し、九鬼谷を訪れる事になる。


週刊漫画サンデー 1979年 8月 7日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第1話  筑摩コミック文庫 1巻 第12話

吉岡淳之介 – 東京のT大に通う小倉の資産家の息子。九鬼谷では “大学さん” と呼ばれ羨望の的。

淳之介の父 – 小倉で一、二の資産家。

 息子淳之介覚醒剤スキャンダルをもみ消す為、関連会社の海外支店に飛ばそうとする父親。東京から淳之介を追って九鬼谷へ来たクスリの売人。売女に落ちぶれた昔の女淳之介の子どもを身ごもった東京の恋人。追いつめられた “大学さん” は、月子を道連れに自殺しようとするが…

 このエピソードは、本シリーズの連載開始以前に仕上げられていた未発表作品を『まんだら屋の良太』の一作品としてリメイクした物だと言う事なので、淳之介が登場するのは今作のみ。


週刊漫画サンデー 1979年 8月14日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第2話  筑摩コミック文庫 1巻 第13話

熊五郎 -九鬼谷を見下ろす見晴山頂上の観光ホテル “見晴らし山荘” のオーナー。

 旅館組合の副会長という立場にありながら、過激なお色気路線に暴走する熊五郎(クマゴロー)…

 『てっぺん馬鹿』というタイトルは、週刊漫画サンデー 1979年 1月2日号に掲載された漫画サンデー初掲載作『クマゴローの性春』の原題。

 旅館組合の組合長 “松風” の主人が登場している。


週刊漫画サンデー 1979年 8月21日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第3話  筑摩コミック文庫 1巻 第14話

百合奴九鬼谷ナンバーワン芸者時三郎とはかつて結婚の約束までした仲。

平山時三郎 – 刑期を終えて九鬼谷に戻ってきた “まんだら屋” の板前

ダンナ – 過去に百合奴を囲っていたが、現在はボケ老人

辰雄“まんだら屋” の板長

ヒカル(金倉光)村長の孫良太とは腐れ縁

 妻と連れ子を伴って “まんだら屋” を訪れた元板前の時三郎は、百合奴姐さんのかつての恋人。 囲い主のダンナを斬りつけた事で投獄された時三郎の出所を、健気に待ち続けていた百合奴だったが…

  “まんだら屋” の板長辰雄と、村長の孫ヒカル(金倉光)が初登場。


週刊漫画サンデー 1979年 8月28日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第4話  筑摩コミック文庫 1巻 第15話

恵子 – “まんだら屋”新入り客室係。実は訳あり…

犬塚平吉恵子の彼氏。凸凹組を破門されたチンピラ犬男

 終バスで履歴書も持たずに客室係募集の新聞広告に応募してきた恵子。番頭一作の読み通りの訳あり女。彼氏の平吉は、犬の嗅覚で九鬼谷まで恵子を追って来た…

 “犬”キーワードと言う事で、花子も登場。


週刊漫画サンデー 1979年 9月 4日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第5話  筑摩コミック文庫 1巻 第16話

文子第10話『海辺の華』で良太たちと知り合った女子大生。

悦子第10話『海辺の華』で良太たちと知り合った女子大生。

和夫月子のいとこ

 テツネズミは海水浴場で知り合った二人の女子大生を連れて九鬼谷へ。そろって “まんだら屋” に宿泊する。 彼氏の子供を妊娠4カ月で堕した文子。乳児の鳴き声におびえ、逆さクラゲの街の匂いを嫌悪する。


週刊漫画サンデー 1979年 9月11日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第6話  筑摩コミック文庫 2巻 第1話

直美 – 良太達と同じく17歳の高校生。中退し芸者の道に進む。

ゲン(田中弦) – 九鬼谷のせんべい屋 “鳴海屋” の息子。直美に思いを寄せる…

 九鬼谷三人娘(月子・久美子・直美)の一人・直美とその相方(?)ゲンが初登場。 直美は叔父に襲われることを恐れ、置屋ひさやの鶴千代姐さんの下で芸者の道に進む。

 直美ゲン、二度目の登場となるヒカルは、今後物語の主要キャラクターとなる。やはり同級生の里美もここで初登場。


週刊漫画サンデー 1979年 9月18日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第7話  筑摩コミック文庫 2巻 第2話

桜木百子コスモポリタン芸能社所属タレント

亀山平吉コスモポリタン芸能社という詐欺まがいの事務所を運営する女社長の夫

社長コスモポリタン芸能社女社長

 熊五郎の仲立ちで “桜木百子ショー”まんだら屋での開催を受けた女将ヨネ。しかし…百子はショーの開催直前に失踪。女社長は若い社員高山と新事務所を立ち上げ… 良太月子交換日記を?


週刊漫画サンデー 1979年 9月25日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第8話  筑摩コミック文庫 2巻 第3話

白鳥翼 – 小倉のお嬢様育ちの美少女小倉城南高校一年生文芸部所属で月子の後輩。

神代勝己 – 老いた私小説家“夕月荘” に宿泊。

綾、倉橋ユミ小倉城南高校文芸部の部員。

 月子が部長を務める小倉城南高校文芸部“夕月荘” で合宿。新入部員の白鳥翼も伴って九鬼谷へ… 

 物語の中盤以降、月子と並ぶ重要なキャラクターとなるが初登場。 ここではまだ美少女キャラで描かれているが、後にドップリと九鬼谷の色に染まり(?)、とめどなく良太化(?)していく…

 私小説家神代勝己の名は、同じ九州出身の映画監督神代辰巳を意識したものだろうか?


週刊漫画サンデー 1979年10月 2日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第9話  筑摩コミック文庫 2巻 第4話

週刊漫画サンデー 1979年10月 9日号掲載

マンサンコミックス 2巻 第9話  筑摩コミック文庫 2巻 第5話

バーナード・リッチ九鬼谷焼の窯元・善次郎窯に弟子入りしたアメリカ人陶芸家

中村カヨ善次郎の娘。 リッチの妻となる。

中村善次郎九鬼谷焼の窯元・善次郎窯のオーナー

 アメリカ人陶芸家リッチ娘カヨの結婚を素直に認められない善次郎。良太の斬新な夫婦湯飲の解釈に善次郎は…

 英国人陶芸家バーナード・リーチをもじったネーミングをはじめ、作者の陶芸に関する造詣の深さもうかがえる長編。

 ヒカル(金倉光)良太の喧嘩相手として登場。


週刊漫画サンデー 1979年10月16日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第1話  筑摩コミック文庫 2巻 第6話

ヒカル(金倉光) – 村長金倉剛三の孫。 良太にも袖の下を…

金倉剛三九鬼谷現村長ヒカルの祖父

下袖広安 – 村長選での金倉剛三の対抗馬。

 九鬼谷村長選挙で現役の金倉剛三に対し、下袖家の長男広安が対抗馬に立った。あからさまな袖の下合戦が展開される…

 旅館組合実力者として、組合長・ヨネ・クマゴローの三者が顔を揃えている。


週刊漫画サンデー 1979年10月23日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第2話  筑摩コミック文庫 2巻 第7話

福助 – 置屋ひさやの芸者。昼は農業、夜は芸者半農半技

太郎福(福助)の夫。福助頼みの甲斐性なし…

直美芸者になった良太達の同級生ひさやから麗人会に金で引き抜かれた。

千原一郎 – 造り酒屋の若社長。

 半農半技の太っ腹芸者・福助姐さん。投資金を持ち逃げされた造り酒屋の若社長・一郎に大金を工面。直美の愚行を叱咤しひさやに戻らせる。

 福助姐さんとその夫・太郎は、その後のエピソードにも登場する。

 


週刊漫画サンデー 1979年10月30日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第3話  筑摩コミック文庫 2巻 第8話

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ハルさん(桜木春助)土産物屋の主人でエロ事師芳江の父親

桜木芳江 – 駆け落ちした春助の娘。夫には逃げられ娘の陽子と二人暮らし。

桜木陽子芳江逃げた夫キヨシとの春助の孫

 春助の娘・芳江は、共に駆け落ちした夫に逃げられ、小倉での裏の仕事で幼い娘・陽子を養っている。春助は娘を連れ戻そうと、エロ事師の同業者川野を頼り、テツの協力を得て三郎の店にたどり着く… 

 芳江陽子は九鬼谷へ戻り、春助はエロ事師を引退する。

 ちなみに…逃げた芳江の夫キヨシは後日登場する…


週刊漫画サンデー 1979年11月 6日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第4話  筑摩コミック文庫 2巻 第9話

山田 – かつての “かませ屋”。 踊り子ローズのヒモ。 

ローズ – 九鬼谷 “湯の町ヌード劇場” の踊り子

山田と同じくヒモ稼業。パール座の踊り子を足抜けさせるが…

 九鬼谷・湯けむり小路のストリップ小屋 “湯の町ヌード劇場” 。オーナーの山田 “ヒモ” として、九鬼谷のバラ・踊り子ローズの引き立て役に徹する… 高校生でありながら… 良太の交友関係は湯けむり小路の不良中年達にまで及んでいる。

  “湯の町ヌード劇場” は、この後も幾つかの物語の舞台となる。


週刊漫画サンデー 1979年11月13日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第5話  筑摩コミック文庫 2巻 第10話

ネズミ(根津実)良太の同級生。 後輩の山崎瞳に片思い…

山崎瞳 – 良太達と同じ小倉城南高校に通う二年生。実は結構な遊び人…

 ネズミの恋を後押しする良太テツは、達を九鬼谷のハイキングに誘うが…

 今回は失恋したネズミ。その恋の対象は、やがてへ… さらには月子へ(?!)…


週刊漫画サンデー 1979年11月20日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第6話  筑摩コミック文庫 2巻 第11話

一作 “まんだら屋” の番頭。今回は多方面に活躍…

川島夫婦 – 倒産し松島建設に吸収された工務店の元オーナー夫婦

松島夫婦松島建設の社長夫婦。

 なにかと面倒見の良い番頭・一作さん。 ある日二組の夫妻 “まんだら屋” を訪れる。 自らの愚行を後悔する川島の妻にも、“一見風采のあがらんオッさん”一作さんは…

  “まんだら屋” の従業員、エツオミッちゃんが初登場。


週刊漫画サンデー 1979年11月27日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第7話  筑摩コミック文庫 2巻 第12話

冬子芳治の孫。姉妹の妹

秋子芳治の孫。姉妹の姉16才。

忠男芳治の息子。秋子冬子の父親。

芳治 – 九鬼谷奥の湯 “芳治館” の主人。忠男の父。

 年老いた祖父芳治と三人で奥の湯 “芳治館” で暮らす姉妹・秋子と冬子。この生活から抜け出すことを願う妹・冬子… そんな折、強盗殺人犯として追われ九鬼谷へ逃げ戻った忠男は、長期滞在の釣り人として実家の “芳治館” を訪れる。 忠男に捨てられた秋子冬子姉妹は、実の父とは知らず… 

 実はこのエピソードには二つの結末が存在する。

 それがこの、見晴山の展望台から望遠鏡で良太が覗き見た冬子の様子を描いたラストの2コマ!

漫画サンデー初出時マンサンコミックス電子書籍 では、つげ義春 “紅い花” へのオマージュとも思われるが、少々曖昧なエンディングとなっていた。 一方、1996年から始まった筑摩コミック文庫への収録時には、忠男の隠し持っていた大金を目にしてしまった冬子の衝撃的な行動が描かれている。 また『漫画家・版画家 畑中純 公式ウェブサイト』でもこのエンディングとなっている。 初出誌掲載時に差し替えが有ったのか、あるいは後日作者の意志によるものなのか… 詳細は不明だが、公式サイトで掲載された後者が、作者の望んでいたものではないかと思われる。( “紅い花” の世界観を尊重するならば、前者だが…)

 またこの作品には、芳治(よしはる)、忠男と言ったつげ兄弟の名前の転用も含め、“紅い花” へのオマージュと思わせるディティールが多く見受けられる。


週刊漫画サンデー 1979年12月 4日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第8話  筑摩コミック文庫 2巻 第13話

秋川松之助 “夕月荘” の主人。月子の父で男やもめ。

お富士松之助と三味線の稽古で出会った酒屋の娘29歳

 婚期に焦り松之助に結婚を迫るお富士は、見合い相手松之助を両テンビンにかける。ヨネ百合奴(ついでに良太…)の心配をよそに月子は…

 幽鬼ヶ原良太に迫られた月子まんざらでもない表情を一瞬見せるが、そんなムードもすぐに台無しに… このパターンはこの物語の最終話まで繰り返されるルーティン


週刊漫画サンデー 1979年12月11日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第9話  筑摩コミック文庫 2巻 第14話

ヒカル(金倉光) – 村長の孫九鬼谷の若衆もとい若醜の一人(もう一人は良太)

裕美美人詐欺師。旅館組合長の宿 “松風” に宿泊する。

 九鬼谷を訪れた人魚姫・裕美。恋愛を餌にした寸借詐欺である事に薄々気づきながらに翻弄されるヒカル

 喫茶『人魚姫』が今回も物語の舞台となる。


週刊漫画サンデー 1979年12月18日号掲載

マンサンコミックス 3巻 第10話  筑摩コミック文庫 2巻 第15話

エツオ “まんだら屋” の従業員。元ヤクザ者

大平正助 – 倒産した日田市の大正鉄工所のオーナー。温泉好きで競輪狂い。

シャレードのママ天ケ瀬温泉のスナックのママ。

 正助の未払いの宿代を回収する為、良太エツオ大分県日田市へと向かうが、既に倒産した大正鉄工所にも実家にも正助の姿はない。 二人は天ケ瀬温泉のスナックシャレードのママを伴って正助を追って阿蘇へ…

 エツオをはじめ多くの “訳あり従業員” を受け入れる “まんだら屋” … ひとえに女将・ヨネの太っ腹のなせる業か?


週刊漫画サンデー 1979年12月25日号掲載

マンサンコミックス 4巻 第2話  筑摩コミック文庫 2巻 第16話

ナミさん(山川七海男)小倉城南高校中退の厄介者テツの先輩。

エツオ “まんだら屋” の従業員。ヒロミと所帯を持つ予定。

ヒロミエツオの婚約者で、ナミさんの昔の女。

  “まんだら屋” のボイラー係に収まった小倉の厄介者ナミさんが、九鬼谷で再会した昔の女ヒロミエツオの許嫁。そこで…ナミさんはイキな立ち回りを演じる。

  “まんだら屋” の従業員、ミッちゃんの相方輝さんが初登場。


連載開始初年度・1979年発表の作品は以上30話。

単行本(マンサンコミックス)約3巻分、文庫本(筑摩コミック文庫)では丁度2巻分。 

この時点ではまだ主要なキャラクターも出揃ってはおらず、この壮大な “九鬼谷温泉艶笑騒動譚 は始まったばかり…

…と言う事で、次回は…

永遠の桃源郷・九鬼谷温泉 – 『まんだら屋の良太』の10年 ( 其の二・1980年 )

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